1995年1月17日午前5時46分、淡路島北部を震源とした阪神・淡路大震災が発生。死者6434人、負傷者4万3792人と甚大な被害をもたらした。
28年前の大地震は、今も多くの人の記憶に強く刻まれている。
マグニチュード7.3の地震により、街は大規模な火災に見舞われ、多くの住宅が炎に包まれた。
阪神高速道路は、635mにわたって横倒しになった。
リポート:こちらは、阪神高速の西宮本町の高速道路なんですけども、高速道路が2回にわたって折れています。下には滑り落ちた車が何台も落ちて、焼き焦げています。ご覧ください、あそこにバスが半分飛び出して、今にも落ちそうな状況となっています。
前輪がはみ出した状態で止まったバス。
当時、このバスで勤務にあたっていたのが、今も当時と同じ帝産観光バスに勤めているベテラン運転手の安井義政さん(61)だ。
発災当時乗務していた 安井義政さん:ここに座って、急に地震が起きたので。「え?何が起きた」と、自分の中では全然分からないですもん。何これっていう感覚なので。今度はドンってなったら横揺れがすごくなるし。
当時、入社2年目だった安井さん。先輩ドライバーと交代しながら、長野からスキー客を乗せ、神戸に向かう途中だった。28年前を思い返してこう語る。
発災当時乗務していた 安井義政さん:橋げたが引っ付いているところで、それが落ちたんです。揺れが収まったと同時に、ガサッと前が落ちたような感じ。パッと見たら道がないし、落ちかけているし。そこで腰抜かして。
発災当時乗務していた 安井義政さん:お客さんも「何があったんですか?事故でもしたんですか?」と聞かれたので、事故ではないですよと。もう道がないので、にっちもさっちもいかないし、前も後ろも行けないので。
安井さんは乗客を降ろし、非常階段を使って安全な場所まで避難させた。
発災当時乗務していた 安井義政さん:(地震が)起きた当時は、すぐまた業務とかがあったので。やっぱり怖い、こういうところを走る時は、ここで落ちたらとか思いましたね。
いつどこで起きるか分からない大震災。同じような状況になった時、私たちはどう対応すればいいのだろうか。
首都圏でも30年以内に70%の確率で起きるとされる「首都直下地震」。
防災の専門家・山村武彦氏は、高速道路などにも大きな被害をもたらす危険性があると指摘する。
防災システム研究所 山村武彦所長:首都高速道路で高齢化が進んでいる道路、震度6強以上の揺れが襲った場合には、大きなダメージが起こる可能性があります。
では、高速道路を運転中、巨大地震が発生した場合は、具体的にどのような行動を取ればよいのか。
防災システム研究所 山村武彦所長:まずハザードランプをつけて、前後の車に注意しながら、徐々にスピードを緩めて路側帯左側に寄せて止める。その後、SNSあるいはアプリで情報を取って、道路管理者や警察署の指示に従うのですが、そこが危険だとなれば、歩いて避難をする。
その際に使用するのが…。
防災システム研究所 山村武彦所長:これが非常用の階段がある場所ですね。非常口です。そこから一般道路に降りられるようになっています。
阪神大震災で、バス運転手の安井さんが乗客を避難させるために使用した、あの非常階段だ。
しかし、巨大地震の際、車を停めた場所によっては非常階段までたどり着けない可能性があると、山村氏は指摘する。その理由が…。
防災システム研究所 山村武彦所長:今走っている場所は、高齢化が進んでいる道路であり、なおかつ大揺れに見舞われる場所がこの道路ですね。
首都高速道路の約30%、99.7kmキロにも及ぶ路線が、開通から50年以上経過。老朽化が進んでいる。
この路線図に首都直下地震の震度予想図を重ねてみると、震度6強の被害が出ると予想される範囲に入る部分がある。
こうした場所に潜む危険性というのが…。
防災システム研究所 山村武彦所長:道路の途中で段差ができてしまったり、あるいは倒壊してしまっていたり。通行できない状態になっている可能性もゼロではないです。
非常階段へのルートが、老朽化による倒壊で閉ざされる危険性。さらにその原因は、老朽化以外にも。
防災システム研究所 山村武彦所長:海岸近くで地盤の悪いところ。あるいは元河川だったところ。その周辺というのは、場合によっては液状化も起こりやすい。
液状化は、水分と砂が多い地盤が、地震で大きく揺さぶられることで起こる現象。地盤が液体のように緩くなり、地上の構造物が傾くなどの恐れがある。
首都高速では、阪神大震災と同じレベルの地震にも耐えられるよう、耐震対策を全ての橋脚で完了するなど、取り組みを進めているが…。
防災システム研究所 山村武彦所長:液状化対策も、耐震対策も進めてはいるんですけれども、それが絶対とは言い切れない。ですから、損壊する可能性はゼロではないと思います。
では、普段からどんな備えをしておけばよいのか?
防災システム研究所 山村武彦所長:万一、非常口から降りられない場合に備えて、ロープや縄ばしご、できれば10m以上のものがあるといいと思います。水や食料とあわせて、最悪の場合の脱出用具として。
地震がいつどこで起きるかは、誰にも分からない。自分の身を守るため、常日頃からの備えが大切だ。
(「イット!」1月17日放送)