2023年2月17日、そんな呟きと共に投稿された次のような図が、ツイッターで話題となっている。
ツイッター上ではしばしば、タワーマンションに住む人々の暮らしや悩みをストーリー仕立てでつぶやく「#タワマン文学」なるツイートが話題となる。
「タワマン高層階だと、お米が上手に炊けない」というのは「タワマン文学」ではお決まりの展開だ。標高が高いと沸点が下がるから、というのがその理由らしい。
はたして本当なのか? それとも単なるネタなのか? まったく定かでないのだが、どことなく「ありがち」な気がするからか、「#タワマン文学」の決めゼリフとして、すっかり定着してしまっている。
しかし、東京・湾岸のタワーマンション最上階より、はるかに標高が上の場所に住んでいる人もいる。たとえば、長野県民だ。
「おもしろ地理」(@omoshirochiri)さんが投稿した図によれば、日本で最も背が高いタワーマンションの高さが「247メートル」なのに対し、長野県の平均標高は「1132メートル」。ほぼ5倍の高さだ。
タワマン最上階が「お米が上手に炊けない」高さなのであれば、長野県民はもっと厳しい状況になっている、ということになってしまう。
「おもしろ地理」さんはいったいどんなきっかけでこの画像をツイートしたのだろう。そして何より、タワマン高層階で「お米が上手に炊けない」のは本当なのか。
Jタウンネット記者は、投稿者「おもしろ地理」さんと、炊飯器を販売する家電メーカー大手のパナソニックに話を聞いてみた。
地理系Youtuber(https://youtube.com/@omoshirochiri)であり、普段から地理雑学をツイートしている「おもしろ地理」さんは、ツイートのきっかけについて、こう語った。
ほかにもタワマン高層階よりも標高の高い場所に住んでいる人々はいるが、中でも馴染みのある長野県民の気持ちもを代弁したという「おもしろ地理」さん。
実際、長野県の炊飯事情はどうなのだろう?
ツイッターでは「おもしろ地理」さんの投稿に対し、こんな声が寄せられている。
どうやら長野県でも基本的にお米は美味しく炊けている様子。
では、炊飯器的には標高の高さは、お米の美味しさに関係してくるのだろうか。してくるとしたら、どこから?
Jタウンネット記者は、炊飯器も取り扱っている家電メーカー・パナソニックを取材。広報の担当者が応じてくれた。
担当者によれば、おいしいごはんを炊くためには、摂氏98度以上のお湯で20分以上かける必要がある。標高が高くなると水の沸点が下がり、沸点が摂氏98度を下回る環境下では、炊き上がった米のおいしさに影響が出てくるという。
そこで、今回話題となっているそれぞれの場所について聞いてみた。
――タワーマンション高層階(標高200メートル以上)ではいかがですか?
――長野県、山梨県、岐阜県など、もっと標高が高い地域では、いかがでしょうか?
だからと言って標高の高い地域に住む人たちが美味しくお米を炊けないわけではない。パナソニック広報担当者は、図を示した。
図を見てみると、圧力なし炊飯器でも標高600メートルまでは沸点が98度以上。日本で一番高いタワー・東京スカイツリー(634メートル)のてっぺんでは難しいかもしれないが、日本で一番高いビル・あべのハルカス(300メートル)の最上階でも、問題はない。
圧力炊飯器であれば、標高が2000メートルを超えていても沸点が98度を超えていることがわかる。日本で最も標高が高い場所に村役場を構えているのが長野県川上村の1185メートルなので、日本のだいたいの場所で美味しいお米を炊けそうだ。
というわけで、タワマンでも、長野でも、お米を美味しく炊くことはできる。
「うちはタワマン高層階だからお米がうまく炊けないんだよね」と言っている人がいたら、そこには何か「別の問題」が潜んでいるのだろう。