2階部分が、大きく斜めに傾いた建物。屋根も崩れて、宙にぶらさがった木片は今にも落ちてきそうだ。
ここは、宮崎市にある商店街。さらに、まるで廃墟のような建物が並ぶ中で、営業を続ける店もある。なぜこのような状態になったのか、また、なぜこのままなのか。取材した。
宮崎市の中心部にある、車通りの多い道路。
そこから一本入った途端、路地には人の気配がなくなった。
取材班がその先に進むと、古い建物が見えてきた。屋根はかなりボロボロだ。昭和20年代からその姿を残す商店街「青空ショッピングセンター」だ。
崩れかかっているためか、「関係者以外立ち入り禁止」と書かれた場所もある。しかし更に奥に進むと、驚きの光景が広がっていた。明かりをつけ、営業している店があったのだ。
今にも崩れ落ちそうなショッピングセンターで営業を続ける、店主に話を聞いた。
ーーここは何のお店ですか?稲口商店・稲口文男さん:中心なのは雑穀、豆類ですね。関連して、お砂糖類とか。
ーー現在は営業中ですか?一応、営業しているつもりですね。
店は、昭和20年代から70年以上営業を続けているという。これだけ老朽化が進み、危険はないのだろうか。
稲口商店・稲口文男さん:もういつ崩れてもおかしくないんですけどね。大きい地震が何度かありましたけど、なんとか耐えてるんですよね。
外から見ると、店の2階部分は傾き、今にも崩れそうな状態だ。
2階に上がる階段に小型カメラを伸ばしてみたところ…、カメラの前に突然猫が!どうやら、ネコのすみ家となっているようだ。
近くに店を構える人は、「何かで一気に崩れちゃったら危ないだろうなって」と、この“廃墟のような商店街”に不安を漏らす。
商店街はさらに、夜になると、一段と異様さを増す。
道行く観光客は、「こわい!めっちゃ怖い!」と、目の前の信じられない光景にクギづけの様子だ。「一人じゃ通りたくない」、子どもも「地震が起きて壊れたみたい」と話す。
宮崎市役所によると、この商店街は昭和30年頃から栄え始めた。当時は、現在の「上野アメ横」ほどの人が行き来する、市を代表する商店街だったという。
確かに、昭和30年頃に撮影された写真を見ると、道の奥まで人がびっしりと続いているのがわかる。
しかし、店の後継者不足や、近くに大型商業施設が出来た影響などにより、多くが閉店。一時は400軒近くあった店も、現在は10軒にまで減ってしまった。
周辺からは建物の取り壊しを求める声があがっているが、宮崎市役所商業政策課の長友由美さんは「個人の財産なので、強制的に市が取り壊すという事が出来ない」と、所有者不明の土地が多く手が付けられないと話す。
そんな中、問題解決への突破口となりうるのが、2023年4月からの「民法改正」だ。改正により、全国で問題化している所有者不明の空き家や土地の利用・処分が可能になる。
宮崎市役所 商業政策課・長友由美さん:いま、土地・建物の不明であるところの利活用を、どんな手法が考えられるのか、じっくり探っていきたい。
大きな事故などが起きる前に、事態を改善の方向に向かわせることは出来るのか。市の対応が問われる。
(「イット!」2023年1月9日放送より)