「崩壊寸前」と危惧されている、沖縄県最大の動物保護団体とその関連企業。賃金の未払いや長時間労働……それでも多くの従業員たちは「辞められない理由」があった。『このままでは猫も人も生きていけない…!動物保護団体が総額800万円の「賃金未払い」深刻すぎるウラ事情』から続けて紹介する。
元看護師のB子さん(仮名)は、自分の生活と猫たちとの間で苦悩していたと打ち明ける。
「働いている人はみんな動物が好きで、愛護への思いが強かった。ですからどんなに労働環境が悪くても、『猫のために』と思えば頑張れたし頑張ってきました。
それに、自分が辞めれば残ったメンバーだけで世話をするのはさらに大変になる。そうなれば、いずれ多頭飼育崩壊を起こしてしまうかもしれない、と考えていました。みんなそれが怖くてなかなか辞められないんです。猫がいなかったらさっさと辞めています」
写真はイメージ(Photo by iStock)
看護助手として働いていたCさん(仮名)は辞めることを告げたとき、代表から言われた言葉が今でも忘れられない。
「『猫はどうするの』と。退職を考えている自分が、とても無責任な人間のように思ってしまいました……」
従業員が一人でも欠けたら多頭飼育崩壊を起こしかねないほどに、猫の頭数が膨れ上がっていた施設もあるという。過重労働になるのも当然だろう。
「150匹の猫をスタッフ2人で世話をしていたこともあったそうです。餌、水やり、排泄物の片づけ……爪を切ったり、健康状態をチェックしたり、やることが多くて当然、休み時間も取れなかった。
彼女たちが『限界です、人を入れてください』と頼むと、代表は『だったら猫の餌を1日1回にして5時に帰ってください』とか『残業はしないでください』と。経営が厳しかったのはわかりますが、猫を大切にしている従業員がそんなことできると思います?
結局、毎日5時以降はボランティアで働いていたそうです」(Cさん)
動物病院の獣医師や看護師も疲弊していた。
休診時間も来客と電話対応に追われた「動物病院やクリニックの多くで、休診時間には来客や電話の応対はしないもの。ですが、その時間も対応を強要されていました。もちろん休憩時間は給料から引かれていますよ」(前出のB子さん)特に獣医師たちは1日中、仕事のしっぱなしだったとB子さんは振り返る。「他の動物病院より診療報酬が安いことも問題でした。飼い主にとっては嬉しいことかもしれませんが、利益度外視なので、診察している側としては人が来れば来るほど、経営が圧迫していった。疲弊して獣医師は辞めてしまい必要な人数が揃わず、休診を余儀なくされたこともその原因となっていました」B子さんは獣医師や看護師の1日のルーティンを教えてくれた。毎日、午前10時から外来の犬猫の診察開始。本来なら午後1時には午前中の受付、診察は終わるのだが、午後2時、3時までかかることもざらだった。午後5時までの休診時間は従業員の休憩だけでなく、手術や同団体の施設で保護している猫、動物病院に入院している犬猫の診察時間にあてられていた。そのため、午前の診察が休診時間に食い込めば食い込むほどその時間は減り、十分な休憩をとることはおろか、必要な業務を行う時間を確保することも難しかった。息つく暇もなく、午後5時から夕方の診察が始まり、最後の診察が終わると午後9時を超えることもあったという。最後の飼い主が帰って、残っている仕事を片付け、病院内を掃除。帰宅するのは深夜を超えることも珍しくはなかったという。そのため多い月で100時間、平均でも月60時間を超える残業をしていたと元病院関係者らは明かす。それに悩んだ看護師らが労働基準監督署に相談、改善が指導されたというが、何も変わっていないという。長時間労働だけではなく、病院が休みの日であっても獣医師や看護師らは出勤していた。「休診日でも入院している動物がいますし、院内にはペットホテルもありました。それらの世話だけではなく、診察や経過観察もみなければいけないので、休日返上で仕事をしていました。ある獣医さんはいつも疲れ切っていました。『せめてもう1人いてくれたら交代で診察できるのに……』とぼやいていました。その先生はそれからすぐに辞めてしまった」(B子さん、以下同)手には負えないほどに増えた猫の数業務を圧迫していたのは、団体だけでは手に負えないほどに受け入れてしまった猫の頭数も関係している、と関係者は口を揃える。一般からの引き取りはもちろん、特に鹿児島・奄美大島や沖縄県北部に生息し、殺処分対象になっていた飼い主のいない猫、通称「ノネコ」の引き取り保護活動にも参入したことも大きかった。引き取った猫に対して、行政からの資金援助は受けていなかったというが……。「持病があったり、治療が必要なノネコもいて、その金銭的な負担もきつかった。代表はかわいそうな猫がいたらすぐに引き取ってしまう。確かに見捨てておけない気持ちは痛いほどわかります。でも物理的な『キャパ』があります。世話をする人数も限られているし、場所だってそうです。ですから私たちが『もう猫は受け入れないでください!』と懇願しても、聞き入れてもらえませんでした」(元従業員のA子さん)こうして、猫はどんどん増えていくのに従業員は次々と辞めていく、という悪循環が生まれていた。 やがて従業員の生活が崩壊するのも必然だった。「賃金の未払いや過重労働が原因で夫婦仲に亀裂が入り、離婚してしまった同僚の女性従業員もいました。彼女は夫から『朝から晩まで働いているのにまともに給料ももらえないような仕事辞めろ!』と何度も言われていたそうです。でも彼女は猫も大好きで、仕事に使命感とやりがいを持っていたから、それを理由に辞めようとしなかった。そんな彼女に嫌気がさした夫は家を出て行ってしまったそうです」(Cさん)離婚後、その女性がその旨を代表に伝えたところ……。「『旦那さんより猫をとったんだね、ありがとう!』と話していたのを覚えています。私たちはボランティアではなく、従業員です。よく勘違いをしている人がいますが、いくら志は一緒だといっても、ボランティアと従業員を一緒に考えないでほしい。雇用契約を結んでいる以上、労働者に対してきちんと対価を払うのは経営者の義務です。だから私たちはより責任をもって仕事をします。従業員にお金を払いたくないなら最初から従業員なんて雇わないで、ボランティアだけ集めておけばよかったんです!代表は猫のことは大事にしても、従業員のことは大事にしてくれませんでした……」(前同)複数の関係者いわく、「経営不振だったのは本当」だったーー。週刊現代の取材に対し、内情を知る人物が重い口を開く。『動物保護団体でまさかの大バトルが勃発!…SNS上で元従業員と繰り広げている、「泥仕合」の行方』で続けて紹介する。
「動物病院やクリニックの多くで、休診時間には来客や電話の応対はしないもの。ですが、その時間も対応を強要されていました。もちろん休憩時間は給料から引かれていますよ」(前出のB子さん)
特に獣医師たちは1日中、仕事のしっぱなしだったとB子さんは振り返る。
「他の動物病院より診療報酬が安いことも問題でした。飼い主にとっては嬉しいことかもしれませんが、利益度外視なので、診察している側としては人が来れば来るほど、経営が圧迫していった。疲弊して獣医師は辞めてしまい必要な人数が揃わず、休診を余儀なくされたこともその原因となっていました」
B子さんは獣医師や看護師の1日のルーティンを教えてくれた。
毎日、午前10時から外来の犬猫の診察開始。本来なら午後1時には午前中の受付、診察は終わるのだが、午後2時、3時までかかることもざらだった。午後5時までの休診時間は従業員の休憩だけでなく、手術や同団体の施設で保護している猫、動物病院に入院している犬猫の診察時間にあてられていた。
そのため、午前の診察が休診時間に食い込めば食い込むほどその時間は減り、十分な休憩をとることはおろか、必要な業務を行う時間を確保することも難しかった。
息つく暇もなく、午後5時から夕方の診察が始まり、最後の診察が終わると午後9時を超えることもあったという。最後の飼い主が帰って、残っている仕事を片付け、病院内を掃除。帰宅するのは深夜を超えることも珍しくはなかったという。
そのため多い月で100時間、平均でも月60時間を超える残業をしていたと元病院関係者らは明かす。それに悩んだ看護師らが労働基準監督署に相談、改善が指導されたというが、何も変わっていないという。
長時間労働だけではなく、病院が休みの日であっても獣医師や看護師らは出勤していた。
「休診日でも入院している動物がいますし、院内にはペットホテルもありました。それらの世話だけではなく、診察や経過観察もみなければいけないので、休日返上で仕事をしていました。
ある獣医さんはいつも疲れ切っていました。『せめてもう1人いてくれたら交代で診察できるのに……』とぼやいていました。その先生はそれからすぐに辞めてしまった」(B子さん、以下同)
業務を圧迫していたのは、団体だけでは手に負えないほどに受け入れてしまった猫の頭数も関係している、と関係者は口を揃える。一般からの引き取りはもちろん、特に鹿児島・奄美大島や沖縄県北部に生息し、殺処分対象になっていた飼い主のいない猫、通称「ノネコ」の引き取り保護活動にも参入したことも大きかった。引き取った猫に対して、行政からの資金援助は受けていなかったというが……。
「持病があったり、治療が必要なノネコもいて、その金銭的な負担もきつかった。代表はかわいそうな猫がいたらすぐに引き取ってしまう。確かに見捨てておけない気持ちは痛いほどわかります。
でも物理的な『キャパ』があります。世話をする人数も限られているし、場所だってそうです。ですから私たちが『もう猫は受け入れないでください!』と懇願しても、聞き入れてもらえませんでした」(元従業員のA子さん)
こうして、猫はどんどん増えていくのに従業員は次々と辞めていく、という悪循環が生まれていた。
やがて従業員の生活が崩壊するのも必然だった。「賃金の未払いや過重労働が原因で夫婦仲に亀裂が入り、離婚してしまった同僚の女性従業員もいました。彼女は夫から『朝から晩まで働いているのにまともに給料ももらえないような仕事辞めろ!』と何度も言われていたそうです。でも彼女は猫も大好きで、仕事に使命感とやりがいを持っていたから、それを理由に辞めようとしなかった。そんな彼女に嫌気がさした夫は家を出て行ってしまったそうです」(Cさん)離婚後、その女性がその旨を代表に伝えたところ……。「『旦那さんより猫をとったんだね、ありがとう!』と話していたのを覚えています。私たちはボランティアではなく、従業員です。よく勘違いをしている人がいますが、いくら志は一緒だといっても、ボランティアと従業員を一緒に考えないでほしい。雇用契約を結んでいる以上、労働者に対してきちんと対価を払うのは経営者の義務です。だから私たちはより責任をもって仕事をします。従業員にお金を払いたくないなら最初から従業員なんて雇わないで、ボランティアだけ集めておけばよかったんです!代表は猫のことは大事にしても、従業員のことは大事にしてくれませんでした……」(前同)複数の関係者いわく、「経営不振だったのは本当」だったーー。週刊現代の取材に対し、内情を知る人物が重い口を開く。『動物保護団体でまさかの大バトルが勃発!…SNS上で元従業員と繰り広げている、「泥仕合」の行方』で続けて紹介する。
やがて従業員の生活が崩壊するのも必然だった。
「賃金の未払いや過重労働が原因で夫婦仲に亀裂が入り、離婚してしまった同僚の女性従業員もいました。彼女は夫から『朝から晩まで働いているのにまともに給料ももらえないような仕事辞めろ!』と何度も言われていたそうです。
でも彼女は猫も大好きで、仕事に使命感とやりがいを持っていたから、それを理由に辞めようとしなかった。そんな彼女に嫌気がさした夫は家を出て行ってしまったそうです」(Cさん)
離婚後、その女性がその旨を代表に伝えたところ……。
「『旦那さんより猫をとったんだね、ありがとう!』と話していたのを覚えています。私たちはボランティアではなく、従業員です。よく勘違いをしている人がいますが、いくら志は一緒だといっても、ボランティアと従業員を一緒に考えないでほしい。
雇用契約を結んでいる以上、労働者に対してきちんと対価を払うのは経営者の義務です。だから私たちはより責任をもって仕事をします。従業員にお金を払いたくないなら最初から従業員なんて雇わないで、ボランティアだけ集めておけばよかったんです!代表は猫のことは大事にしても、従業員のことは大事にしてくれませんでした……」(前同)
複数の関係者いわく、「経営不振だったのは本当」だったーー。週刊現代の取材に対し、内情を知る人物が重い口を開く。『動物保護団体でまさかの大バトルが勃発!…SNS上で元従業員と繰り広げている、「泥仕合」の行方』で続けて紹介する。