山ガールが流行語大賞候補になってから10年あまり、コロナ禍以降のアウトドアブームで登山人気が再燃している。
【写真】この記事の写真を見る(2枚) しかし、登山人口が増えれば、当然ながらマナーの悪い人や迷惑行為も増えていく。登山愛好家たちが山で出会った“ヤバい登山客”の目撃談を紹介する。(取材・文=押尾ダン/清談社)◆◆◆鷹ノ巣山で中年カップルが露出プレイ 小島隆一さん(仮名、36歳)は、週末になると北アルプスや南アルプスの山に行くキャリア10年のハイカー。今年の春、その北アルプスでこんな迷惑な登山客を目撃したという。

iStock.com「登山系YouTuberらしき人がモジュラーを装着したGoProを手に持って、ひとりでブツブツ実況しながら登山道を歩いていたんです。それだけなら『ウザいな』と思うだけですが、マジで迷惑だったのは山頂の記念碑で長時間撮影していたこと。 見晴らしのいい山頂付近は、みんなが記念写真を撮影する場所なので、撮り終わったらすぐ次の人に場所を空けるのがマナーです。ところが、そのYouTuberは山頂の撮影スポットをひとりで独占し、GoProに向かってずっとしゃべり続けていた。 5年くらい前まではインスタグラマーとかの映え系女子にそういう迷惑行為をする人が多かったんですが、映え系女子の次はYouTuberかと、ウンザリした気分になりましたね」 小島さんが目撃した迷惑な登山客はこのYouTuberだけではない。東京からアクセスしやすいことで人気の奥多摩の鷹ノ巣山では、こんな“ヤバい中年カップル”を目撃したという。「ジグザグに登る急斜面の木の陰で、中年カップルが堂々と本番寸前の行為をしていたんですよ。おそらく人に見られると興奮する性癖なんだと思う。一種の露出プレイですね。 山にはそういう性癖の人がたまにいて、ハイカーのあいだで有名な『露出狂おじさん』もいる。そのおじさんは、女性ハイカーを見つけると真っ裸になってリュックだけ背負い、細い一本道の上のほうから何食わぬ顔をして下ってくるんです。 しかも、山には逃げ場がないので、女性ハイカーは見て見ぬふりをしてすれ違う以外にない。露出癖のある人にとって、山は穴場スポットになっているフシがありますね」残り汁を山に捨ててしまう…初心者ハイカーの迷惑行為 一泊登山用のテン場(テント場)でもハイカー同士のトラブルが増えているという。登山歴7年になる杉山純一さん(仮名、42歳)は、若者グループのこんな迷惑行為を証言する。「一泊登山では、午後1~2時にテン場に着き、明るいうちに食事の準備をして午後7~8時に就寝します。夏場の場合、夜が明けないうちに起床して出発する。ところが、最近は山のルーティンを知らない初心者の登山客がめちゃくちゃ多いんです。 とくにヤバいのが若者グループですね。テン場で酒盛りしたり騒いだり、キャンプと同じノリで山にくる。先日も若者グループがほかの登山客から『うるさい!』と怒鳴られていました。午後9時の消灯後もおしゃべりを続けるし、かなり腹立ちます」 もうひとつ大迷惑なのは、こうした若者グループがカップ麺などの残り汁を山に捨てることだという。杉山さんが続ける。「山には生活排水の処理施設もごみ処理施設もありません。塩分や油分の多い汁物をそのまま捨てたら、土壌を汚染して環境に悪影響を与えることになる。だから、山でカップ麺を食べる場合はスープを飲み切れるような小さな商品を持っていくか、凝固剤でスープを固めて持ち帰るというのがルールでありマナー。 ところが、登山初心者の若者には残り汁を平気で山に捨てる人がものすごく多いんです。こういう登山客が増えていくと、いずれ山が大変なことになりますよ」 もっとも、だからといってベテランハイカーのマナーがいいのかというと、けっしてそんなことはないようだ。コロナ禍以降に登山にハマった大学生の姫野沙瑛子さん(仮名、21歳)が、テン場で出会ったおじさんハイカーの迷惑行為を証言する。「山はそこまでナンパは多くないんですけど、テン場にはしつこく話しかけてくるおじさんハイカーがよくいます。それも、『俺はあの山に登ったことがある』『俺はあの山にも登った』と、ひたすら『俺は』『俺が』という自慢話のオンパレード。なぜか小さなアルバムまで持ち歩き、私たちに見せてくるんです」 この手の自慢おじさんが困るのは、前述の露出マニアのケースと同様に、どれほど迷惑でも避難する場所がないことだ。「逃げ場がないので、自慢おじさんに遭遇したら消灯時間まで話につき合わなきゃいけない。しかも、翌日の登山ルートもだいたい同じなので、下手したら翌朝も自慢話が続くんです。おじさんハイカーの自慢話だけは、本当に勘弁してほしい」大渋滞を引き起こす、超大人数のお年寄りの団体 それに加えて、最近増えている迷惑行為がお年寄りの団体だという。登山歴8年の中川雅一さん(仮名、34歳)が証言する。「昨年、北アルプスの燕岳で30~40人のお年寄りの団体を目撃しました。ほかの山でも見たことがあります。別におじいちゃんおばあちゃんが山に登ってもいいんですが、30~40人もの団体で山に登るのは、さすがに非常識すぎると思います。 なぜかというと、それだけの数のお年寄りがいると、後ろは必ず大渋滞するからです。実際、燕岳の鎖場(登山者の安全確保のために鎖が取り付けられた場所)でお年寄りの団体に遭遇したときは、お盆期間の高速道路みたいな大渋滞が発生しました」 登山歴13年の長谷川健さん(仮名、48歳)も同意見だ。「低山ではなくそれなりに標高が高いある山で、どう見ても登山は無理そうな70歳過ぎのおばあちゃんを見たことがあります。案の定、途中で登り続けるのを断念し、通りがかった若者のハイカーが荷物を持ってあげて、そのまま下山しました。 おそらく昔はよく登山していて、また登山が盛り上がっているから登ってみようと考えたんだと思います。でも、登山って、最低でも自重スクワットを連続50回くらいできる体力がないと無理。申し訳ないんですが、自分の体力を考慮していない、無茶な登山は迷惑です」 さらに、近年はトレラン(トレイルランニング)する人と登山客がトラブルになるケースも増えているという。長谷川さんが続ける。「トレランと普通の登山ではスピードが違うので、狭い一本道でイライラされたり、追い抜くときにトラブルになることがあるんです。特に高尾山~陣馬山のルートはトレランが多く、よくトラブルになります」 人気が再燃するなかで、いろんな意味でヤバい人が増えている登山シーン。初心者が山に行くときは、登山路での行いからテント場のマナーまで細心の注意を払ったほうが良さそうだ。(清談社)
しかし、登山人口が増えれば、当然ながらマナーの悪い人や迷惑行為も増えていく。登山愛好家たちが山で出会った“ヤバい登山客”の目撃談を紹介する。(取材・文=押尾ダン/清談社)
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小島隆一さん(仮名、36歳)は、週末になると北アルプスや南アルプスの山に行くキャリア10年のハイカー。今年の春、その北アルプスでこんな迷惑な登山客を目撃したという。
iStock.com
「登山系YouTuberらしき人がモジュラーを装着したGoProを手に持って、ひとりでブツブツ実況しながら登山道を歩いていたんです。それだけなら『ウザいな』と思うだけですが、マジで迷惑だったのは山頂の記念碑で長時間撮影していたこと。
見晴らしのいい山頂付近は、みんなが記念写真を撮影する場所なので、撮り終わったらすぐ次の人に場所を空けるのがマナーです。ところが、そのYouTuberは山頂の撮影スポットをひとりで独占し、GoProに向かってずっとしゃべり続けていた。
5年くらい前まではインスタグラマーとかの映え系女子にそういう迷惑行為をする人が多かったんですが、映え系女子の次はYouTuberかと、ウンザリした気分になりましたね」
小島さんが目撃した迷惑な登山客はこのYouTuberだけではない。東京からアクセスしやすいことで人気の奥多摩の鷹ノ巣山では、こんな“ヤバい中年カップル”を目撃したという。
「ジグザグに登る急斜面の木の陰で、中年カップルが堂々と本番寸前の行為をしていたんですよ。おそらく人に見られると興奮する性癖なんだと思う。一種の露出プレイですね。
山にはそういう性癖の人がたまにいて、ハイカーのあいだで有名な『露出狂おじさん』もいる。そのおじさんは、女性ハイカーを見つけると真っ裸になってリュックだけ背負い、細い一本道の上のほうから何食わぬ顔をして下ってくるんです。
しかも、山には逃げ場がないので、女性ハイカーは見て見ぬふりをしてすれ違う以外にない。露出癖のある人にとって、山は穴場スポットになっているフシがありますね」
一泊登山用のテン場(テント場)でもハイカー同士のトラブルが増えているという。登山歴7年になる杉山純一さん(仮名、42歳)は、若者グループのこんな迷惑行為を証言する。
「一泊登山では、午後1~2時にテン場に着き、明るいうちに食事の準備をして午後7~8時に就寝します。夏場の場合、夜が明けないうちに起床して出発する。ところが、最近は山のルーティンを知らない初心者の登山客がめちゃくちゃ多いんです。
とくにヤバいのが若者グループですね。テン場で酒盛りしたり騒いだり、キャンプと同じノリで山にくる。先日も若者グループがほかの登山客から『うるさい!』と怒鳴られていました。午後9時の消灯後もおしゃべりを続けるし、かなり腹立ちます」 もうひとつ大迷惑なのは、こうした若者グループがカップ麺などの残り汁を山に捨てることだという。杉山さんが続ける。「山には生活排水の処理施設もごみ処理施設もありません。塩分や油分の多い汁物をそのまま捨てたら、土壌を汚染して環境に悪影響を与えることになる。だから、山でカップ麺を食べる場合はスープを飲み切れるような小さな商品を持っていくか、凝固剤でスープを固めて持ち帰るというのがルールでありマナー。 ところが、登山初心者の若者には残り汁を平気で山に捨てる人がものすごく多いんです。こういう登山客が増えていくと、いずれ山が大変なことになりますよ」 もっとも、だからといってベテランハイカーのマナーがいいのかというと、けっしてそんなことはないようだ。コロナ禍以降に登山にハマった大学生の姫野沙瑛子さん(仮名、21歳)が、テン場で出会ったおじさんハイカーの迷惑行為を証言する。「山はそこまでナンパは多くないんですけど、テン場にはしつこく話しかけてくるおじさんハイカーがよくいます。それも、『俺はあの山に登ったことがある』『俺はあの山にも登った』と、ひたすら『俺は』『俺が』という自慢話のオンパレード。なぜか小さなアルバムまで持ち歩き、私たちに見せてくるんです」 この手の自慢おじさんが困るのは、前述の露出マニアのケースと同様に、どれほど迷惑でも避難する場所がないことだ。「逃げ場がないので、自慢おじさんに遭遇したら消灯時間まで話につき合わなきゃいけない。しかも、翌日の登山ルートもだいたい同じなので、下手したら翌朝も自慢話が続くんです。おじさんハイカーの自慢話だけは、本当に勘弁してほしい」大渋滞を引き起こす、超大人数のお年寄りの団体 それに加えて、最近増えている迷惑行為がお年寄りの団体だという。登山歴8年の中川雅一さん(仮名、34歳)が証言する。「昨年、北アルプスの燕岳で30~40人のお年寄りの団体を目撃しました。ほかの山でも見たことがあります。別におじいちゃんおばあちゃんが山に登ってもいいんですが、30~40人もの団体で山に登るのは、さすがに非常識すぎると思います。 なぜかというと、それだけの数のお年寄りがいると、後ろは必ず大渋滞するからです。実際、燕岳の鎖場(登山者の安全確保のために鎖が取り付けられた場所)でお年寄りの団体に遭遇したときは、お盆期間の高速道路みたいな大渋滞が発生しました」 登山歴13年の長谷川健さん(仮名、48歳)も同意見だ。「低山ではなくそれなりに標高が高いある山で、どう見ても登山は無理そうな70歳過ぎのおばあちゃんを見たことがあります。案の定、途中で登り続けるのを断念し、通りがかった若者のハイカーが荷物を持ってあげて、そのまま下山しました。 おそらく昔はよく登山していて、また登山が盛り上がっているから登ってみようと考えたんだと思います。でも、登山って、最低でも自重スクワットを連続50回くらいできる体力がないと無理。申し訳ないんですが、自分の体力を考慮していない、無茶な登山は迷惑です」 さらに、近年はトレラン(トレイルランニング)する人と登山客がトラブルになるケースも増えているという。長谷川さんが続ける。「トレランと普通の登山ではスピードが違うので、狭い一本道でイライラされたり、追い抜くときにトラブルになることがあるんです。特に高尾山~陣馬山のルートはトレランが多く、よくトラブルになります」 人気が再燃するなかで、いろんな意味でヤバい人が増えている登山シーン。初心者が山に行くときは、登山路での行いからテント場のマナーまで細心の注意を払ったほうが良さそうだ。(清談社)
とくにヤバいのが若者グループですね。テン場で酒盛りしたり騒いだり、キャンプと同じノリで山にくる。先日も若者グループがほかの登山客から『うるさい!』と怒鳴られていました。午後9時の消灯後もおしゃべりを続けるし、かなり腹立ちます」
もうひとつ大迷惑なのは、こうした若者グループがカップ麺などの残り汁を山に捨てることだという。杉山さんが続ける。
「山には生活排水の処理施設もごみ処理施設もありません。塩分や油分の多い汁物をそのまま捨てたら、土壌を汚染して環境に悪影響を与えることになる。だから、山でカップ麺を食べる場合はスープを飲み切れるような小さな商品を持っていくか、凝固剤でスープを固めて持ち帰るというのがルールでありマナー。
ところが、登山初心者の若者には残り汁を平気で山に捨てる人がものすごく多いんです。こういう登山客が増えていくと、いずれ山が大変なことになりますよ」
もっとも、だからといってベテランハイカーのマナーがいいのかというと、けっしてそんなことはないようだ。コロナ禍以降に登山にハマった大学生の姫野沙瑛子さん(仮名、21歳)が、テン場で出会ったおじさんハイカーの迷惑行為を証言する。
「山はそこまでナンパは多くないんですけど、テン場にはしつこく話しかけてくるおじさんハイカーがよくいます。それも、『俺はあの山に登ったことがある』『俺はあの山にも登った』と、ひたすら『俺は』『俺が』という自慢話のオンパレード。なぜか小さなアルバムまで持ち歩き、私たちに見せてくるんです」
この手の自慢おじさんが困るのは、前述の露出マニアのケースと同様に、どれほど迷惑でも避難する場所がないことだ。
「逃げ場がないので、自慢おじさんに遭遇したら消灯時間まで話につき合わなきゃいけない。しかも、翌日の登山ルートもだいたい同じなので、下手したら翌朝も自慢話が続くんです。おじさんハイカーの自慢話だけは、本当に勘弁してほしい」
それに加えて、最近増えている迷惑行為がお年寄りの団体だという。登山歴8年の中川雅一さん(仮名、34歳)が証言する。
「昨年、北アルプスの燕岳で30~40人のお年寄りの団体を目撃しました。ほかの山でも見たことがあります。別におじいちゃんおばあちゃんが山に登ってもいいんですが、30~40人もの団体で山に登るのは、さすがに非常識すぎると思います。
なぜかというと、それだけの数のお年寄りがいると、後ろは必ず大渋滞するからです。実際、燕岳の鎖場(登山者の安全確保のために鎖が取り付けられた場所)でお年寄りの団体に遭遇したときは、お盆期間の高速道路みたいな大渋滞が発生しました」
登山歴13年の長谷川健さん(仮名、48歳)も同意見だ。
「低山ではなくそれなりに標高が高いある山で、どう見ても登山は無理そうな70歳過ぎのおばあちゃんを見たことがあります。案の定、途中で登り続けるのを断念し、通りがかった若者のハイカーが荷物を持ってあげて、そのまま下山しました。
おそらく昔はよく登山していて、また登山が盛り上がっているから登ってみようと考えたんだと思います。でも、登山って、最低でも自重スクワットを連続50回くらいできる体力がないと無理。申し訳ないんですが、自分の体力を考慮していない、無茶な登山は迷惑です」
さらに、近年はトレラン(トレイルランニング)する人と登山客がトラブルになるケースも増えているという。長谷川さんが続ける。
「トレランと普通の登山ではスピードが違うので、狭い一本道でイライラされたり、追い抜くときにトラブルになることがあるんです。特に高尾山~陣馬山のルートはトレランが多く、よくトラブルになります」
人気が再燃するなかで、いろんな意味でヤバい人が増えている登山シーン。初心者が山に行くときは、登山路での行いからテント場のマナーまで細心の注意を払ったほうが良さそうだ。
(清談社)