「子育て罰」というワードがネット上で注目を集めている。児童手当など所得制限等で恩恵を受けられない人が、頑張って働いても子育てに関する給付などはなくなり、たくさん子どもを産むほど苦しくなる現状を言い表した言葉だ。現在の制度の線引きで“高収入”とされる家庭の生活は決して余裕があるものではない。17日にスポーツ報知WEB版で公開した第1弾の記事では2人目、3人目を欲しかったが、給料の3分の1~4分の1ほどを税金で納めていても所得制限で支援のない児童手当、こども医療費(自治体による)、高額な0~2歳児保育料、高校学費、奨学金も申し込めない大学の学費の高さなどの不安から「産むのを諦めた」と産み控えをする所得制限世帯の声が多数寄せられた。
■不妊治療で双子出産も…
30代の医療関係で働く女性は夫と共働きで世帯年収は1000万円を超え、児童手当、こども医療費など各種手当は所得制限で支援がない状態。約5年の不妊治療では計300万円以上がかかり、所得制限が緩和された不妊治療助成制度ができた最後の1回で双子を妊娠、出産した。未熟児で産まれた双子はしばらくNICUに入り、17万円の医療費がかかった。退院後も未熟児専用のRSウイルス抗体を毎月打つ必要があり、1人2万円、2人合わせて4万円を1年近く打つため、計50万円以上。1歳から入れる予定の認可保育園も月額8万円、2人目は半額になるが2人合わせて月に12万円と高額。「保育園の料金がすごく高い。仕事をやめざるをえない人も多いと思う」「すごい何千万とかの収入があるわけではないのに、子供の医療費も補助なしというのは違和感がある」と、ネット上の「子育て罰」という声に共感しているという。
■児童手当“廃止”で再燃
中学生以下の子どものいる世帯に支給する児童手当が、夫婦のうちどちらかが年収1200万円以上の世帯で10月支給分から廃止となったことで、再び「子育て罰」の声が上がっている。一般的に高収入とされる年収1200万円世帯も、子どもの数が多ければ多いほど余裕はなくなる。さらにコロナ禍や物価高が家計に響いているとみられ、少子化対策に逆行するとの批判がある。年収1000万なら手取りは740万円ほど。ネット上には「これで児童手当、高校無償化、大学奨学金外されて多子育児って、そりゃ子育て無理ゲー攻略不可能です」「累進課税でたんまり取られ、手当も控除もなく、どうやって昔の人のように子育てをしろと?働き損の子育て罰」などの声が上がっている。
■共働きに優しい自治体に期待
この問題に、摂南大・堀田裕子教授(現代社会学部就任予定)は「フルタイムで働く人は、高い税金を納めていても、子育てに関することなど経済的に優遇されていない。出産後も働き続けようという女性にとって一番支援が欲しい時期の0~2歳児保育料も高いまま」と指摘。その上で「共働きに優しい自治体」の出現を期待しているという。共働き世帯への支援が充実した自治体なら、税収アップも期待できる。一例として「子育て中の共働きにとって、困るのが夕食。税金も投入し、共働き向けの弁当を安価に提供できるようなサービスは需要があるのでは」と話す。身体の社会学を専門とする堀田教授は、「たとえば認知症の方でも、からだが覚えていることはたくさんあり、継続的に料理をしていた経験があるとできる方もいる。なので、仕組みを作れば認知症の方や、子育てが落ち着いて働きたいという方の働き口になる」と雇用創出の場にもなりうる可能性があるとし、「ただし、より深刻な困難を抱えるひとり親家庭への支援が大前提ではある」と話す。子育て世帯に優しい自治体としては兵庫県明石市なども有名で、子育て世帯の流入が実際に増えた例もある。
所得制限は児童手当に限らず、高校無償化も基本的には年収910万円以下が対象。保育園の0~2歳児も自治体や年収によって異なるが、1か月に10万円近くの保育料がかかる場合もあれば、無料の世帯もあるなど、家庭によっては同じ内容のサービスを受けても負担が年間100万円以上と現状でも差が大きい。今後さらに子供への支援がなくなるという不安感が解消されなければ、少子化解消は難しいかもしれない。