コロナも落ち着きはじめ、ようやくリアルな出会いの場が戻ってきています。その例にもれず、徐々に賑わいを取り戻しつつあるのが婚活パーティー。膝を突き合わせて会話できるのは、対面ならではのメリットといえるでしょう。ただ、アプリの場合タップ一つで面倒な輩を排除できますが、パーティーではそうもいきません。都内の一等地の婚活パーティー会場で働く田畑信二さん(仮名・28歳)は、予想の斜め上を行くようなトラブルも珍しくないと話します。
◆“招かざる客”に頭を悩ませる
田畑さんの勤務先は、平日休日問わず、多人数が収容できる会場で婚活パーティーを開催しています。担当しているのは、イベントの司会進行や会場のセッティング、受付などの業務です。
「マッチングアプリも流行っていますが、直接会話をしながら相手の魅力を知れるのは婚活パーティーの醍醐味ですよね」
しかし、品行方正な人だけなら良いものの、その場の空気をぶち壊すような“招かざる客”も参加してくるので気が抜けないと言います。つい先日もなかなか厄介な人物への対応を迫られたんだとか。
「その迷惑客(以下、A)は開始直後に受付を済ましていました。かなり早い段階で会場に到着していたので、婚活パーティーに意気込んでいるように思えたのですが……」
◆序盤の段階で異変が
次第にパーティー参加者が揃っていき、会場には男女共に15人ずつが集まりました。賑やかな雰囲気になったところで、いよいよ婚活パーティーがスタート。
「男性が一つずつ席を動きながら5分ずつ順番に全ての異性とお話していくトークタイムがあります。すると、開始して4.5人周ったあたりでAはスッと立ち上がります。そして、『いい人が居なさそうだから帰りたい』と受付に言ってきたのです。仕切りがないオープンな会場になっているので、パッと見た印象でタイプの人がいなかったから、そういうことを言ってきたのだと思います」
◆マッチングできず激怒
まだ全員と話していない段階であり、基本的に途中退席は禁止というルール。帰りたいという申し出を丁寧な口調で断ります。Aはしぶしぶ自席に戻っていったそうですが……。
「残ってくれたのは良かったのですが、何度もトイレに行って席を空け、会話中もスマホばかり気にしている姿が目につきました。順番が回ってきた女性サイドからすると、良い印象を持ちませんよね。『自分と話すのが楽しくないのかな』と嫌な気持ちになってしまうと思います」
結果、Aは案の定誰ともマッチングせず、パーティーはおひらきに。
「他の参加者がみんな帰った後に受付にやって来て、『パーティーに全くいい人がいなかったから返金してほしい』と言ってきました。基本的に人数が圧倒的に少ない、男女比率が悪いなどの状況じゃない限り返金相談はしていなかったので、無理な頼みです。すると、『詐欺だ!』『上を呼べ!』と激怒してしまい……」
現場判断だけでは解決できない状況となり、本部の担当者に電話でつなぐことになりました。電話口でも強い口調で不満をぶつけることおよそ20分。次回参加時に使える半額相当の割引券を渡すことで決着したものの、ぶつくさ文句を言いつつ帰っていったそうです。
◆クレーマーを反面教師に
Aと同様、「いい人がいない」というクレームを受けることもあるといいますが、「人との出会いは縁です。前向きに出会いを楽しむ姿勢こそが、良縁を生むと思うので、ネガティブな姿勢で参加することは自分自身に不利になると思います」と持論を述べます。
見た目や印象だけではなく、実際の会話を通して相手の良さに気づけることこそが婚活パーティーの魅力でしょう。外見の良し悪しで勝手に線引きするのはあまりにもったいなく、あまりに失礼な話。身勝手な言い分をのたまうクレーマーたちのことは、反面教師にしたいですね。
<文/萩ゆう>