ネットや電話で注文すれば、自宅まで食事を届けてくれるフードデリバリーサービス。受け取る側にとっては雨の日や台風、雪などの悪天候な日に外出せずに済むので、とてもありがたいサービスだが、客先に届けるデリバリー側の声はフィーチャーされにくい。
【写真】この記事の写真を見る(2枚) ウーバーイーツなどのデリバリーサービスは、業務委託の配達員が自らの意志で配達を請け負っているが、店舗のデリバリー担当は天候に関係なく配達しなければならず、選択の余地がない。そのため、台風や雪の時期になると「悪天候の日にデリバリーを頼むのは非常識か否か」という論争がネット上で繰り広げられることも。そこで今回は、飲食店でデリバリーを担当していた人々に、その本音を聞いてみた。

※写真はイメージです iStock.com◆◆◆天候が悪い日の配達時間は大目に見てほしい 以前、ピザチェーンの配達や、個人経営飲食店で出前を担当していた三上達也さん(仮名)は、天候が悪い日の配達については「仕事だと割り切っていた」と語る。「注文がゼロだと店側も困るので、非常識とまでは思わないです。雨の日は注文も増えて忙しく、1日があっという間に終わるのであまり気にしたことはないですね。ただ、悪天候の日は道が渋滞しやすいので、遅くなるとクレームが入るかも、とヒヤヒヤした記憶はあります」 天候の悪さは配達にも影響を及ぼす。配達時間は大目に見てほしい、と三上さん。「悪天候の日に限らず、夏は酷暑でヘルメットが蒸れてすごく暑いし、冬はめちゃくちゃ寒い。自由な時間も多いですが、労働環境だけで考えたら大変な面はありますよね。それと、自分はそれほど長い期間デリバリーの仕事をしていたわけではなく、台風の日の稼働も数回。担当場所も都心だったので範囲も狭く、環境にも恵まれていました。雪が多い地域や、長年デリバリーをしている人とは状況が違うので、意見も変わるかもしれませんね」店舗側の「注文しないでください」アピール そこで次に話を聞いたのは、YouTubeチャンネル「ばかハサ!」でリーダーを務めているノムラさん。彼は、大学時代に大手ピザチェーン店でデリバリーを担当し、4年間客先にピザを運び続ける“ピザ戦士”だったという。「台風の日にピザのデリバリーを頼む客は非常識だと思います。最近は強い台風が来るとなれば店を開けない場合もありますが、世間的にそれほど危険視されていない台風は通常営業。でも、台風には変わりないので、運ぶ側は身の危険を感じるしキツいです。 じつは、悪天候の日はお待たせ時間を180分に設定して、店側も遠回しに『注文しないでくださいアピール』をしたりもしていますが、注文は入ります。だいたい台風の日は30件前後、雪の日でも20件前後の注文が入る。超悪天候の日にオーダーするのは、正直、やめてほしいと思っていましたね」 やはり台風は、普通の雨の日とは状況が大きく異なるという。天候が悪い日は「配達が遅れる」「商品が濡れるリスクあり」「デリバリーが事故に遭ってピザが届かない可能性がある」など、客にとってもデメリットだらけ、とノムラさん。「台風の日に死ぬ思いでピザを配達したのに『雨でピザがビショビショになっていた』というクレームが入ったときはがっくりきました。ある時は、サイドメニューのポテトが風に飛ばされたこともあります。また、事故についても珍しくありません。とくに雪の日の翌日は、路面が凍結していてバイクが転倒しやすく、事故に遭いやすい。そうなれば、配達どころではなくなりますよね」 ノムラさんは激しい雨に打たれて配達しながら「2時間待つくらいなら、自炊したほうがいいのでは?」と感じていたそうだ。支払いを幼い子どもに任せる客 近年増えているフードデリバリーサービスのなかには、悪天候下に配達すると金額が上乗せされる “インセンティブ”がつくケースもある。ノムラさんの宅配ピザ店にはそうした制度はあったのだろうか?「一切なかったですね。ただ、お客さんのなかには配達した際にお釣りをチップとして僕にくれたり、料金とは別に1000円を渡してくれたり、雨を拭う用のタオルをくれる神客もいました。お金やモノに限らず、言葉で感謝を伝えてもらえると、素直にうれしいですね」 反対に“NG客”にあたると、たとえ晴れた日でも怒りの感情がわいてくるという。「たとえば、お釣りを投げつけてくる客や、理由もなくガンを飛ばしてくる客。また、表札がない一軒家は、届け先が見つからないので非常に困ります。そのほか、支払いや注文を幼い子どもに任せる親も理解できません。ミスが起きる可能性があるのでやめてほしいです」 そしてもっとも不快なのは“ありがとうを言わない客”と、ノムラさんは強調する。「配達したときに、ピザを受け取って何も言わず強く玄関の扉を閉められると、こちらも人間なので傷つくんですよね。いろいろ言いましたが、悪天候でも、ひと言『ありがとう』とさえ言ってもらえれば、とてもうれしいし、やりがいも感じるんです。これからもデリバリーを利用しようと思っている人は、食事を届けてくれた配達員に『ありがとう』と言ってあげてください」 読者の中にもフードデリバリーが生活の一部になっている、という人もいるはず。彼らに感謝の気持ちを伝えつつ、台風や大雪の日、雪の日の翌日は、デリバリーの利用については再考してもよさそうだ。(清談社)
ウーバーイーツなどのデリバリーサービスは、業務委託の配達員が自らの意志で配達を請け負っているが、店舗のデリバリー担当は天候に関係なく配達しなければならず、選択の余地がない。そのため、台風や雪の時期になると「悪天候の日にデリバリーを頼むのは非常識か否か」という論争がネット上で繰り広げられることも。そこで今回は、飲食店でデリバリーを担当していた人々に、その本音を聞いてみた。
※写真はイメージです iStock.com
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以前、ピザチェーンの配達や、個人経営飲食店で出前を担当していた三上達也さん(仮名)は、天候が悪い日の配達については「仕事だと割り切っていた」と語る。
「注文がゼロだと店側も困るので、非常識とまでは思わないです。雨の日は注文も増えて忙しく、1日があっという間に終わるのであまり気にしたことはないですね。ただ、悪天候の日は道が渋滞しやすいので、遅くなるとクレームが入るかも、とヒヤヒヤした記憶はあります」
天候の悪さは配達にも影響を及ぼす。配達時間は大目に見てほしい、と三上さん。
「悪天候の日に限らず、夏は酷暑でヘルメットが蒸れてすごく暑いし、冬はめちゃくちゃ寒い。自由な時間も多いですが、労働環境だけで考えたら大変な面はありますよね。それと、自分はそれほど長い期間デリバリーの仕事をしていたわけではなく、台風の日の稼働も数回。担当場所も都心だったので範囲も狭く、環境にも恵まれていました。雪が多い地域や、長年デリバリーをしている人とは状況が違うので、意見も変わるかもしれませんね」
そこで次に話を聞いたのは、YouTubeチャンネル「ばかハサ!」でリーダーを務めているノムラさん。彼は、大学時代に大手ピザチェーン店でデリバリーを担当し、4年間客先にピザを運び続ける“ピザ戦士”だったという。
「台風の日にピザのデリバリーを頼む客は非常識だと思います。最近は強い台風が来るとなれば店を開けない場合もありますが、世間的にそれほど危険視されていない台風は通常営業。でも、台風には変わりないので、運ぶ側は身の危険を感じるしキツいです。
じつは、悪天候の日はお待たせ時間を180分に設定して、店側も遠回しに『注文しないでくださいアピール』をしたりもしていますが、注文は入ります。だいたい台風の日は30件前後、雪の日でも20件前後の注文が入る。超悪天候の日にオーダーするのは、正直、やめてほしいと思っていましたね」
やはり台風は、普通の雨の日とは状況が大きく異なるという。天候が悪い日は「配達が遅れる」「商品が濡れるリスクあり」「デリバリーが事故に遭ってピザが届かない可能性がある」など、客にとってもデメリットだらけ、とノムラさん。
「台風の日に死ぬ思いでピザを配達したのに『雨でピザがビショビショになっていた』というクレームが入ったときはがっくりきました。ある時は、サイドメニューのポテトが風に飛ばされたこともあります。また、事故についても珍しくありません。とくに雪の日の翌日は、路面が凍結していてバイクが転倒しやすく、事故に遭いやすい。そうなれば、配達どころではなくなりますよね」 ノムラさんは激しい雨に打たれて配達しながら「2時間待つくらいなら、自炊したほうがいいのでは?」と感じていたそうだ。支払いを幼い子どもに任せる客 近年増えているフードデリバリーサービスのなかには、悪天候下に配達すると金額が上乗せされる “インセンティブ”がつくケースもある。ノムラさんの宅配ピザ店にはそうした制度はあったのだろうか?「一切なかったですね。ただ、お客さんのなかには配達した際にお釣りをチップとして僕にくれたり、料金とは別に1000円を渡してくれたり、雨を拭う用のタオルをくれる神客もいました。お金やモノに限らず、言葉で感謝を伝えてもらえると、素直にうれしいですね」 反対に“NG客”にあたると、たとえ晴れた日でも怒りの感情がわいてくるという。「たとえば、お釣りを投げつけてくる客や、理由もなくガンを飛ばしてくる客。また、表札がない一軒家は、届け先が見つからないので非常に困ります。そのほか、支払いや注文を幼い子どもに任せる親も理解できません。ミスが起きる可能性があるのでやめてほしいです」 そしてもっとも不快なのは“ありがとうを言わない客”と、ノムラさんは強調する。「配達したときに、ピザを受け取って何も言わず強く玄関の扉を閉められると、こちらも人間なので傷つくんですよね。いろいろ言いましたが、悪天候でも、ひと言『ありがとう』とさえ言ってもらえれば、とてもうれしいし、やりがいも感じるんです。これからもデリバリーを利用しようと思っている人は、食事を届けてくれた配達員に『ありがとう』と言ってあげてください」 読者の中にもフードデリバリーが生活の一部になっている、という人もいるはず。彼らに感謝の気持ちを伝えつつ、台風や大雪の日、雪の日の翌日は、デリバリーの利用については再考してもよさそうだ。(清談社)
「台風の日に死ぬ思いでピザを配達したのに『雨でピザがビショビショになっていた』というクレームが入ったときはがっくりきました。ある時は、サイドメニューのポテトが風に飛ばされたこともあります。また、事故についても珍しくありません。とくに雪の日の翌日は、路面が凍結していてバイクが転倒しやすく、事故に遭いやすい。そうなれば、配達どころではなくなりますよね」
ノムラさんは激しい雨に打たれて配達しながら「2時間待つくらいなら、自炊したほうがいいのでは?」と感じていたそうだ。
近年増えているフードデリバリーサービスのなかには、悪天候下に配達すると金額が上乗せされる “インセンティブ”がつくケースもある。ノムラさんの宅配ピザ店にはそうした制度はあったのだろうか?
「一切なかったですね。ただ、お客さんのなかには配達した際にお釣りをチップとして僕にくれたり、料金とは別に1000円を渡してくれたり、雨を拭う用のタオルをくれる神客もいました。お金やモノに限らず、言葉で感謝を伝えてもらえると、素直にうれしいですね」
反対に“NG客”にあたると、たとえ晴れた日でも怒りの感情がわいてくるという。
「たとえば、お釣りを投げつけてくる客や、理由もなくガンを飛ばしてくる客。また、表札がない一軒家は、届け先が見つからないので非常に困ります。そのほか、支払いや注文を幼い子どもに任せる親も理解できません。ミスが起きる可能性があるのでやめてほしいです」
そしてもっとも不快なのは“ありがとうを言わない客”と、ノムラさんは強調する。
「配達したときに、ピザを受け取って何も言わず強く玄関の扉を閉められると、こちらも人間なので傷つくんですよね。いろいろ言いましたが、悪天候でも、ひと言『ありがとう』とさえ言ってもらえれば、とてもうれしいし、やりがいも感じるんです。これからもデリバリーを利用しようと思っている人は、食事を届けてくれた配達員に『ありがとう』と言ってあげてください」
読者の中にもフードデリバリーが生活の一部になっている、という人もいるはず。彼らに感謝の気持ちを伝えつつ、台風や大雪の日、雪の日の翌日は、デリバリーの利用については再考してもよさそうだ。
(清談社)