昨年12月25日の西東京市議選挙でトップ当選をはたした長井秀和(53)。彼のもとには連日、「宗教被害に関する相談が寄せられている」という。
「高額献金に苦しんでいる方、家庭が崩壊した方、宗教2世の方からで、神奈川、埼玉、茨城とあらゆるところから来ます。もはや『市』レベルではないですね」
安倍晋三元首相銃撃事件で宗教問題がクローズアップされたことで「潮目が変わったのは間違いない」と長井は言う。
「毎日、辻立ちしていましたから、私に浮ついたところがないことは有権者もわかってくれていたと思います。ただ、あの事件を機にフライデーさんがインタビューに来て(’22年9月16日号)、その後も週刊新潮、週刊文春と立て続けに取材が入った。メディアを介した”空中戦”もできるなら勝てる、と確信しました」
創価学会の元エリート2世信者として見聞きした学会の内情を、演説やメディアを通して暴露。多くの支持を集めたが、失ったものもあった。家族である。
「週刊新潮のインタビュー内容が事実無根だとして、(学会側から)抗議書が来ました。ビックリしたのは、長井家は仏壇関連に約2000万円を投じた、という記述を『仏壇は1基しか買ってない』と母が否定していたこと。ウチは55年も創価学会歴があるのに、1基で済むわけがないでしょう。実家は個人会館といって、多くの方が来る集会所、宗教ハウスだった。”勧誘ホイホイ”みたいなところだったんですから。
私自身、たくさん仏壇があったのを覚えています。甥っ子や姪っ子のぶんまであって、人にあげたりしていた。創価が日蓮正宗(しょうしゅう)と別れたとき、信者たちは仏壇の”ブランドチェンジ”(買い替え)をしたのですが、それも忘れている。息子が法的に不利になるかもしれないのに、親さえも事実を捻じ曲げる。宗教の正義のもと、家族が敵に回る。これが宗教問題の根深さです」
年が明けると、自宅に訴状が届いた。
「ネットに上がっていた私の演説の一部分が名誉毀損にあたると、1100万円の損害賠償請求をしてきました。選挙期間中の演説で、’95年に転落死した朝木明代・東村山市議について話した箇所です。信濃町(創価学会)は、YouTubeまでチェックしているわけです。ただ、私がこの話をしたことによって、当時事件の周辺にいた方たちから色々な情報が寄せられているんです。玉石混交ですが、ウラがとれたら大事(おおごと)になりますよ」
選挙を通じて得たものもある。宗教問題に取り組む仲間だ。幸福の科学の大川隆法(りゅうほう)総裁の長男、大川宏洋(ひろし)氏(33・上写真右)とは、応援演説を通じて知り合った。
「実は統一地方選に向けて、カルトと闘う議員さんをいろんな選挙区に立てているんですよ。候補者と私の顔写真が載った二連ポスターや二連幟(のぼり)がすでに10地区で立っています。渋谷区、江東区、横浜、市川(千葉県)、広島の大竹市……ちょっとした党首みたいですよ(笑)」
西東京市議としては、「カルト問題に関しての調査委員会、救済委員会を立ち上げたい」と意気込む。
「西東京は市長が市長選の期間中(’21年2月)に宗教団体の集会を訪問しているんです。政治家と宗教団体の関係が不透明。市として、どこが宗教関連施設なのかをどう識別し、どう対応するのか。市議会で突き上げていきます。児童相談所で保護されている子供たちが宗教行事や儀式に強制参加させられる問題についても、積極的に声を上げていきたい。遅れている防災ネットワークづくりもせねば」
元エリート宗教2世という異色市議が、にわかに存在感を発揮し始めた。
『FRIDAY』2023年2月10日号より