生後すぐ窓から投げ捨てられ、生涯寝たきり状態に──。懲役5年の判決が下された事件の被害者は、加害者である母に損害賠償を請求できるのか。法的観点からの見解を弁護士に取材した。
自宅トイレで男児を出産後に窓から投げ捨てたとされる2年前の事件で、殺人未遂の罪に問われた24歳の女の裁判員裁判・判決公判が2023年3月3日に千葉地裁で開かれたと、同日に地元紙「千葉日報」がウェブで報じた。
記事によると、裁判長は被告の殺意を認め、懲役5年(求刑懲役6年)を言い渡した。量刑理由については、「男児は現在も自発的に呼吸できず、生涯にわたり寝たきり状態になるといい『結果の重大性を考慮した』」と説明したという。同社は1月の記事で、男児は約1メートル70センチの高さから落とされ、意識がないとも伝えている。
意識が戻った場合、男児は母に対してどのような民事上の責任を求めることが出来るだろうか。「弁護士法人ユア・エース」の正木絢生代表弁護士が8日、法的観点からの見解をJ-CASTニュースの取材に答えた。
逸失利益とは、事件がなければ将来得られるはずの収入を意味する。今回は「健常者であったはずの当該男児が母の不法行為によって重い障害を負ってしまった」事案のため、健常者のように「全労働者の平均賃金」を用いて逸失利益を算出すべきと見立てている。
一方、正木氏によると、人の生命や身体を害する不法行為の消滅時効は5年だ。男児は幼く、成人するまでに時効期間が過ぎてしまうため、法定代理人が母に請求するケースが考えられると説明する。
ただ、未成年者の法定代理人は親権者であることが原則で、請求相手となるはずの母が該当する。このような場合は、親権者や利害関係人が特別代理人の選任を家庭裁判所に請求する必要があるとした。