千葉市にある「スクラップヤード」と呼ばれる再生可能な金属を保管する施設が、民家とわずか30メートルしか離れていないということで、近隣住民が4年以上も防音・振動に悩まされています。
■ヤード“騒音・粉じん”…トラブル続出
ヤード従業員:「何、君は!ここダメ、バカか!あなた最悪!」
取材中、怒鳴り込んでくるヤードの従業員。
“ヤードから約30メートル”近隣住民:「土日祝日なし(365日)ずっとやってますね。すごく迷惑しています」
広大な敷地に金属スクラップを積み上げ、金属音を鳴り響かせているスクラップヤード。騒音は最高で79デシベルを記録。地下鉄の車内と同じくらいの音量です。
“ヤードから約30メートル”近隣住民:「大型重機がうちの前を通っています。地響きがします」
重機によって大きな振動が発生。さらに、ヤードから排出される粉じんによる被害もありました。
“ヤードから約30メートル”近隣住民:「本当に老後はここでゆっくり暮らそうと思っていたんです。結構、精神的に参っちゃうところもあります」
■鉄くずの大きな山…条例3つすべて“違反”
千葉市の中心部から直線距離で6キロの場所に、金属スクラップヤードがあります。
塀に囲まれて中の様子が分かりませんが、上から見てみると、およそ3600坪、サッカーコート2面分ほどの広さの敷地の至る所に、鉄くずの大きな山が積み上げられています。
千葉市の条例では、1つのスクラップの山は200平方メートル以下の面積に収め、山と山の間は2メートル以上離し、高さは5メートル以下と条例で定められています。
しかし、このヤードは、その3つの点すべてに違反。
ヤードからわずか30メートルの場所には、2軒の住宅があります。住民に話を聞くと、様々な被害があることが分かりました。
■被害(1)「騒音」 365日ずっと…
“ヤードから30メートル”近隣住民:「ガタンガタン、ゴーッという音とか1年中365日、朝の7時ぐらいからずっと続いている。休みなく」
千葉市の基準では、この地域は午前8時から午後7時までは作業音を55デシベル以下に抑えなければなりませんが、午後4時、実際に測ってみると、最大79デシベルを記録。これは、地下鉄の車内と同じレベルです。
さらに、朝6時から8時の基準は50デシベルですが、7時にはすでに70デシベルを超える音が出ていました。
“ヤードから約30メートル”近隣住民:「(Q.行政に相談は?)(騒音が)始まってすぐぐらいに相談した」「(Q.効果は?)ないですね」
住宅とは反対側にあるホテルでは、騒音の影響で14部屋あるうちのヤードに面している3部屋が使用できず、売り上げが減ってしまったと嘆いています。
“ヤードに隣接”ホテル経営者:「どうしても音の問題で、お客さんからクレームが入る。(ヤード)に面している部屋は止めている。売り上げも減っている」
騒音はいつから始まったのでしょうか。
近隣住民:「4年前にヤードができて、もういきなり大きな音がした。(テレビの)声が聞こえないくらい大きな音がした」
これまで中古車の保管場所でしたが、2018年の夏に土地の所有者が変わり、金属スクラップヤードになったといいます。被害は、騒音だけではありません。
■被害(2)「振動」 浄化槽に亀裂が…
“ヤードから約30メートル”近隣住民:「昼間だと大型の重機が動きますから、振動がすごい。トイレに座っていても、ゆらゆら揺れるくらい」
ヤードに隣接するホテルでは…。
“ヤードに隣接”ホテル経営者:「浄化槽の点検に入った時、亀裂が入っていると…。それが隣(ヤード)の振動が原因と特定はなかなか難しいんですけど。修理すると、かなり高額な費用が掛かるので、今後どうしたものか」
地中に埋まる浄化槽の修理には1000万円。ヤードの振動が原因か証明できず、困っているといいます。
被害は他にもあります。
■被害(3)「粉じん」 木が真っ白に…
ヤードに隣接する林を進むと、粉じんを吹き出す施設がありました。鉄を分別する機械から出ているといいます。
“ヤード横の土地”地主男性:「この小さな木が真っ白になる」
地面には、粉じんが積もって1メートルほどの山となっていました。
取材を進めていると突然、中国語を交え、ヤードの従業員が怒鳴り込んで来ました。
ヤード従業員:「何、君は?ここダメ」「バカか!あなた最悪」
一方的にまくし立てられ、会話になりません。後日、詳しく話を聞くべく、ヤードの入り口に向かいました。
通訳を交えて中国語で尋ねても、聞く耳を持ってもらえず去って行きました。
ヤードの経営者は中国人だといい、今から10年ほど前に鉄スクラップ卸売業として開業。千葉県内の別の場所で営業していたが、2018年にこの場所にヤードを作ったといいます。
ヤード側の主張を聞くべく、住民との窓口になっている従業員の携帯電話に連絡を取ると、ヤード側の主張を聞くことはできませんでした。
■行政指導も“改善せず”…「老後の生活台なし」
千葉市は住民の訴えにより、ヤードに対し、何度も行政指導を行っていて、徐々に改善されている点もあるといいます。後日、取材に向かうと、金属スクラップの山の高さは規定の5メートル以下になっていましたが…。
住民が騒音を記録したメモを見ると、21日には、通常50デシベル以下に抑えなければならない朝6時台で最高84.8デシベル、8時台には最高87.3デシベルと、ゲームセンター内と同じレベルの音を記録。問題は解決されていませんでした。
ヤード側は、騒音対策として住宅との間に6メートルの壁を立てることを千葉市に伝えているといいます。しかし、今ある土地に壁を作るのではなく、新たに土地を買って住宅に迫った位置に壁を作るというのです。
“ヤードから約30メートル”近隣住民:「こちらの方に近付けたところを1000平方メートルほど(土地を)買って、そこに壁を作ると言っているんです」「どんな壁を作るか分からないし、もっと(ヤードと)近い距離で、にらめっこして生活しないといけない」
ヤードができて4年以上。状況はほとんど改善されず、近隣住民の被害は今も続いています。
“ヤードから約30メートル”近隣住民:「本当に老後はここでゆっくり暮らそうと思っていたんです。もう、どうしていいか分からない。やめてほしい」