「60万円くらい払うよ。月にいくらほしいの」セクハラで提訴された馬奈木弁護士(47)が大学院、講師時代に起こしていた複数の“女性問題”とは から続く
「馬奈木厳太郎弁護士(まなぎいずたろう・47)のセクハラ事件の記事を見て、“またやっちゃったんだな”と思いました。大学院時代に馬奈木氏がしていたセクハラについても“やっと明るみにやっと出たか”という思いしかありません。結局、馬奈木氏は何も変わっていなかったし、反省もしていなかったということだと思います」
【画像】セクハラが発覚した馬奈木厳太郎弁護士
そう話すのは、馬奈木氏が大学院生だったころにセクハラ被害を受けたというA子さんだ。
3月1日、演劇界のセクハラ防止に取り組んできた馬奈木弁護士が、依頼人である俳優の女性に性的関係を執拗に迫るなどのセクハラ行為を行っていたことを公表。この女性から慰謝料1100万円の支払いを求める訴えを起こされている馬奈木弁護士だが、彼が大学院生だった頃、そして講師時代にも複数の女性に対してハラスメント行為をしていたことがわかった。
「演劇・映画・芸能界のセクハラ・パワハラをなくす会」(なくす会)の顧問を務め、セクハラ撲滅のための講演会などを精力的に行っていた馬奈木弁護士が、20代の頃に起こした“騒動”とは――。「何度か会う中で性的な言葉を向けられたり…」「あの頃のことは思い出せないというか思い出したくないというか、記憶を封印している部分もあるんです」 そういってA子さんは当時を振り返った。「馬奈木氏と私は早稲田大学院時代の知り合いでした。馬奈木氏は言葉に力があり、知識も豊富で、ある種のカリスマ性のようなものがありました。男女という関係ではなかったのですが、2人で会うようにもなりました。 私は馬奈木氏とは一緒に勉強をする関係だと思っていたのですが、何度か会う中で性的な言葉を向けられたり、身体的な接触を受けたりするようになっていったんです……」 最近でこそ#MeToo運動なども知られるようになったが、A子さんらが被害を受けた約20年前は今以上に女性がセクハラ被害を告発することはハードルが高かった。それどころか、自分がセクハラを受けていると認識するのにも時間がかかったとA子さんは語る。「馬奈木氏のことを尊敬する気持ちもあり、2人で会うのを断らなかったのも自分なので、彼にされたことがセクハラ行為だと気づいた後も“自分にも責任があるんだな”と思ってしまいました。ただ後から、私以外にも多くの女性が彼から被害を受けていることがわかってきたんです」 A子さんの周囲から聞こえてきたのは、馬奈木氏が参加していたサークル内での“性被害”だった。写真はイメージです iStock.com「馬奈木氏は学部生の時にインカレサークルに所属していて、大学院に進学した後もOBとして半ば指導者のような形でサークルに関わっていました。大学生から見て、大学院生で様々な言論活動に携わってきた馬奈木氏は、今のように社会的な地位を持ってはいなくても“強い”存在だったと思います。そういう非対称なサークルの人間関係の中で馬奈木氏に迫られて、被害について悩んでいた女の子がいることがわかりました」(同前) セクハラなどの性被害は、立場の強い者に迫られた弱い側が、傷つきながらも泣き寝入りを強いられることが多い。馬奈木弁護士が顧問を務めていた「なくす会」はこうした構造に目を向け、ハラスメントの撲滅に取り組んできたはずなのだが――。 A子さんは取材の最後にこう話した。「馬奈木氏がしてきたセクハラ撲滅の活動自体は非常に大事なことで、多少の貢献はあったのかもしれません。ただ本人の卑劣な行動によって、結局は足を引っ張っている気がして腹立たしいです。もっと早くから、彼ではない人によってセクハラ問題についての取り組みや言論がなされていてほしかったのが正直な気持ちです」「頭を下げ、『二度としない』と誓っていました。それなのに結局…」 馬奈木氏が大学院生時代に起こしたセクハラ騒動を知る関係者は、当時の後悔をこう語る。「私は当時、馬奈木氏や被害女性と遠くない距離にいたのですが、馬奈木氏がしていたことに気づくのにとても時間がかかってしまいました。被害が発覚した後、馬奈木氏は誠実な謝罪の文書を書いて頭を下げ、『二度としない』と誓っていました。それなのに結局、北海道の大学に就職して半年も経たないうちに同じような問題を起こし、父親の昭雄氏にまで話がいって辞めるに至ったんです。地元の九州に戻り、その後弁護士になったのは知っていましたが、どんな気分でセクハラ防止に取り組んでいたのでしょう。そういえば先日出した謝罪文も、文面は丁寧でしたよね……」父親の昭雄氏は「息子と私は別人格ですから、私とは一切何の関係もありません」 馬奈木弁護士の過去の問題について、父親である馬奈木昭雄弁護士に見解をたずねたが、「息子と私は別人格ですから、私とは一切何の関係もありません」と回答した。 米国の弁護士等法曹の全国団体「アメリカ法曹協会(American Bar Association)」は、職務模範規定において、弁護士は倫理上、依頼者となる前から両者の合意による性的関係が存在した場合を除き、依頼者と性的関係を結んではならないと規定している。これは、弁護士と依頼者の関係は対等とは言い難く、性的関係が依頼者に不利益をもたらす可能性があるからだ。 日本でも弁護士職務基本規程において「依頼者との関係における規律」が設けられているものの、弁護士と依頼者との性的関係については明文化されていない。 馬奈木氏は3月1日に公表した文書の中でこうつづっている。 <私は、依頼者と代理人という関係にあるなかで、性的関係を迫る言動を続け、その方を苦しめる状況を作り出しているということを認識できていませんでした。> 過去にはセクハラ撲滅活動の中では、「告発して、自分が不利益を受けることはないんだよということがひとつ。そしてまた声を上げていいんだという環境を整備したい」という発言もしている。 被害者が責められることなく、声を上げられる社会を実現する活動の前線に立っていた弁護士による、まさかの卑劣な行為。馬奈木弁護士は、自らの社会的責任を自覚する必要があったのではないだろうか。(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))
「演劇・映画・芸能界のセクハラ・パワハラをなくす会」(なくす会)の顧問を務め、セクハラ撲滅のための講演会などを精力的に行っていた馬奈木弁護士が、20代の頃に起こした“騒動”とは――。
「あの頃のことは思い出せないというか思い出したくないというか、記憶を封印している部分もあるんです」
そういってA子さんは当時を振り返った。
「馬奈木氏と私は早稲田大学院時代の知り合いでした。馬奈木氏は言葉に力があり、知識も豊富で、ある種のカリスマ性のようなものがありました。男女という関係ではなかったのですが、2人で会うようにもなりました。
私は馬奈木氏とは一緒に勉強をする関係だと思っていたのですが、何度か会う中で性的な言葉を向けられたり、身体的な接触を受けたりするようになっていったんです……」
最近でこそ#MeToo運動なども知られるようになったが、A子さんらが被害を受けた約20年前は今以上に女性がセクハラ被害を告発することはハードルが高かった。それどころか、自分がセクハラを受けていると認識するのにも時間がかかったとA子さんは語る。
「馬奈木氏のことを尊敬する気持ちもあり、2人で会うのを断らなかったのも自分なので、彼にされたことがセクハラ行為だと気づいた後も“自分にも責任があるんだな”と思ってしまいました。ただ後から、私以外にも多くの女性が彼から被害を受けていることがわかってきたんです」
A子さんの周囲から聞こえてきたのは、馬奈木氏が参加していたサークル内での“性被害”だった。
写真はイメージです iStock.com
「馬奈木氏は学部生の時にインカレサークルに所属していて、大学院に進学した後もOBとして半ば指導者のような形でサークルに関わっていました。大学生から見て、大学院生で様々な言論活動に携わってきた馬奈木氏は、今のように社会的な地位を持ってはいなくても“強い”存在だったと思います。そういう非対称なサークルの人間関係の中で馬奈木氏に迫られて、被害について悩んでいた女の子がいることがわかりました」(同前)
セクハラなどの性被害は、立場の強い者に迫られた弱い側が、傷つきながらも泣き寝入りを強いられることが多い。馬奈木弁護士が顧問を務めていた「なくす会」はこうした構造に目を向け、ハラスメントの撲滅に取り組んできたはずなのだが――。
A子さんは取材の最後にこう話した。
「馬奈木氏がしてきたセクハラ撲滅の活動自体は非常に大事なことで、多少の貢献はあったのかもしれません。ただ本人の卑劣な行動によって、結局は足を引っ張っている気がして腹立たしいです。もっと早くから、彼ではない人によってセクハラ問題についての取り組みや言論がなされていてほしかったのが正直な気持ちです」
「頭を下げ、『二度としない』と誓っていました。それなのに結局…」 馬奈木氏が大学院生時代に起こしたセクハラ騒動を知る関係者は、当時の後悔をこう語る。「私は当時、馬奈木氏や被害女性と遠くない距離にいたのですが、馬奈木氏がしていたことに気づくのにとても時間がかかってしまいました。被害が発覚した後、馬奈木氏は誠実な謝罪の文書を書いて頭を下げ、『二度としない』と誓っていました。それなのに結局、北海道の大学に就職して半年も経たないうちに同じような問題を起こし、父親の昭雄氏にまで話がいって辞めるに至ったんです。地元の九州に戻り、その後弁護士になったのは知っていましたが、どんな気分でセクハラ防止に取り組んでいたのでしょう。そういえば先日出した謝罪文も、文面は丁寧でしたよね……」父親の昭雄氏は「息子と私は別人格ですから、私とは一切何の関係もありません」 馬奈木弁護士の過去の問題について、父親である馬奈木昭雄弁護士に見解をたずねたが、「息子と私は別人格ですから、私とは一切何の関係もありません」と回答した。 米国の弁護士等法曹の全国団体「アメリカ法曹協会(American Bar Association)」は、職務模範規定において、弁護士は倫理上、依頼者となる前から両者の合意による性的関係が存在した場合を除き、依頼者と性的関係を結んではならないと規定している。これは、弁護士と依頼者の関係は対等とは言い難く、性的関係が依頼者に不利益をもたらす可能性があるからだ。 日本でも弁護士職務基本規程において「依頼者との関係における規律」が設けられているものの、弁護士と依頼者との性的関係については明文化されていない。 馬奈木氏は3月1日に公表した文書の中でこうつづっている。 <私は、依頼者と代理人という関係にあるなかで、性的関係を迫る言動を続け、その方を苦しめる状況を作り出しているということを認識できていませんでした。> 過去にはセクハラ撲滅活動の中では、「告発して、自分が不利益を受けることはないんだよということがひとつ。そしてまた声を上げていいんだという環境を整備したい」という発言もしている。 被害者が責められることなく、声を上げられる社会を実現する活動の前線に立っていた弁護士による、まさかの卑劣な行為。馬奈木弁護士は、自らの社会的責任を自覚する必要があったのではないだろうか。(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))
馬奈木氏が大学院生時代に起こしたセクハラ騒動を知る関係者は、当時の後悔をこう語る。
「私は当時、馬奈木氏や被害女性と遠くない距離にいたのですが、馬奈木氏がしていたことに気づくのにとても時間がかかってしまいました。被害が発覚した後、馬奈木氏は誠実な謝罪の文書を書いて頭を下げ、『二度としない』と誓っていました。それなのに結局、北海道の大学に就職して半年も経たないうちに同じような問題を起こし、父親の昭雄氏にまで話がいって辞めるに至ったんです。地元の九州に戻り、その後弁護士になったのは知っていましたが、どんな気分でセクハラ防止に取り組んでいたのでしょう。そういえば先日出した謝罪文も、文面は丁寧でしたよね……」
馬奈木弁護士の過去の問題について、父親である馬奈木昭雄弁護士に見解をたずねたが、「息子と私は別人格ですから、私とは一切何の関係もありません」と回答した。
米国の弁護士等法曹の全国団体「アメリカ法曹協会(American Bar Association)」は、職務模範規定において、弁護士は倫理上、依頼者となる前から両者の合意による性的関係が存在した場合を除き、依頼者と性的関係を結んではならないと規定している。これは、弁護士と依頼者の関係は対等とは言い難く、性的関係が依頼者に不利益をもたらす可能性があるからだ。 日本でも弁護士職務基本規程において「依頼者との関係における規律」が設けられているものの、弁護士と依頼者との性的関係については明文化されていない。 馬奈木氏は3月1日に公表した文書の中でこうつづっている。 <私は、依頼者と代理人という関係にあるなかで、性的関係を迫る言動を続け、その方を苦しめる状況を作り出しているということを認識できていませんでした。> 過去にはセクハラ撲滅活動の中では、「告発して、自分が不利益を受けることはないんだよということがひとつ。そしてまた声を上げていいんだという環境を整備したい」という発言もしている。 被害者が責められることなく、声を上げられる社会を実現する活動の前線に立っていた弁護士による、まさかの卑劣な行為。馬奈木弁護士は、自らの社会的責任を自覚する必要があったのではないだろうか。(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))
米国の弁護士等法曹の全国団体「アメリカ法曹協会(American Bar Association)」は、職務模範規定において、弁護士は倫理上、依頼者となる前から両者の合意による性的関係が存在した場合を除き、依頼者と性的関係を結んではならないと規定している。これは、弁護士と依頼者の関係は対等とは言い難く、性的関係が依頼者に不利益をもたらす可能性があるからだ。
日本でも弁護士職務基本規程において「依頼者との関係における規律」が設けられているものの、弁護士と依頼者との性的関係については明文化されていない。
馬奈木氏は3月1日に公表した文書の中でこうつづっている。 <私は、依頼者と代理人という関係にあるなかで、性的関係を迫る言動を続け、その方を苦しめる状況を作り出しているということを認識できていませんでした。> 過去にはセクハラ撲滅活動の中では、「告発して、自分が不利益を受けることはないんだよということがひとつ。そしてまた声を上げていいんだという環境を整備したい」という発言もしている。 被害者が責められることなく、声を上げられる社会を実現する活動の前線に立っていた弁護士による、まさかの卑劣な行為。馬奈木弁護士は、自らの社会的責任を自覚する必要があったのではないだろうか。(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))
馬奈木氏は3月1日に公表した文書の中でこうつづっている。
<私は、依頼者と代理人という関係にあるなかで、性的関係を迫る言動を続け、その方を苦しめる状況を作り出しているということを認識できていませんでした。>
過去にはセクハラ撲滅活動の中では、「告発して、自分が不利益を受けることはないんだよということがひとつ。そしてまた声を上げていいんだという環境を整備したい」という発言もしている。
被害者が責められることなく、声を上げられる社会を実現する活動の前線に立っていた弁護士による、まさかの卑劣な行為。馬奈木弁護士は、自らの社会的責任を自覚する必要があったのではないだろうか。
(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))