北海道標茶町で26日夕、ワゴン車とトラックが正面衝突し、3人が死傷した事故は、ワゴン車とエゾシカの衝突が発端とみられることが27日、道警への取材で明らかになった。
道内でシカが絡む事故は、昨年まで5年連続で過去最多を更新。10、11月はシカの交尾期で行動が活発になるため、道警などは注意を呼びかけている。
道警によると、事故現場では、メスのシカがワゴン車側の車線で死んでおり、ワゴン車が対向車線にはみ出す形で衝突したことから、シカとぶつかった弾みでトラックに衝突した可能性がある。現場付近に目立ったブレーキ痕は確認できなかった。
道警交通企画課のまとめでは、シカと衝突したり、シカを避けようとブレーキを踏んで追突されたりした事故は昨年、4009件起きた。10、11月は全体の4割を占める1630件、時間帯別では午後4~8時が過半数の2114件。人身事故は2件だった。
日本損害保険協会北海道支部によると、シカに関連した事故で車両保険を支払った件数は昨年10、11月は1072件。支払額は総額6億2423万円で、いずれも過去最多だった。修理費などの支払額は平均58・2万円に上った。
今年は9月末までに前年同期比283件増の2231件の事故が起きていて、今月27日未明にも、旭川市の国道12号で軽乗用車が飛び出してきたシカと衝突し、ボンネットやフロントガラスを破損した。
エゾシカの推定生息数は69万頭。大きなオスは1・9メートル、体重150キロほどにもなる。明治初期の大雪や乱獲で絶滅寸前まで減少したが、禁猟などの保護政策で生息数が回復。近年は生息数が増加傾向だという。
事故が増えた要因について、道野生動物対策課は「生息数増加のほか、コロナ禍で交通量が減り、シカが道路に出没しやすくなったことなども考えられる」としている。
道立総合研究機構エネルギー・環境・地質研究所の上野真由美主査によると、10、11月は交尾期でオスがメスを追いかけるなど動きが活発になり、明け方や夕方は、餌を求めてシカが移動することが多いという。またアスファルト上はひづめが滑ってシカの動きが鈍るといい、特に雨上がりなどは注意が必要だという。
道警は「山間部では十分に減速し、夜間はハイビームを使って前方を確認してほしい。シカは群れで動き、同じ場所を通ることが多いので、目撃した場所を運転するときは注意してほしい」と呼びかけている。