ひざ痛患者にとって、試練の季節が訪れようとしている。冬の寒さで冷えたひざを無理に鍛えれば、大けがは免れない。実は、ひざ痛改善の鍵は、「ひざ以外の部分を整える」ことにあったのだ。
秋から冬へ、まもなく寒さがやってくる。全国に1000万人以上、潜在的な患者も含めれば約3000万人以上いると推定される「変形性膝関節症」に悩む人にとって、寒さは大敵だ。
対策をしなければひざ痛がどんどん悪化し、寝たきり状態に陥る可能性すらあるのだ。しかし、やみくもにひざを鍛えようとするのは逆効果となる。
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「ひざ痛を改善するためには、まず初めに『ひざの内部は寒い』ということを認識する必要があります。人間の一般的な体温が約36℃であるのに対し、ひざの中は約32℃と4℃も低い。冬場には、30℃ほどにまで落ち込むこともあります。ひざ関節の中には血管が通っていないので、温まりにくいんです。それにもかかわらず、いきなり体操をしたり、速いペースで歩いたりすると、痛みは悪化してしまいます」(京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻の青山朋樹教授)では、一体何から始めればよいのだろうか。「黒幕」をまず整えるたかこ整骨院院長の高子大樹氏はこう話す。「ひざ痛の『黒幕』は、実は股関節やお尻、足首など、他の場所にあります。これらが緊張・硬化していると、ひざに向かって伸びる神経を圧迫する上、血流が滞ってひざが温まりません。人間の体は連動しているので、痛みの発生源であるひざにばかり注目していても意味がないのです。ガチガチになった発生源と『黒幕』両方を整えることから始めましょう」まず高子氏が勧めるのは、股関節を整える(1)「足の付け根ストレッチ」だ。「まず、左ひざを地面につけ、片ひざ立ちの状態になります。立てているほうの足は直角に曲げてください。続いて、できるかぎり背筋を伸ばしたまま、股関節が伸びることを意識して腰を前に出し、左腕を真上に伸ばします。左足の付け根から股関節の前面が痛気持ちいいと感じたところで30秒間キープしましょう。右ひざを地面につける場合も同様です」 次は、ひざを支えるお尻の奥の筋肉を整える(2)「足組みストレッチ」に取り組もう。床に仰向けになり、右足が下、左足が上になるように足を組む。続いて、両足を上げて体に引きつけ、両手を左のすねに重ねながら足を抱える。お尻の筋肉が伸びたことを感じたら、その状態を30秒間保つ。この動きは、坐骨神経痛にも効果を発揮する。体育の授業でおなじみの「アキレス腱伸ばし」学生時代の体育の授業で行っていたであろう(3)「アキレス腱伸ばし」は、ふくらはぎ周りのけが防止のために実践されてきたが、実はひざ痛にも有効だ。ひざを下から支えている足首を柔らかくすることができる。ただし、注意点もある。「寒い中で勢いをつけてアキレス腱を伸ばすと、ひざの周りにある筋肉や靭帯に過度な負荷がかかってしまい、怪我に繋がります。ゆっくりと行いましょう」(前出・青山氏)また、ひざを安定させる機能を持っている太ももを柔らかく保つことも重要だ。特に、裏の部分は固まりやすいため、(4)「もも裏リセット」で定期的にほぐすといいだろう。 仰向けになって右ひざを立て、左足をまっすぐ伸ばす。両手で右足のもも裏を抱え、息を吐きながら引き寄せよう。この状態を15秒保ち、反対の足でも同様に行う。「ストレッチは、続けないと効果が薄くなります。おすすめは週に2回、一生です。ピンピンコロリのための仕事だと考えて、継続を心がけましょう」(松浦整形外科内科の井上留美子院長)「ゆらし」に効果あり痛みの黒幕のストレッチに成功したら、ひざを整えることに着手したい。「ひざ関節に直接アプローチするため、まずは(5)『お皿ゆらし』を行いましょう。片方のひざを立てて座り、お皿の骨の縁を両手の親指と人差し指、中指で左右から包み込みます。そして、両手を上下に30秒間動かす。こうすることで、お皿を正しい位置に戻し、軟骨のすり減りや水が溜まるのを防げます」(前出・高子氏)(6)「ひざ上げゆらし」は、前出の井上氏がおすすめするひざの調整方法だ。患部の柔軟性を取り戻し、痛みを軽減できる。「椅子に浅く腰掛けた状態で、ひざ裏やや上の腱の部分をしっかりと握り、両足を持ち上げます。次に、重力に従って両足を前後にゆらしましょう」 もし「ひざ上げゆらし」が難しい場合は、ひざ周辺の痛む部分を、少し痛いと感じる強さで5秒間押すだけの(7)「痛点ストレッチ」という方法もある。同じ効果を得られるので、毎日行おう。寒いなかでも元気に歩いて生活しよう。やみくもにではなくできることから正しくコツコツと。痛みによく効くツボ押しに、おうちにあるものを使った健康法までまだまだ続く冷えた膝を治すための53カ条。後編記事『ストレッチと東洋医学の教えでひざ痛を治す…!寒い季節のひざ防衛法53ヵ条』で引き続き紹介する。「週刊現代」2022年10月29日号より
「ひざ痛を改善するためには、まず初めに『ひざの内部は寒い』ということを認識する必要があります。人間の一般的な体温が約36℃であるのに対し、ひざの中は約32℃と4℃も低い。
冬場には、30℃ほどにまで落ち込むこともあります。ひざ関節の中には血管が通っていないので、温まりにくいんです。それにもかかわらず、いきなり体操をしたり、速いペースで歩いたりすると、痛みは悪化してしまいます」(京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻の青山朋樹教授)
では、一体何から始めればよいのだろうか。
たかこ整骨院院長の高子大樹氏はこう話す。
「ひざ痛の『黒幕』は、実は股関節やお尻、足首など、他の場所にあります。これらが緊張・硬化していると、ひざに向かって伸びる神経を圧迫する上、血流が滞ってひざが温まりません。
人間の体は連動しているので、痛みの発生源であるひざにばかり注目していても意味がないのです。ガチガチになった発生源と『黒幕』両方を整えることから始めましょう」
まず高子氏が勧めるのは、股関節を整える(1)「足の付け根ストレッチ」だ。
「まず、左ひざを地面につけ、片ひざ立ちの状態になります。立てているほうの足は直角に曲げてください。続いて、できるかぎり背筋を伸ばしたまま、股関節が伸びることを意識して腰を前に出し、左腕を真上に伸ばします。左足の付け根から股関節の前面が痛気持ちいいと感じたところで30秒間キープしましょう。右ひざを地面につける場合も同様です」
次は、ひざを支えるお尻の奥の筋肉を整える(2)「足組みストレッチ」に取り組もう。床に仰向けになり、右足が下、左足が上になるように足を組む。続いて、両足を上げて体に引きつけ、両手を左のすねに重ねながら足を抱える。お尻の筋肉が伸びたことを感じたら、その状態を30秒間保つ。この動きは、坐骨神経痛にも効果を発揮する。体育の授業でおなじみの「アキレス腱伸ばし」学生時代の体育の授業で行っていたであろう(3)「アキレス腱伸ばし」は、ふくらはぎ周りのけが防止のために実践されてきたが、実はひざ痛にも有効だ。ひざを下から支えている足首を柔らかくすることができる。ただし、注意点もある。「寒い中で勢いをつけてアキレス腱を伸ばすと、ひざの周りにある筋肉や靭帯に過度な負荷がかかってしまい、怪我に繋がります。ゆっくりと行いましょう」(前出・青山氏)また、ひざを安定させる機能を持っている太ももを柔らかく保つことも重要だ。特に、裏の部分は固まりやすいため、(4)「もも裏リセット」で定期的にほぐすといいだろう。 仰向けになって右ひざを立て、左足をまっすぐ伸ばす。両手で右足のもも裏を抱え、息を吐きながら引き寄せよう。この状態を15秒保ち、反対の足でも同様に行う。「ストレッチは、続けないと効果が薄くなります。おすすめは週に2回、一生です。ピンピンコロリのための仕事だと考えて、継続を心がけましょう」(松浦整形外科内科の井上留美子院長)「ゆらし」に効果あり痛みの黒幕のストレッチに成功したら、ひざを整えることに着手したい。「ひざ関節に直接アプローチするため、まずは(5)『お皿ゆらし』を行いましょう。片方のひざを立てて座り、お皿の骨の縁を両手の親指と人差し指、中指で左右から包み込みます。そして、両手を上下に30秒間動かす。こうすることで、お皿を正しい位置に戻し、軟骨のすり減りや水が溜まるのを防げます」(前出・高子氏)(6)「ひざ上げゆらし」は、前出の井上氏がおすすめするひざの調整方法だ。患部の柔軟性を取り戻し、痛みを軽減できる。「椅子に浅く腰掛けた状態で、ひざ裏やや上の腱の部分をしっかりと握り、両足を持ち上げます。次に、重力に従って両足を前後にゆらしましょう」 もし「ひざ上げゆらし」が難しい場合は、ひざ周辺の痛む部分を、少し痛いと感じる強さで5秒間押すだけの(7)「痛点ストレッチ」という方法もある。同じ効果を得られるので、毎日行おう。寒いなかでも元気に歩いて生活しよう。やみくもにではなくできることから正しくコツコツと。痛みによく効くツボ押しに、おうちにあるものを使った健康法までまだまだ続く冷えた膝を治すための53カ条。後編記事『ストレッチと東洋医学の教えでひざ痛を治す…!寒い季節のひざ防衛法53ヵ条』で引き続き紹介する。「週刊現代」2022年10月29日号より
次は、ひざを支えるお尻の奥の筋肉を整える(2)「足組みストレッチ」に取り組もう。
床に仰向けになり、右足が下、左足が上になるように足を組む。続いて、両足を上げて体に引きつけ、両手を左のすねに重ねながら足を抱える。お尻の筋肉が伸びたことを感じたら、その状態を30秒間保つ。この動きは、坐骨神経痛にも効果を発揮する。
学生時代の体育の授業で行っていたであろう(3)「アキレス腱伸ばし」は、ふくらはぎ周りのけが防止のために実践されてきたが、実はひざ痛にも有効だ。ひざを下から支えている足首を柔らかくすることができる。ただし、注意点もある。
「寒い中で勢いをつけてアキレス腱を伸ばすと、ひざの周りにある筋肉や靭帯に過度な負荷がかかってしまい、怪我に繋がります。ゆっくりと行いましょう」(前出・青山氏)
また、ひざを安定させる機能を持っている太ももを柔らかく保つことも重要だ。特に、裏の部分は固まりやすいため、(4)「もも裏リセット」で定期的にほぐすといいだろう。
仰向けになって右ひざを立て、左足をまっすぐ伸ばす。両手で右足のもも裏を抱え、息を吐きながら引き寄せよう。この状態を15秒保ち、反対の足でも同様に行う。「ストレッチは、続けないと効果が薄くなります。おすすめは週に2回、一生です。ピンピンコロリのための仕事だと考えて、継続を心がけましょう」(松浦整形外科内科の井上留美子院長)「ゆらし」に効果あり痛みの黒幕のストレッチに成功したら、ひざを整えることに着手したい。「ひざ関節に直接アプローチするため、まずは(5)『お皿ゆらし』を行いましょう。片方のひざを立てて座り、お皿の骨の縁を両手の親指と人差し指、中指で左右から包み込みます。そして、両手を上下に30秒間動かす。こうすることで、お皿を正しい位置に戻し、軟骨のすり減りや水が溜まるのを防げます」(前出・高子氏)(6)「ひざ上げゆらし」は、前出の井上氏がおすすめするひざの調整方法だ。患部の柔軟性を取り戻し、痛みを軽減できる。「椅子に浅く腰掛けた状態で、ひざ裏やや上の腱の部分をしっかりと握り、両足を持ち上げます。次に、重力に従って両足を前後にゆらしましょう」 もし「ひざ上げゆらし」が難しい場合は、ひざ周辺の痛む部分を、少し痛いと感じる強さで5秒間押すだけの(7)「痛点ストレッチ」という方法もある。同じ効果を得られるので、毎日行おう。寒いなかでも元気に歩いて生活しよう。やみくもにではなくできることから正しくコツコツと。痛みによく効くツボ押しに、おうちにあるものを使った健康法までまだまだ続く冷えた膝を治すための53カ条。後編記事『ストレッチと東洋医学の教えでひざ痛を治す…!寒い季節のひざ防衛法53ヵ条』で引き続き紹介する。「週刊現代」2022年10月29日号より
仰向けになって右ひざを立て、左足をまっすぐ伸ばす。両手で右足のもも裏を抱え、息を吐きながら引き寄せよう。この状態を15秒保ち、反対の足でも同様に行う。
「ストレッチは、続けないと効果が薄くなります。おすすめは週に2回、一生です。ピンピンコロリのための仕事だと考えて、継続を心がけましょう」(松浦整形外科内科の井上留美子院長)
痛みの黒幕のストレッチに成功したら、ひざを整えることに着手したい。
「ひざ関節に直接アプローチするため、まずは(5)『お皿ゆらし』を行いましょう。
片方のひざを立てて座り、お皿の骨の縁を両手の親指と人差し指、中指で左右から包み込みます。そして、両手を上下に30秒間動かす。こうすることで、お皿を正しい位置に戻し、軟骨のすり減りや水が溜まるのを防げます」(前出・高子氏)
(6)「ひざ上げゆらし」は、前出の井上氏がおすすめするひざの調整方法だ。患部の柔軟性を取り戻し、痛みを軽減できる。
「椅子に浅く腰掛けた状態で、ひざ裏やや上の腱の部分をしっかりと握り、両足を持ち上げます。次に、重力に従って両足を前後にゆらしましょう」
もし「ひざ上げゆらし」が難しい場合は、ひざ周辺の痛む部分を、少し痛いと感じる強さで5秒間押すだけの(7)「痛点ストレッチ」という方法もある。同じ効果を得られるので、毎日行おう。寒いなかでも元気に歩いて生活しよう。やみくもにではなくできることから正しくコツコツと。痛みによく効くツボ押しに、おうちにあるものを使った健康法までまだまだ続く冷えた膝を治すための53カ条。後編記事『ストレッチと東洋医学の教えでひざ痛を治す…!寒い季節のひざ防衛法53ヵ条』で引き続き紹介する。「週刊現代」2022年10月29日号より
もし「ひざ上げゆらし」が難しい場合は、ひざ周辺の痛む部分を、少し痛いと感じる強さで5秒間押すだけの(7)「痛点ストレッチ」という方法もある。同じ効果を得られるので、毎日行おう。
寒いなかでも元気に歩いて生活しよう。やみくもにではなくできることから正しくコツコツと。痛みによく効くツボ押しに、おうちにあるものを使った健康法までまだまだ続く冷えた膝を治すための53カ条。後編記事『ストレッチと東洋医学の教えでひざ痛を治す…!寒い季節のひざ防衛法53ヵ条』で引き続き紹介する。
「週刊現代」2022年10月29日号より