「希望していた6年生の担任になれなかったことへの不満から、生徒らが体調を崩せば修学旅行を楽しめなくなるだろうと考え、犯行に及んだ動機に酌むべき事情はない」
裁判官は、女性教師の異様の行動をこう断罪した。
3月27日、さいたま地裁(黒田真紀裁判官)は給食のカレーに漂白剤を入れ威力業務妨害の罪に問われた元女性教師に懲役2年、執行猶予4年の有罪判決を言い渡した。判決を受けたのは、埼玉県富士見市内の小学校に勤務していた半沢彩奈被告(25)。昨年9月、給食のカレーに漂白剤を入れて修学旅行を延期させるなど学校の業務を妨害したとされる。
「半沢被告は法廷で、犯行動機についてこう話していました。『万全な状態で修学旅行に行かないでほしいと思った。自分のいないところで、楽しい思い出を作られるのが嫌だった』と。4年生から受け持っていたクラスが、6年生になって担任を外され不満を高まらせていたようです。押収した半沢被告のスマートフォンには、『毒殺』『異物混入』などの検索履歴が残されていました。
一方、弁護側は『仕事量が多くストレスや疲労を抱えていた』と主張。半沢被告は起訴内容を認め、修学旅行のキャンセル料を払い反省する態度もみせていたため、執行猶予つきの判決になったんです」(全国紙司法担当記者)
『FRIDAYデジタル』は昨年9月19日に配信した記事で、事件について詳しく報じている。再録し、半沢被告が犯行にいたった動機と背景を振り返りたい(内容は一部修正しています)――。
「泡がブクブクして、臭~い」
キッカケは、配膳係の児童の指摘だった。給食用のワゴンの食缶を担当のクラスへ運ぶと、フタを開けたとたんに鼻を突くような異臭が。児童の指摘を受けた担任が警察に通報し、犯行が発覚した。
昨年9月16日に、埼玉県警入間署が威力業務妨害の疑いで逮捕したのが半沢被告だった。県警によると、半沢被告は前日15日の昼頃、小学校の校舎3階廊下に置かれた給食用のカレー缶(直径30センチ、深さ30センチ、1クラス23人分)の中へ、塩素系漂白剤を混入したとされる。3階の棚からは、漂白剤が入っていたとされる600ミリリットルの容器が空になって見つかった。
「富士見市給食センターが小学校のカレー缶をすべて引きとると、当該のモノ以外は異常がなかったそうです。塩素臭は耐えられないほど強かったとか。幸い、カレーを食べた児童はいませんでした。小学校は全児童の安否を確認するなど、一時騒然となりました」(全国紙社会部記者)
異変が起きたのは、半沢被告が昨年3月まで2年間担任していたクラスだ。半沢被告は’20年4月から同校に勤務。警察の取り調べに対しては、素直に応じていたという。
「漂白剤は、薬局で購入してリュックに入れて学校に持ってきたようです。犯行動機に関しては、こう供述しています。『担当したクラスの担当を外され悔しかった。人事にとても不満があった』と。
保護者からは、おおむね評判が良かったそうです。『とても熱心で、いつもニコニコしていた』と。気さくな教諭としても有名だったとか。一方で『思い込みが激しく考えが偏っていた』という声も聞かれました」(同前)
組織での異動は常だ。記者会見した市教育委員会の教育長は、次のような趣旨のコメントをしていた。
「信じられません。『(半沢被告は)担任していたクラスを、翌年も受け持ちたい』という希望を持っていたと聞いています。しかし毎年クラス替えをし、教諭も担任が変わるのは一般的です。問題があって替えたのではない」
人事に不満があったからといって、「漂白剤混入」という形で矛先を児童へ向けるのは明らかに間違っている。犯行直後の半沢被告の言動も、まったく理解しがたい。
「事件発覚後、小学校は対応を協議するためすべての教諭を集めたそうです。しかし、半沢被告の行方だけがわからなかった。『どうしたのだろう』と携帯やSNSを通じて連絡すると、校内に隠れているのが見つかったそうです。
校長が半沢被告から事情を聴くと、『私が漂白剤を入れました』とスグに認めたとか。同校に駆けつけた警察が、半沢被告に任意同行を求め逮捕にいたりました」(前出・記者)
半沢被告は、今年1月に小学校教師を懲戒免職になっている。