2022年7月の安倍元首相銃撃事件以降、「宗教二世」について注目が高まった。ジャーナリストの鈴木エイトさんと、創価学会理事長だった正木正明氏を父に持つ正木伸城さんの対談を『週刊文春WOMAN2023創刊4周年記念号』より、一部編集のうえ紹介する。
【画像】教団職員を辞めた理由を語る正木伸城さん
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鈴木「伸城(のぶしろ)」というお名前はあの池田大作さんが名付け親なんですよね?
正木 はい。ちょうど父(正木正明氏。「創価学会」元理事長)が幹部として勢いが出てきた頃に僕が産まれて、父が池田氏に名付けを頼んだそうです。
正木伸城さん
鈴木 池田大作さんについて世間の目下の関心は、果たして存命しているのか、というところだと思うんですが、どうなんでしょうか。
正木 正直僕も今の状態についてつぶさにはわからないんですけど、学会内では「お元気な池田先生」というワードが現在も飛び交っています。もし亡くなったとしたら、7日以内に死亡届を出さないといけないとか、いろいろと違法のラインがあるので、ちまたで陰謀論的に語られるような形で死亡を隠すということは、さすがにないんじゃないかなと思います。
鈴木 正木さんのお父様は、学会の組織ではナンバー2だったわけですが、どうやって教団内で頭角を現してきたんですか。
正木 いろいろ要因はありますよね。演説が上手かったことも一因だと思います。学会では「指導」と言うんですが、会員さんが喜ぶように、信心の理解が深まるように喋ることができるというか。学会本部の組織文化が肌に合わず、退職鈴木 それは息子である正木さんにも引き継がれている?正木 と、言って下さる方はいましたね。僕は教団内では学生などの若い世代に向けた教義解説をする立場で、29歳のときには、その部門のトップをやっていました。鈴木 その正木さんが、なぜ教団職員を辞めたのですか?正木 これもさまざまに要因があります。大きかったことの一つは、「政治と宗教」の問題です。例えば2015年ごろに注目を集めた安保法制では、僕から見ると公明党の振る舞いが自民党にすり寄っているように見えた。決定的だったのは、そこに抱いた僕の疑問に対して、教団内でちゃんと答えてくれる人がいなくて、頭ごなしに「信心が足りないからだ」と否定されてしまったことです。 そういうことが積み重なって、また、うつ病で倒れたりもして、学会本部の組織文化が肌に合わないと痛感し、退職したという流れです。鈴木 その後、転職活動で非常にご苦労された経験をライターとして「現代ビジネス」に書かれてましたね。あれ、非常にタメになりました。僕もちゃんと就職したことがないんで、200社に応募して全滅とか、転職活動ってこんなに大変なんだ、と。正木 あれは心、折れました。鈴木 で、唯一見つかった仕事が他の宗教法人の職員で(笑)。正木 エージェントの方が「ピッタリの仕事が見つかりました!」って(笑)。それでも最終的に広報・マーケティング関係の仕事で別の会社に転職することができたのは、本当に奇跡的でした。お父さんの仕事を調べて作文で発表する宿題はつらい鈴木 正木さん自身は、いわゆる「宗教二世」としての葛藤はなかったんですか。正木 ありました。例えば修学旅行で日光にいったときに、母から「鳥居をくぐっちゃだめ」と言われたり。幼いころから、そういった信仰の教育みたいなことがやっぱりあるわけです。あるいは小学校で「お父さんの仕事を調べて作文で発表しましょう」とか。鈴木 あれ、ヒドいですよね。正木 宗教専従職員の息子からするとつらい宿題です。母親に添削されながら「お父さんは世界平和のために世界中を駆け回って……」と書いたら、友達に「えっ、お前の父ちゃんってヒーローなの?」ってツッコまれて(笑)。「世界平和と家庭の平和とどっちが大事なんだ!」とキレたことも鈴木 やっぱり両親ともに信仰生活に熱心だと、ネグレクト的な状況も起こるんですか。正木 子ども時代に両親が家にいなくて、イヤな思いをする子は、結構います。僕自身もイヤな思いをしました。それで高校生のときに父親に「世界平和と家庭の平和とどっちが大事なんだ!」ってキレたこともありました。二世の声はなかなか響かない鈴木 今、「宗教二世」という言葉がよく使われるんですけど、僕はあの言い方、あまり好きじゃないんです。本当は「カルトの二世問題」と呼ぶべきなんです。統一教会が「カルトという言い方はヘイトスピーチだ」と盛んに主張し、当事者の二世への配慮などからもあまり使われていませんが、現実に組織として人権侵害を起こしているわけですから、ちゃんとカルト呼ばわりしないといけないと思う。正木 その通りですね。鈴木 いわゆる「宗教二世」問題って、本当は宗教の問題じゃないんですよね。宗教に限らず、色んなある程度極端な思想とか思考の枠組の中で、親の影響で子どもが被害を受けているという構造自体を捉えないといけない。正木 僕自身、学会の本部職員は辞めましたが、まだ脱会はしていないんですね。やっぱり物心ついてからずっと学会員で、親戚もみんな学会員というコミュニティの中で生きてきたので、そこから抜けるのは正直つらい。 でも、だからこそ創価学会の二世信者に「信教の自由はあるのか」と問われると首を傾げてしまう部分がある。教団内では「二世信者が違和感を持つのは信仰がおかしいから」という考えが前提になることもあるので、二世の声は中々響かない。●鈴木エイトさんが統一教会を取材するきっかけとなった“偽装勧誘”、学会の名簿管理システム、救済新法の問題点など、対談全文は『週刊文春WOMAN2023創刊4周年記念号』に掲載されている。(伊藤 秀倫/週刊文春WOMAN 2023創刊4周年記念号)
正木 いろいろ要因はありますよね。演説が上手かったことも一因だと思います。学会では「指導」と言うんですが、会員さんが喜ぶように、信心の理解が深まるように喋ることができるというか。
鈴木 それは息子である正木さんにも引き継がれている?
正木 と、言って下さる方はいましたね。僕は教団内では学生などの若い世代に向けた教義解説をする立場で、29歳のときには、その部門のトップをやっていました。
鈴木 その正木さんが、なぜ教団職員を辞めたのですか?
正木 これもさまざまに要因があります。大きかったことの一つは、「政治と宗教」の問題です。例えば2015年ごろに注目を集めた安保法制では、僕から見ると公明党の振る舞いが自民党にすり寄っているように見えた。決定的だったのは、そこに抱いた僕の疑問に対して、教団内でちゃんと答えてくれる人がいなくて、頭ごなしに「信心が足りないからだ」と否定されてしまったことです。
そういうことが積み重なって、また、うつ病で倒れたりもして、学会本部の組織文化が肌に合わないと痛感し、退職したという流れです。
鈴木 その後、転職活動で非常にご苦労された経験をライターとして「現代ビジネス」に書かれてましたね。あれ、非常にタメになりました。僕もちゃんと就職したことがないんで、200社に応募して全滅とか、転職活動ってこんなに大変なんだ、と。正木 あれは心、折れました。鈴木 で、唯一見つかった仕事が他の宗教法人の職員で(笑)。正木 エージェントの方が「ピッタリの仕事が見つかりました!」って(笑)。それでも最終的に広報・マーケティング関係の仕事で別の会社に転職することができたのは、本当に奇跡的でした。お父さんの仕事を調べて作文で発表する宿題はつらい鈴木 正木さん自身は、いわゆる「宗教二世」としての葛藤はなかったんですか。正木 ありました。例えば修学旅行で日光にいったときに、母から「鳥居をくぐっちゃだめ」と言われたり。幼いころから、そういった信仰の教育みたいなことがやっぱりあるわけです。あるいは小学校で「お父さんの仕事を調べて作文で発表しましょう」とか。鈴木 あれ、ヒドいですよね。正木 宗教専従職員の息子からするとつらい宿題です。母親に添削されながら「お父さんは世界平和のために世界中を駆け回って……」と書いたら、友達に「えっ、お前の父ちゃんってヒーローなの?」ってツッコまれて(笑)。「世界平和と家庭の平和とどっちが大事なんだ!」とキレたことも鈴木 やっぱり両親ともに信仰生活に熱心だと、ネグレクト的な状況も起こるんですか。正木 子ども時代に両親が家にいなくて、イヤな思いをする子は、結構います。僕自身もイヤな思いをしました。それで高校生のときに父親に「世界平和と家庭の平和とどっちが大事なんだ!」ってキレたこともありました。二世の声はなかなか響かない鈴木 今、「宗教二世」という言葉がよく使われるんですけど、僕はあの言い方、あまり好きじゃないんです。本当は「カルトの二世問題」と呼ぶべきなんです。統一教会が「カルトという言い方はヘイトスピーチだ」と盛んに主張し、当事者の二世への配慮などからもあまり使われていませんが、現実に組織として人権侵害を起こしているわけですから、ちゃんとカルト呼ばわりしないといけないと思う。正木 その通りですね。鈴木 いわゆる「宗教二世」問題って、本当は宗教の問題じゃないんですよね。宗教に限らず、色んなある程度極端な思想とか思考の枠組の中で、親の影響で子どもが被害を受けているという構造自体を捉えないといけない。正木 僕自身、学会の本部職員は辞めましたが、まだ脱会はしていないんですね。やっぱり物心ついてからずっと学会員で、親戚もみんな学会員というコミュニティの中で生きてきたので、そこから抜けるのは正直つらい。 でも、だからこそ創価学会の二世信者に「信教の自由はあるのか」と問われると首を傾げてしまう部分がある。教団内では「二世信者が違和感を持つのは信仰がおかしいから」という考えが前提になることもあるので、二世の声は中々響かない。●鈴木エイトさんが統一教会を取材するきっかけとなった“偽装勧誘”、学会の名簿管理システム、救済新法の問題点など、対談全文は『週刊文春WOMAN2023創刊4周年記念号』に掲載されている。(伊藤 秀倫/週刊文春WOMAN 2023創刊4周年記念号)
鈴木 その後、転職活動で非常にご苦労された経験をライターとして「現代ビジネス」に書かれてましたね。あれ、非常にタメになりました。僕もちゃんと就職したことがないんで、200社に応募して全滅とか、転職活動ってこんなに大変なんだ、と。
正木 あれは心、折れました。
鈴木 で、唯一見つかった仕事が他の宗教法人の職員で(笑)。
正木 エージェントの方が「ピッタリの仕事が見つかりました!」って(笑)。それでも最終的に広報・マーケティング関係の仕事で別の会社に転職することができたのは、本当に奇跡的でした。
鈴木 正木さん自身は、いわゆる「宗教二世」としての葛藤はなかったんですか。
正木 ありました。例えば修学旅行で日光にいったときに、母から「鳥居をくぐっちゃだめ」と言われたり。幼いころから、そういった信仰の教育みたいなことがやっぱりあるわけです。あるいは小学校で「お父さんの仕事を調べて作文で発表しましょう」とか。
鈴木 あれ、ヒドいですよね。正木 宗教専従職員の息子からするとつらい宿題です。母親に添削されながら「お父さんは世界平和のために世界中を駆け回って……」と書いたら、友達に「えっ、お前の父ちゃんってヒーローなの?」ってツッコまれて(笑)。「世界平和と家庭の平和とどっちが大事なんだ!」とキレたことも鈴木 やっぱり両親ともに信仰生活に熱心だと、ネグレクト的な状況も起こるんですか。正木 子ども時代に両親が家にいなくて、イヤな思いをする子は、結構います。僕自身もイヤな思いをしました。それで高校生のときに父親に「世界平和と家庭の平和とどっちが大事なんだ!」ってキレたこともありました。二世の声はなかなか響かない鈴木 今、「宗教二世」という言葉がよく使われるんですけど、僕はあの言い方、あまり好きじゃないんです。本当は「カルトの二世問題」と呼ぶべきなんです。統一教会が「カルトという言い方はヘイトスピーチだ」と盛んに主張し、当事者の二世への配慮などからもあまり使われていませんが、現実に組織として人権侵害を起こしているわけですから、ちゃんとカルト呼ばわりしないといけないと思う。正木 その通りですね。鈴木 いわゆる「宗教二世」問題って、本当は宗教の問題じゃないんですよね。宗教に限らず、色んなある程度極端な思想とか思考の枠組の中で、親の影響で子どもが被害を受けているという構造自体を捉えないといけない。正木 僕自身、学会の本部職員は辞めましたが、まだ脱会はしていないんですね。やっぱり物心ついてからずっと学会員で、親戚もみんな学会員というコミュニティの中で生きてきたので、そこから抜けるのは正直つらい。 でも、だからこそ創価学会の二世信者に「信教の自由はあるのか」と問われると首を傾げてしまう部分がある。教団内では「二世信者が違和感を持つのは信仰がおかしいから」という考えが前提になることもあるので、二世の声は中々響かない。●鈴木エイトさんが統一教会を取材するきっかけとなった“偽装勧誘”、学会の名簿管理システム、救済新法の問題点など、対談全文は『週刊文春WOMAN2023創刊4周年記念号』に掲載されている。(伊藤 秀倫/週刊文春WOMAN 2023創刊4周年記念号)
鈴木 あれ、ヒドいですよね。
正木 宗教専従職員の息子からするとつらい宿題です。母親に添削されながら「お父さんは世界平和のために世界中を駆け回って……」と書いたら、友達に「えっ、お前の父ちゃんってヒーローなの?」ってツッコまれて(笑)。
鈴木 やっぱり両親ともに信仰生活に熱心だと、ネグレクト的な状況も起こるんですか。
正木 子ども時代に両親が家にいなくて、イヤな思いをする子は、結構います。僕自身もイヤな思いをしました。それで高校生のときに父親に「世界平和と家庭の平和とどっちが大事なんだ!」ってキレたこともありました。二世の声はなかなか響かない鈴木 今、「宗教二世」という言葉がよく使われるんですけど、僕はあの言い方、あまり好きじゃないんです。本当は「カルトの二世問題」と呼ぶべきなんです。統一教会が「カルトという言い方はヘイトスピーチだ」と盛んに主張し、当事者の二世への配慮などからもあまり使われていませんが、現実に組織として人権侵害を起こしているわけですから、ちゃんとカルト呼ばわりしないといけないと思う。正木 その通りですね。鈴木 いわゆる「宗教二世」問題って、本当は宗教の問題じゃないんですよね。宗教に限らず、色んなある程度極端な思想とか思考の枠組の中で、親の影響で子どもが被害を受けているという構造自体を捉えないといけない。正木 僕自身、学会の本部職員は辞めましたが、まだ脱会はしていないんですね。やっぱり物心ついてからずっと学会員で、親戚もみんな学会員というコミュニティの中で生きてきたので、そこから抜けるのは正直つらい。 でも、だからこそ創価学会の二世信者に「信教の自由はあるのか」と問われると首を傾げてしまう部分がある。教団内では「二世信者が違和感を持つのは信仰がおかしいから」という考えが前提になることもあるので、二世の声は中々響かない。●鈴木エイトさんが統一教会を取材するきっかけとなった“偽装勧誘”、学会の名簿管理システム、救済新法の問題点など、対談全文は『週刊文春WOMAN2023創刊4周年記念号』に掲載されている。(伊藤 秀倫/週刊文春WOMAN 2023創刊4周年記念号)
正木 子ども時代に両親が家にいなくて、イヤな思いをする子は、結構います。僕自身もイヤな思いをしました。それで高校生のときに父親に「世界平和と家庭の平和とどっちが大事なんだ!」ってキレたこともありました。
鈴木 今、「宗教二世」という言葉がよく使われるんですけど、僕はあの言い方、あまり好きじゃないんです。本当は「カルトの二世問題」と呼ぶべきなんです。統一教会が「カルトという言い方はヘイトスピーチだ」と盛んに主張し、当事者の二世への配慮などからもあまり使われていませんが、現実に組織として人権侵害を起こしているわけですから、ちゃんとカルト呼ばわりしないといけないと思う。
正木 その通りですね。
鈴木 いわゆる「宗教二世」問題って、本当は宗教の問題じゃないんですよね。宗教に限らず、色んなある程度極端な思想とか思考の枠組の中で、親の影響で子どもが被害を受けているという構造自体を捉えないといけない。正木 僕自身、学会の本部職員は辞めましたが、まだ脱会はしていないんですね。やっぱり物心ついてからずっと学会員で、親戚もみんな学会員というコミュニティの中で生きてきたので、そこから抜けるのは正直つらい。 でも、だからこそ創価学会の二世信者に「信教の自由はあるのか」と問われると首を傾げてしまう部分がある。教団内では「二世信者が違和感を持つのは信仰がおかしいから」という考えが前提になることもあるので、二世の声は中々響かない。●鈴木エイトさんが統一教会を取材するきっかけとなった“偽装勧誘”、学会の名簿管理システム、救済新法の問題点など、対談全文は『週刊文春WOMAN2023創刊4周年記念号』に掲載されている。(伊藤 秀倫/週刊文春WOMAN 2023創刊4周年記念号)
鈴木 いわゆる「宗教二世」問題って、本当は宗教の問題じゃないんですよね。宗教に限らず、色んなある程度極端な思想とか思考の枠組の中で、親の影響で子どもが被害を受けているという構造自体を捉えないといけない。
正木 僕自身、学会の本部職員は辞めましたが、まだ脱会はしていないんですね。やっぱり物心ついてからずっと学会員で、親戚もみんな学会員というコミュニティの中で生きてきたので、そこから抜けるのは正直つらい。
でも、だからこそ創価学会の二世信者に「信教の自由はあるのか」と問われると首を傾げてしまう部分がある。教団内では「二世信者が違和感を持つのは信仰がおかしいから」という考えが前提になることもあるので、二世の声は中々響かない。
●鈴木エイトさんが統一教会を取材するきっかけとなった“偽装勧誘”、学会の名簿管理システム、救済新法の問題点など、対談全文は『週刊文春WOMAN2023創刊4周年記念号』に掲載されている。(伊藤 秀倫/週刊文春WOMAN 2023創刊4周年記念号)
●鈴木エイトさんが統一教会を取材するきっかけとなった“偽装勧誘”、学会の名簿管理システム、救済新法の問題点など、対談全文は『週刊文春WOMAN2023創刊4周年記念号』に掲載されている。
(伊藤 秀倫/週刊文春WOMAN 2023創刊4周年記念号)