「川野さんはシングルマザーで、小学校4年生ぐらいの娘さん、両親の4人で暮らしていました。こんなひどいことになってしまって、残された子どもがかわいそう……」
【写真】女性に執拗に迫る寺内容疑者、容疑者らが勤めていた中洲のラウンジ、拡散されたA子さんのツイートなど多数 福岡県那珂川(なかがわ)市にある被害者らが住む一軒家の近隣住民は声を詰まらせた。 16日、同県博多駅の博多口から150メートルほどの路上で、午後6時14分ごろ、悲惨な事件が発生した。現場近くにある派遣会社に勤務する川野美樹さん(38)が帰宅するために駅へと向かう途中、黒い服を着た男にいきなり刃物で襲われたのだ。

馬乗り状態で顔、胸など十数か所をメッタ刺し「男は倒れた川野さんに馬乗り状態で顔、胸など十数か所をメッタ刺しにするなど、強い殺意があった。通行人がすぐさま“女性が男に襲われた”と110番通報して、川野さんは病院へ搬送されるも約40分後に死亡が確認。死因は失血によるものだった。男は刃物を持ったまま逃亡した」(大手新聞社会部記者) 当時、逃走中の容疑者は元交際相手と目されていた。被害女性は、昼間は前出の派遣会社、夜は飲食店で働いていて、元交際相手とはその飲食店で出会ったという。およそ半年間付き合っていたが、昨年の秋ごろ別れていた。「男は納得いかなかったのか、被害女性をつけ回したり、職場に押しかけたりと執拗にストーカー行為を繰り返した。被害者は警察に相談し、警察からストーカー規制法に基づく“接近禁止命令”が出ていた。男が被害女性を刺したのは、警察に通報したことへの逆恨みだと思われる」(同・社会部記者) 逃走中の容疑者が逮捕される前日、SNSに「拡散お願いします」という文言とある画像がアップされた。そこには被害女性の顔写真とともにメールの文面をスクリーンショットしたと思われる画像が。《〇〇ママ 昨日殺された河野美香さんです。ラウンジで働いていました38歳です。寺内進は系列のラウンジで働く人で31歳です。ご存知の方はご一報ください》 被害女性の名前は間違っているものの、顔写真は川野さんだったため、“寺内進”が容疑者ではないかという噂はネット上で瞬く間に拡散された。関係者のリークなのか、デマなのか。マスコミのあいだでも憶測が飛び交った。“〇〇ママ”とは、同県博多区の歓楽街・中洲にあるクラブのママの名前だった。被害女性との関係を知るべく、彼女に取材を申し込むと、「うちの系列の店への連絡事項で書いたんだけど結局、送らなかったメールがあって。そのメールの下書きを使って、うちのクラブに勤めるA子がSNSで勝手に拡散しちゃったのよ。だからもう、容疑者も被害者もうちの系列で働いていたんじゃないかって、マスコミがどっと押し寄せてきてね。そうじゃないんだけど」 一部の間違いはあったが、容疑者の名前は当たっていた。 翌18日、福岡県警捜査一課と同県警博多署は中州にいた飲食店従業員の寺内進容疑者(31)を殺人の疑いで逮捕したのだ。警察の取り調べに対して容疑者は、「刃物で川野さんを刺したことに間違いはありません」 と容疑を認めている。なぜ犯人の名前を知っていたのかとママに尋ねると、「私は知人から聞いたの」 中洲のネットワークでママの耳には届いていたようだ。書き込みをしたA子さん本人にも話が聞けた。捕まってほしいという一心だった「私も長年、中洲でホステスをしとるけど、この中洲で働いとる人同士のあいだで事件が起きて、犯人はあんな残虐な殺し方をして逃げとる。悲しいし、悔しいし、捕まってほしいという一心で、あんなことをしてしまった」 被害者と容疑者、共に顔見知りでもなく、「2人はほかの系列の別々の店で働いとったと聞いています。ママの名前は伏せるはずが、間違えてそのまま出ちゃって……。私のSNSも炎上しました」 A子さんはダブルワークで懸命に生きる川野さんの命を無惨にも奪った容疑者がどうしても許せなかったのだろう。 川野美樹さんはおよそ5年前、家族らと住む一軒家から徒歩10分の場所で、エステサロンを経営していたが、「おそらくサロンが上手くいかんで、借金を作ってしまったのかも。それを返済するため、昼も夜も働いとったんじゃないか」(近所の住民) 一方、容疑者は大阪府出身で、かつては大阪市福島区に実家があった。「父親が大手運送会社に勤めていて、その社宅に住んでいた。せやけど、10年近く前に、父親が50代で亡くなってもうてな。それで社宅にはおれへんようになって、引っ越したんや」(社宅の住民) 容疑者は実家を出ると、東京、鹿児島など転々とし、現在の飲食店に勤務するように。中洲から約500メートル離れた場所にある容疑者の自宅アパートは築19年、ワンルームで家賃月4万円ほど。同アパートの住民によると、「たまに壁をドンドンと叩く音がしたとですよ」 メンタルが不安定なところがあったのだろうか。容疑者のSNSには、こんな書き込みもあった。《もーえ所詮クズなりに生きたる!》《一人やけ酒ヤバいねー。落ちるわ》《もうちゃらまた女懲り懲り ばれたら開き直る奴無理やわー 本間(ホンマ)女線ないわ。今日からキャバクラ行こ。笑》(原文ママ、一部編集部補足) 自暴自棄になりやすく、女性への強い執着も垣間見える。容疑者は自己中心的な行動に突き進むタイプ 犯罪心理学に詳しい新潟青陵大学大学院の碓井真史教授は、“容疑者は極めて幼稚性の高いストーカー”だと分析。「“接近禁止命令”が出れば、大概のストーカー行為は収まるもの。しかし、寺内容疑者には警察の介入が歯止めにならなかった。イライラすると、考えの視野が狭くなり、周囲の迷惑を顧みない自己中心的な行動に突き進むタイプ」このような“心理的視野狭窄”と呼ばれる状態にある人は実は多いとも。「コロナ禍で人との関わりが減って、付き合い方がわからなくなっている人が増えている。容疑者も自分の感情をコントロールできなくなっていたのでは」(碓井教授) 被害女性を逆恨みした身勝手極まりないストーカー男の凶行だった--。
福岡県那珂川(なかがわ)市にある被害者らが住む一軒家の近隣住民は声を詰まらせた。
16日、同県博多駅の博多口から150メートルほどの路上で、午後6時14分ごろ、悲惨な事件が発生した。現場近くにある派遣会社に勤務する川野美樹さん(38)が帰宅するために駅へと向かう途中、黒い服を着た男にいきなり刃物で襲われたのだ。
「男は倒れた川野さんに馬乗り状態で顔、胸など十数か所をメッタ刺しにするなど、強い殺意があった。通行人がすぐさま“女性が男に襲われた”と110番通報して、川野さんは病院へ搬送されるも約40分後に死亡が確認。死因は失血によるものだった。男は刃物を持ったまま逃亡した」(大手新聞社会部記者)
当時、逃走中の容疑者は元交際相手と目されていた。被害女性は、昼間は前出の派遣会社、夜は飲食店で働いていて、元交際相手とはその飲食店で出会ったという。およそ半年間付き合っていたが、昨年の秋ごろ別れていた。
「男は納得いかなかったのか、被害女性をつけ回したり、職場に押しかけたりと執拗にストーカー行為を繰り返した。被害者は警察に相談し、警察からストーカー規制法に基づく“接近禁止命令”が出ていた。男が被害女性を刺したのは、警察に通報したことへの逆恨みだと思われる」(同・社会部記者)
逃走中の容疑者が逮捕される前日、SNSに「拡散お願いします」という文言とある画像がアップされた。そこには被害女性の顔写真とともにメールの文面をスクリーンショットしたと思われる画像が。
《〇〇ママ 昨日殺された河野美香さんです。ラウンジで働いていました38歳です。寺内進は系列のラウンジで働く人で31歳です。ご存知の方はご一報ください》
被害女性の名前は間違っているものの、顔写真は川野さんだったため、“寺内進”が容疑者ではないかという噂はネット上で瞬く間に拡散された。関係者のリークなのか、デマなのか。マスコミのあいだでも憶測が飛び交った。
“〇〇ママ”とは、同県博多区の歓楽街・中洲にあるクラブのママの名前だった。被害女性との関係を知るべく、彼女に取材を申し込むと、
「うちの系列の店への連絡事項で書いたんだけど結局、送らなかったメールがあって。そのメールの下書きを使って、うちのクラブに勤めるA子がSNSで勝手に拡散しちゃったのよ。だからもう、容疑者も被害者もうちの系列で働いていたんじゃないかって、マスコミがどっと押し寄せてきてね。そうじゃないんだけど」
一部の間違いはあったが、容疑者の名前は当たっていた。
翌18日、福岡県警捜査一課と同県警博多署は中州にいた飲食店従業員の寺内進容疑者(31)を殺人の疑いで逮捕したのだ。警察の取り調べに対して容疑者は、
「刃物で川野さんを刺したことに間違いはありません」
と容疑を認めている。なぜ犯人の名前を知っていたのかとママに尋ねると、
「私は知人から聞いたの」
中洲のネットワークでママの耳には届いていたようだ。書き込みをしたA子さん本人にも話が聞けた。
「私も長年、中洲でホステスをしとるけど、この中洲で働いとる人同士のあいだで事件が起きて、犯人はあんな残虐な殺し方をして逃げとる。悲しいし、悔しいし、捕まってほしいという一心で、あんなことをしてしまった」
被害者と容疑者、共に顔見知りでもなく、
「2人はほかの系列の別々の店で働いとったと聞いています。ママの名前は伏せるはずが、間違えてそのまま出ちゃって……。私のSNSも炎上しました」
A子さんはダブルワークで懸命に生きる川野さんの命を無惨にも奪った容疑者がどうしても許せなかったのだろう。
川野美樹さんはおよそ5年前、家族らと住む一軒家から徒歩10分の場所で、エステサロンを経営していたが、
「おそらくサロンが上手くいかんで、借金を作ってしまったのかも。それを返済するため、昼も夜も働いとったんじゃないか」(近所の住民)
一方、容疑者は大阪府出身で、かつては大阪市福島区に実家があった。
「父親が大手運送会社に勤めていて、その社宅に住んでいた。せやけど、10年近く前に、父親が50代で亡くなってもうてな。それで社宅にはおれへんようになって、引っ越したんや」(社宅の住民)
容疑者は実家を出ると、東京、鹿児島など転々とし、現在の飲食店に勤務するように。中洲から約500メートル離れた場所にある容疑者の自宅アパートは築19年、ワンルームで家賃月4万円ほど。同アパートの住民によると、
「たまに壁をドンドンと叩く音がしたとですよ」
メンタルが不安定なところがあったのだろうか。容疑者のSNSには、こんな書き込みもあった。
《もーえ所詮クズなりに生きたる!》《一人やけ酒ヤバいねー。落ちるわ》《もうちゃらまた女懲り懲り ばれたら開き直る奴無理やわー 本間(ホンマ)女線ないわ。今日からキャバクラ行こ。笑》(原文ママ、一部編集部補足)
自暴自棄になりやすく、女性への強い執着も垣間見える。
犯罪心理学に詳しい新潟青陵大学大学院の碓井真史教授は、“容疑者は極めて幼稚性の高いストーカー”だと分析。
「“接近禁止命令”が出れば、大概のストーカー行為は収まるもの。しかし、寺内容疑者には警察の介入が歯止めにならなかった。イライラすると、考えの視野が狭くなり、周囲の迷惑を顧みない自己中心的な行動に突き進むタイプ」
このような“心理的視野狭窄”と呼ばれる状態にある人は実は多いとも。
「コロナ禍で人との関わりが減って、付き合い方がわからなくなっている人が増えている。容疑者も自分の感情をコントロールできなくなっていたのでは」(碓井教授)
被害女性を逆恨みした身勝手極まりないストーカー男の凶行だった--。