埼玉県飯能市美杉台の住宅で、住人の夫婦と帰省中だった娘の計3人が殺害された事件は、閑静な住宅街に悲しみと不安を広げている。
転入して数年だったという被害者家族と、ほど近くに長年住んでいた斎藤淳容疑者(40)にどんな接点があったのか、なぜ悲惨な事件が起きてしまったのか――。
「いつも笑顔で話しかけてくれた」。殺害された米国籍の無職ビショップ・ウィリアム・ロス・ジュニアさん(69)を知る近所の女性(38)は、そう振り返る。以前住んでいたという米テキサス州のことで会話が弾み、自らが執筆したという本を「読んでみて」と勧められたこともある。「なぜ殺されなければならなかったのか」と声を詰まらせた。
住民の男性(43)によると、ビショップさんと妻の森田泉さん(68)は5年ほど前に引っ越してきたという。「奥さんはおとなしく見えたが、ハキハキ話す女性だった」と語る。別の住民女性(65)は、東京都渋谷区から帰省していて被害に遭った長女の会社員森田・ソフィアナ・恵さん(32)について、「すらっとしていてきれいな人。明るくて仲の良いご家族だった」と悼んだ。
一方、斎藤容疑者は近年ほとんど近所付き合いがなかったという。近くに住む60歳代の女性は「小学生の頃はサッカーをしていて、かっこいい子だった」と証言する。だが、斎藤容疑者の父親(71)によると、1999年に両親が離婚し、母親と姉が家を出た後は、戸建て住宅に一人で暮らし、最近見かけたという女性は「家からあまり出ていない印象だった。庭の草も長く伸びていた」という。2年ほど前、斎藤容疑者が自治会費を茶封筒に入れて届けに来たことがあり、「まじめで几帳面(きちょうめん)な人だと思っていた」と話した。
◇ 埼玉県警は27日、ビショップさんに対する殺人未遂容疑で逮捕した斎藤容疑者の容疑を殺人に切り替え、さいたま地検に送検した。
斎藤容疑者は約1年前にビショップさん宅の車を傷つけたとして器物損壊容疑で逮捕され、その後、不起訴となった。捜査関係者によると、夫婦は当時、「心当たりがない」と警察に説明していたといい、夫婦の側には、周辺でトラブルを抱えているという認識はなかったとみられる。