大阪市北区のカラオケパブ「ごまちゃん」で昨年6月、オーナーの稲田真優子(まゆこ)さん=当時(25)=を殺害したとして、殺人罪に問われた元常連客の宮本浩志被告(57)は12日、大阪地裁で開かれた公判で最終意見陳述に臨み、「検察側の立証は頼りない」「判決は死刑を宣告していただきたい」などと約50分にわたって持論を述べた。
裁判員裁判で審理されている宮本被告のこの日の公判では、検察側が無期懲役を求刑。弁護側は犯人性の立証が不十分として、改めて無罪を主張した。
「言いたいことはあります」。最終意見陳述で証言台の前に立った宮本被告はこう切り出し、検察側の論告への反論を始めた。
まず、被告の上着のポケットに稲田さんの血液が付着していたことを証拠の一つと位置付ける検察側立証に対し、宮本被告は「なぜ上着のそこだけにしか血がついていないのか。どうやってそこにつくのか。私には想定できません。証拠として意味があるのか」と疑問を呈した。
被告が事件当日に持ち歩いていたリュックが廃棄されるなど、証拠隠滅行為があったとする検察側の主張にも、被告は「第三者的な見解」と前置きした上で「捜査して証拠を見つけられなかったから『証拠隠滅』なんだなと。裏を返せば捜査の不手際ともとれるのではないか。検察側には推測しかない。ある意味残念だな、頼りないなと第三者的には感じていました」と述べた。
宮本被告は9月16日に開かれた初公判で起訴内容の認否は黙秘しつつ「判決は死刑をお願いします。検察官には被害者家族の意思をくみ、死刑を求刑していただきたい」と語っていた。この日も同じ趣旨の発言を繰り返した。
「私は死刑を望んでいます。国が人を殺すのは罪にならない。誰も罪にならなくて死ねる。なにとぞ、判決で死刑を宣告していただきたい」
起訴状によると、昨年6月11日夜、カラオケパブの店内で、稲田さんの首や胸などを刃物で多数回突き刺すなどして失血死させたとしている。