大学入学共通テストの試験会場を巡り、福岡市内の高校3年生から「県内では一部、自分の高校で受験できる生徒がいるが、不平等な面があり、理由を知りたい」との投稿が、西日本新聞「あなたの特命取材班」に寄せられた。調べると、会場提供は共通テストの利用大学が受け持つのが原則だが、自前の施設だけでは足りない場合に「学外試験場」として高校などを使える仕組みがある。ただ九州では今年、福岡市と離島以外で高校実施の例はなく、限定的だった。
きっかけとなった高校生の投稿
大学入試センターによると、福岡県では今年、約2万2千人の受験生が14、15の両日、31会場で共通テストを受験した。27会場は大学で、残る4会場は、いずれも福岡市の香住丘高(東区)、東福岡高(博多区)、城南高(城南区)、修猷館高(早良区)だった。
各大学が受け持つ受験者数とエリアは、地域ごとの出願者や大学の収用可能人数、過去の実績を基に、各都道府県別に設けられる参加大学による連絡会議で調整して決める。福岡県の高校の4会場は、九州大の管轄だった。
九大によると今年、福岡県全体の約3分の1を占める約7100人の受験生を同大が担当。福岡市西区の伊都キャンパス(受験予定者約2500人)や、南区の大橋キャンパス(同540人)などで実施されたが、収容できない受験生が合計3300人規模だったとしている。不足分を補うため、人数や立地などを考慮して4校に依頼。費用を支払い、校舎を会場として借りたという。
確認できる範囲で、香住丘高には少なくとも2000年、修猷館高には07年から毎年会場を依頼してきた。城南高は15年、東福岡高は19年から。会場となった高校に在籍する出願者は、大半が自校で受験できたという。
福岡市以外での学外試験場は長崎県の五島、壱岐、上五島、対馬の4高校のほか、鹿児島の大島高と、いずれも大学がない離島の高校。全国的には、埼玉大や名古屋大などが地元の高校を試験会場として使う例はあるが、学外試験場は全試験場(679会場)の1割弱にとどまる。
九大は「割り当てられる受験者数が多いので、高校にお願いしないといけない」と説明。自校受験に不平等がないかについては「答えかねる」とした。大学入試センターは「特に不平等だといった声は、記憶する限り届いていない」と説明している。
(竹中謙輔)
可能な範囲で公平性を追求すべき
東北大の倉元直樹教授(テスト学)の話 一部高校での実施はおかしいとの指摘は、1979年に始まった共通1次試験の時からあったと思われる。共通テストは利用大と大学入試センターが、限られた時間や人員の中、ぎりぎりで実施しており、試験時のミスを一番に避けたい。結果的に、ノウハウを持つ同じ高校で継続している可能性はある。入試で一番大切なことは受験者の公平性。時代に合わせ、可能な範囲で努力して追求すべきだ。
利用学校の固定化で生じる不公平感
京都精華大の鹿野利春教授(情報教育)の話 京都は大学が多く、全て大学会場で受験可能だ。一方で離島や大学が少ない場合など、高校が会場となる自治体もあり、一部の高校で受験させることが、必ずしも不公平だとは感じない。ただ地域によっては、利用学校が固定化するなど不均衡な状況があり、それを「不公平」と感じる人がいる。全ての生徒にとって、公平と思えるような方法を検討してほしい。
共通テストの会場として、一部で高校が利用されていることに疑問を持つ現役高校生からの投稿を受け、ニュースサイト「西日本新聞me」にその概要を掲載したところ、賛否の声が寄せられた。
今年高校が使われたのは、九州だと福岡県と他県の離島のみだった。「大学だけでは収容できないのだから仕方ない」「大学の方が緊張感があって良い結果を出せる生徒もいるはずだ」などとの意見があった。
一方で「不公平」と主張する人も。高校生の子どもを持つ親は「自分の高校で受けるか、行ったこともない大学で受けるのでは、環境が違い過ぎる。当日の交通機関の混み具合、寒さ対策など心構えと不安も異なるはずだ」と指摘した。
子どもが大学会場で受験したという親からは、「会場が遠いのでホテルに泊まった生徒もいたと聞いている」と明記。「大学会場が足りないなら、(平等性を担保するため)毎年高校の試験会場は変えるべきでは」と提案した。