年明けから関東各地で発生している強盗事件への関与が疑われるグループのメンバーが、昨年、広島、山口、東京都稲城市で起こった事件にも関わっていた疑いがあることが23日、捜査関係者への取材でわかった。同一組織が数か月前から全国各地で犯行を繰り返していた可能性がある。いったい、どんな家を狙っているのか気になるところだが、そこには絶対不可避の“カモリスト”の存在があるという。
これまでに千葉と東京・中野区で発生した、強盗致傷事件の実行犯のスマートフォンから、19日に東京・狛江市で発生した強盗殺人事件に関わる情報が見つかっており、ほかの複数の強盗事件でもそれぞれに関連性が浮上。昨年11月の山口、12月の広島の事件など、すでに全国各地で犯行が繰り返されていた可能性が高まっている。 いったい、どんな家が狙われているのか気になるところだが、特殊詐欺や悪徳商法に詳しい犯罪ジャーナリストの多田文明氏は「犯罪組織は確実に“カモリスト”を参考にしている」と指摘する。
「カモリストは過去に詐欺被害に遭った家の名簿のことだが、広い目で見ればありとあらゆるカモリストが存在する。例えば高額商品を買っただけでも業者が太客リストを作成するので、それがどこからか漏れて犯罪組織の手に渡れば、高所得者だと狙われる可能性が高まる」
ほかにも株や不動産の売買をしたり、高学歴であるだけでリストを作成される。なかには病院のカルテまでもがカモリストとして出回っており健康に不安を抱える人を狙った健康食品詐欺に使われたりするという。こうしたリストが業者内でとどまっていればいいが、なかには金銭に困って犯罪組織に売られるケースもあるといい、生活している限りこうしたカモリストに載るのを完全に避けるのは難しいようだ。
ただし、こうしたカモリストに載ってしまっても、それ以上の情報を与えないことが重要だ。
「犯罪組織はカモリストをもとにアポ電(金銭をだまし取るために誰かになりすまして電話をかけること)で資産状況を聞き出そうとしたり、行政や民間業者を名乗って直接訪問して聞き出そうとしてくる。そうした怪しい電話や訪問者と接触せず、カモリスト以上の情報を与えないことで、犯罪被害のリスクを減らすことが可能になる」(多田氏)
実際、昨年11月に起きた山口の事件で起訴された男は、指示役から「金庫が2つあり、合計で1億円ある」と、カモリストだけでは知りえない情報を与えられていた。こうした情報はカモリストをもとに、まさに犯罪組織がアポ電や直接訪問しての会話で仕入れた情報である可能性が高いとみられる。
一方で、一部で指摘されるように実行犯たちは“急造強盗集団”でもある。“犯罪セオリー”にない突発的な行動も十分あり得るだけに、「うちは大丈夫」と慢心せずに警戒したいところだ。