新型コロナウイルスの後遺症の1つに「長引くせき」がある。東京の都立病院の外来の外来患者の解析データによると、オミクロン株の後遺症の主な症状は、多い順にけんたい感(46%)、せき(22%)、頭痛(18%)、息切れ(10%)となっている。
新型コロナウイルス感染後にせきが続く割合は5人に1人。ただ長期間にわたりせきが続くと、別の病気を疑う必要も出てくる。その目安は「8週間」だという。
福井市にある「わかば内科クリニック」の若林聖伸院長。30年近くにわたり呼吸器疾患の診断、治療にあたっている。
この病院では毎日、新型コロナ感染後にせきが続くという患者がやってくる。特にオミクロン株の感染が拡大した2022年2月ごろからせきを訴える患者が増えたという。
若林聖伸院長:従来の株と違って、上気道(鼻から喉まで)を中心に症状が出やすい。そのためせきの症状が増えた
せきは気道に侵入した病原体や異物を排除するために出る防御反応だ。異物が入り込むと気道にあるセンサーが感じとる。すると、脳にある咳中枢に刺激が伝わり、異物を排出するように命令しせきが出るという仕組み。
新型コロナに感染すると、まずは気道に侵入したウイルスを追い出すためにせきが出る。さらに、感染により神経細胞が傷つけられると細胞が興奮状態になり、わずかな刺激でも反応するようになる。これがウイルスがなくなってもせきが長引く要因の一つとなっている。
せきは一般的に、3週間以内なら風邪や感染症によるせき。3週間から8週間続くと長引くせき。8週間以上続くと、せきぜんそくなど別の病気の可能性が出てくる。
若林聖伸院長:夜間から朝方にかけてのせきが多い。せき止めを飲んでも良くならない。吸入のステロイドを吸うとよくなる、などの場合には「せきぜんそく」が考えられる。長引くせきでも、強くなっているのか、治ってきているのかという点が判断のポイントとなる
せきには「乾いたせき」と「痰(たん)が絡むせき」の2種類ある。痰が絡むせきが出る場合の対処法としては、「横向きに寝る」、「ぬれマスクを着用する」などがある。
若林聖伸院長:ウイルス感染の患者は乾いたせきの人が多い。痰が絡むようなせきは、せき止めを使わないで痰を調整するような薬でせきを止めるのが基本。痰が絡むせきの場合、せき止めを使って痰を出さないようにすると、かえって長引くことがあるので注意が必要
コロナ後遺症のせきであれば自然と治まってくるとされる。ただ長引くせきはつらいもの。すぐにできる対処法を聞いた。
若林聖伸院長:症状を和らげる方法としては口の中や喉の乾燥を防ぐためマスクをして刺激を避ける。水分をとったり、あめ玉をなめたりして喉の潤いを保つことも大切です
またせきで夜も眠れない、せきのし過ぎで胸が痛い、頭痛がするといった日常生活に支障が出る場合は、せき反射を止める中枢性のせき止めや漢方薬も効果的だ。
さらに心理的な影響でせきが出ている可能性もある。意識してせきをコントロールする重要性も指摘した。
若林聖伸院長:何も入ってこなくても自発的にせきができるでしょ?これは大脳が命令を出しているため。せきは自分である程度コントロールできる。ただ習慣になるとなかなか治らず、長引いてしまう。なるべくせきをしないように我慢する方がいい
(福井テレビ)