「上司との不倫がやめられません」道ならぬ恋に悩む女性を救った84歳・AV監督の“まさかのアドバイス”「どんどんおやりなさい…」 から続く
「ひょっとしたら元サヤに戻れるかな、という感情もありました」――長年、医師の夫と結婚生活を過ごしてきた舞(40歳・仮名)さんは、なぜ離婚を決意したのか?
【画像】AV出演を決意した40歳女性
人生の酸いも甘いも噛み分けたレジェンドAV監督・代々木忠さん(84)の新刊『人生を変えるセックス 愛と性の相談室』より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)
舞さん(40歳・仮名)が医師の夫との結婚生活を終わらせる理由とは? 写真はイメージです getty
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Q 女性はどういうときに離婚を考えるのでしょうか?
アダルトビデオに出る女性には、離婚を経験した人や検討中の人がたくさんいます。なので、離婚に至る原因を聞く機会もたびたびありました。置かれた状況はみんな違うし、理由も人それぞれではあるものの、多くの離婚に共通しているのは、夫が妻に、妻が夫に、本当の自分を出していないということです。
「ザ・面接」に出演した主婦の舞(40歳)は、出演理由をこう語りました。「出演料を離婚後の自立資金に充てたい」。聞けば2年前から離婚を考えているそうで、夫とは2年半セックスをしていないと言います。
夫は医師。20年前、舞が准看護婦(現在は准看護師に改称)をしていたとき、同じ病院で知り合い、交際が始まって結婚したとのこと。出演時、彼女には思春期の子どもが2人いました。
事前面接で催眠誘導のCDを聴いてもらったのですが、途中で舞は号泣しはじめ、とても聴いていられる状態ではなくなりました。催眠誘導によってトランスに入ると心のフタが開きます。フタが開いて出てきたものは、いったい何だったのか……。でも、彼女がそれについて話そうとしなかったので、僕もあえて訊きませんでした。
こうして「ザ・面接」の撮影を終えてから、舞に興味が湧いた僕は別の作品でもう一度彼女を撮ろうとしていました。次はそのときのインタビューの一部です。
──ビデオに出るとき、別れる決意というか決心はついてなかったの?
「ひょっとしたら元サヤに戻れるかな、という感情もありました」
──「ザ・面接」に出て、そのあと何本かやって、それで決心は固まったの?
「そうですね。なんかこの仕事が楽しかったんですね。今まで家にいたり、ちょっと気晴らしにパートに出てみたりしたんですけど、それよりこの世界って、自分が必要とされてなければ、お仕事ないじゃないですか。だから、自分の居場所というか存在価値みたいなのをそこに見いだしちゃって。だから家庭でダンナさんが私のことを必要としてるよりも、私をもっと必要としてる所があるんだっていうのを、最近じわじわ自覚しはじめて……」
──もう夫婦生活もなかったわけだよね。あなたのほうからは求めていかなかったんだ。
「拒否されると傷つくのは自分だったんで。傷つきたくなかったんですね。まぁ、そのうちチョッカイ出されるのかなって……。もし向こうから来たら拒むつもりはなかったんですよ」
──微妙だね。この夫婦の関係性というかさ。
「そうなんですよ。いずれはなくなるもんだとは思うんですね。ただ、私、40だから……」
──四十しざかり、って言うくらいだもんね。
2年半していないけれど、以前しているときでも、夫は彼女のアソコを唾で濡らし、入れて3分で終わったそうです。しかもベッドの上ではなく、ほとんどがリビングで立ちバックとか床の上とか……。
夫には他に女性がいるようです。舞も結婚後に3人と浮気しています。相手は同級生とか昔の知り合いのようですが、まだ夫婦の間にセックスがあった時期にはのめり込んでいません。「自分を危うい立場に追い込みたくなかったから」と言います。
──よく離婚の原因が性格の不一致とかって言うけど、でも、あなたの場合はダンナさんが暴力をふるうとか、酒乱だとか、稼ぎがないとか、そういうことじゃないよね。
「ほんとに愛していたら自分も協力して……もし稼ぎがなかったら私もパートに出たりとか、酒乱だったら一緒に病院に行って治療するとか、なんかそういう手立てはあるじゃないですか。暴力とかは時と場合によると思うんですけど。だけど、自分に対して興味がないっていう、そのどうしようもなさっていうか、『私は何なのですか?』っていう寂しさ。かつて愛した人が目の前にいて、一緒に生活してるのに、私を女と思ってないというか……」
それから舞は、催眠誘導のCDを聴いて号泣したときのことを語りはじめました。
「あそこで思い浮かべたのが、主人なんですよね。そしたら若いときの感情とか、すごく愛して、この人じゃないとダメだって思ったときの感情がいっぺんに出てきたんですよ。それで今、私は裏切ろうとしているわけじゃないですか。一瞬、後悔したんですね。私はこんなことしちゃいけないんじゃないかって。すごく好きな人は主人だから……。帰ったら主人に抱かれたいって気持ちがすごく湧いてきたんですよ。でも、やっぱりそのあとも抱かれることはなかったし、嫌いで別れるというより、私が主人にぶつかる勇気がないんですね。主人に女性の影があるっていうのもわかってるし、そんな感情のなかで、そういうのを責めることもできなければ、私だけ見てって言う自信もない。だから私は私の道を行くっていう選択肢のほうへ行っちゃったわけで……」
舞の話を聞いて気になったのは、心のフタが開いて出てきた「主人」です。「若いときの感情とか、すごく愛して、この人じゃないとダメだって思ったときの感情がいっぺんに出てきたんですよ」と言っているので、この「主人」とは現在ではなく、若いときの夫なんでしょう。
医者と准看護婦。病院というヒエラルキーの中で、その2つにはどれほどの開きがあるのか。20歳になるかならないかの準看にとって、自分の結婚相手は単なる男ではなく「先生」だった。ただ、結婚してからもその関係性が単なる男と女に戻ることは、ついぞなかったのではないか……。僕は会ったことはないけれど、夫の側にもその原因があったのではないかと思いました。
たとえば、ベッドではほとんどしないというセックス。舞は事前面接のとき「いつも犯されてるみたいで、愛されてる感じがしない」と言っていました。夫は一方的で、SM的で、自分を上に置き、相手をモノ扱いしています。そこには相手をいたわる気持ちがまったく感じられません。
医者になる人が全員そうではないけれど、彼の場合は幼い頃から親に厳しく育てられ、甘えたいときに甘えられなかったのかもしれません。医者になってからは、自分の人間性よりも医者という地位や肩書きが拠りどころになっていたのではないでしょうか。
誰かに「認められたい」と渇望するのが人間です。AVの撮影現場で舞が見つけたという「自分の居場所」。AVは女性が主役であり、撮影の合間合間に助監督はバスローブを掛けてくれるし、メイクさんは化粧直しにやってきます。
作品づくりのためとはいえ、悪い気はしない。学生時代も社会に出てからも、自分1人がいなくても学校や会社がなくならないのはわかっているから、自分がいなければ成り立たない世界とは、まさに存在価値を証明してくれる場と言えるでしょう。 舞に離婚の決意を尋ねたとき、「家庭でダンナさんが私のことを必要としてるよりも、私をもっと必要としてる所があるんだっていうのを、最近じわじわ自覚しはじめて……」と答えています。その「ダンナさん」は、もともと病院の中に自分の居場所があったはずです。そして病院内での立場を、そのまま家庭に持ち込んだ。 男も女も“本当の自分”を出さないと、いつか別れがやってきます。あばたもえくぼではないけれど、恋愛に勘違いはつきもの。加えて、交際中は自分をよく見せたいという思いもいっそう強いはずです。けれども、虚像と結婚生活を送っていても、心はいつまでも満たされることがありません。(代々木 忠/Webオリジナル(外部転載))
作品づくりのためとはいえ、悪い気はしない。学生時代も社会に出てからも、自分1人がいなくても学校や会社がなくならないのはわかっているから、自分がいなければ成り立たない世界とは、まさに存在価値を証明してくれる場と言えるでしょう。
舞に離婚の決意を尋ねたとき、「家庭でダンナさんが私のことを必要としてるよりも、私をもっと必要としてる所があるんだっていうのを、最近じわじわ自覚しはじめて……」と答えています。その「ダンナさん」は、もともと病院の中に自分の居場所があったはずです。そして病院内での立場を、そのまま家庭に持ち込んだ。
男も女も“本当の自分”を出さないと、いつか別れがやってきます。あばたもえくぼではないけれど、恋愛に勘違いはつきもの。加えて、交際中は自分をよく見せたいという思いもいっそう強いはずです。けれども、虚像と結婚生活を送っていても、心はいつまでも満たされることがありません。
(代々木 忠/Webオリジナル(外部転載))