私は住宅の購入や設計について、日々さまざまなお客様からご相談を受けています。
以下で紹介するのは、相談を受けるなかで出会った、「天井高低め」な物件とそれをめぐるトラブルのお話です(プライバシーに配慮して、相談事例にはアレンジを加えてあります)。
42歳の安藤宏さんと2歳年下の智子さん(ともに仮名)のご夫婦は、中学生と小学生の子どもがいる4人家族です。
ご夫婦は、5年前に3200万円で購入した1994年築で約70?・3LDKの中古区分マンションをつい最近、売却しました。そして、その資金をもとに、戸建てへの買い替えをおこなったのです。
写真はイメージです〔PHOTO〕iStock
思っていたよりも高い額でマンションが売れ、戸建ての購入の手続きも無事に済んだことで「めでたしめでたし」と一息ついていました。ですが、無事にすべての手続きが終わったことよりも、ご家族をさらに安心させたことがありました。というのも、ご家族は前のマンション住み始めてからというもの、長年ある事情によりストレスを抱えていたからです。それは、「住んでいるマンションが、自分たちにとっては天井高が低めである」という問題でした。5年前に購入した中古マンションは、10件ほど見学したなかで一番良い物件だと感じ、購入に至りました。世帯年収800万円ほどのお二人にとっては3200万円という価格も魅力でした。不動産売買契約を締結した後に、壁紙貼り替えとルームクリーニングのお見積りをとるためにもう一度見学する機会があったのですが、この時点で初めて「この物件は天井高が低めのではないか」と気付いたのです。低いというと語弊がありますが、この物件は天井高が最も高いところで220cmであり、身長が高めの宏さんにとっては、圧迫感がある天井高であったということです。確かに昨今のマンションの天井高は240cm~250cmが多くなっているため、それと比較すると20cm~30cm低かったことになります(※建築の場合は「mm」表記が一般的ですが読みやすい「cm」にて表記しています)。 天井高が低いことのデメリット智子さんは責任感が強く、かつ切り替えが苦手な性格のようで、その日以降、天井高についてかなり調べてみたようです。建築基準法という法律では、居室部分は210cm以上とするように定められています。ご家族の購入した物件は220cmで、その基準値よりは10cm高いものではありましたが、マンションの中では天井高が低いほうの物件であることがわかってきました。天井高が低めである物件のデメリットとしては、以下のようなものがあります。・圧迫感があり、窮屈に感じてしまう。・家具が限定されてしまう。・照明などにぶつかってしまうことがある。・空間が少なくなる分、立体的な有効面積が少なくなる。住宅を購入すること、買った後に家を好みのかたちに仕上げていくことは楽しいはずのイベントです。それなのに智子さんは、購入したマンションの悪いところばかり数えてしまうようになります。そして、そんな欠陥に気づくことができなかった自分への怒りと宏さんへの申し訳なさでとても落ち込んでしまったようなのです。 仲介した不動産業者に、この物件は「天井高は低めなのか?」「締結した契約をキャンセルできないか?」と相談したところ、「天井高は建築基準法に則った高さになっているから問題はない。住めば慣れるはず」「すでに締結した契約をキャンセルするには320万円を放棄することになる」と良い回答を得ることができませんでした。智子さんは、さらに物件をキャンセルするために努力しますが……。つづきは、【後編】「3200万円で「天井が低め」のマンションを買った「年収800万夫婦」、二人を襲った「意外な悲劇」」で詳しくお伝えします。
思っていたよりも高い額でマンションが売れ、戸建ての購入の手続きも無事に済んだことで「めでたしめでたし」と一息ついていました。
ですが、無事にすべての手続きが終わったことよりも、ご家族をさらに安心させたことがありました。
というのも、ご家族は前のマンション住み始めてからというもの、長年ある事情によりストレスを抱えていたからです。
それは、「住んでいるマンションが、自分たちにとっては天井高が低めである」という問題でした。
5年前に購入した中古マンションは、10件ほど見学したなかで一番良い物件だと感じ、購入に至りました。世帯年収800万円ほどのお二人にとっては3200万円という価格も魅力でした。
不動産売買契約を締結した後に、壁紙貼り替えとルームクリーニングのお見積りをとるためにもう一度見学する機会があったのですが、この時点で初めて「この物件は天井高が低めのではないか」と気付いたのです。
低いというと語弊がありますが、この物件は天井高が最も高いところで220cmであり、身長が高めの宏さんにとっては、圧迫感がある天井高であったということです。
確かに昨今のマンションの天井高は240cm~250cmが多くなっているため、それと比較すると20cm~30cm低かったことになります(※建築の場合は「mm」表記が一般的ですが読みやすい「cm」にて表記しています)。
天井高が低いことのデメリット智子さんは責任感が強く、かつ切り替えが苦手な性格のようで、その日以降、天井高についてかなり調べてみたようです。建築基準法という法律では、居室部分は210cm以上とするように定められています。ご家族の購入した物件は220cmで、その基準値よりは10cm高いものではありましたが、マンションの中では天井高が低いほうの物件であることがわかってきました。天井高が低めである物件のデメリットとしては、以下のようなものがあります。・圧迫感があり、窮屈に感じてしまう。・家具が限定されてしまう。・照明などにぶつかってしまうことがある。・空間が少なくなる分、立体的な有効面積が少なくなる。住宅を購入すること、買った後に家を好みのかたちに仕上げていくことは楽しいはずのイベントです。それなのに智子さんは、購入したマンションの悪いところばかり数えてしまうようになります。そして、そんな欠陥に気づくことができなかった自分への怒りと宏さんへの申し訳なさでとても落ち込んでしまったようなのです。 仲介した不動産業者に、この物件は「天井高は低めなのか?」「締結した契約をキャンセルできないか?」と相談したところ、「天井高は建築基準法に則った高さになっているから問題はない。住めば慣れるはず」「すでに締結した契約をキャンセルするには320万円を放棄することになる」と良い回答を得ることができませんでした。智子さんは、さらに物件をキャンセルするために努力しますが……。つづきは、【後編】「3200万円で「天井が低め」のマンションを買った「年収800万夫婦」、二人を襲った「意外な悲劇」」で詳しくお伝えします。
智子さんは責任感が強く、かつ切り替えが苦手な性格のようで、その日以降、天井高についてかなり調べてみたようです。
建築基準法という法律では、居室部分は210cm以上とするように定められています。
ご家族の購入した物件は220cmで、その基準値よりは10cm高いものではありましたが、マンションの中では天井高が低いほうの物件であることがわかってきました。
天井高が低めである物件のデメリットとしては、以下のようなものがあります。
・圧迫感があり、窮屈に感じてしまう。・家具が限定されてしまう。・照明などにぶつかってしまうことがある。・空間が少なくなる分、立体的な有効面積が少なくなる。
住宅を購入すること、買った後に家を好みのかたちに仕上げていくことは楽しいはずのイベントです。それなのに智子さんは、購入したマンションの悪いところばかり数えてしまうようになります。そして、そんな欠陥に気づくことができなかった自分への怒りと宏さんへの申し訳なさでとても落ち込んでしまったようなのです。
仲介した不動産業者に、この物件は「天井高は低めなのか?」「締結した契約をキャンセルできないか?」と相談したところ、「天井高は建築基準法に則った高さになっているから問題はない。住めば慣れるはず」「すでに締結した契約をキャンセルするには320万円を放棄することになる」と良い回答を得ることができませんでした。智子さんは、さらに物件をキャンセルするために努力しますが……。つづきは、【後編】「3200万円で「天井が低め」のマンションを買った「年収800万夫婦」、二人を襲った「意外な悲劇」」で詳しくお伝えします。
仲介した不動産業者に、この物件は「天井高は低めなのか?」「締結した契約をキャンセルできないか?」と相談したところ、「天井高は建築基準法に則った高さになっているから問題はない。住めば慣れるはず」「すでに締結した契約をキャンセルするには320万円を放棄することになる」と良い回答を得ることができませんでした。
智子さんは、さらに物件をキャンセルするために努力しますが……。つづきは、【後編】「3200万円で「天井が低め」のマンションを買った「年収800万夫婦」、二人を襲った「意外な悲劇」」で詳しくお伝えします。