普段、何気なく耳を触ったり、鏡を見たりしたときに、耳たぶのしこりに気づくことがあります。そのしこりの見た目などにもよりますが、気になり始めると止まらなくて、不安になることもありますよね。
そのままにしていても問題ないことも多いのですが、なかには、注意すべき病気も隠れていることがあります。耳たぶのしこりが見られた場合、どのような原因や病気が考えられるか、説明していきます。
耳たぶのしこりとは、耳たぶに「できもの」や「こぶ」がある状態です。「できもの」や「こぶ」といっても、多くの場合、いわゆる腫瘍ではありません。
耳自体の病気であるものから、リンパ節や骨の病気などの可能性もあります。耳の表面は皮膚に覆われていますので、皮膚に出来る「できもの」は耳にも同じように発生します。
発症からの期間はどの程度か、痛みがあるのか、病変が片側にあるのか両側にあるのか、発熱などの全身症状があるのかなどによって、さまざまな原因や種類が考えられます。
耳たぶのしこりが痛い場合には、主に、リンパ節炎や耳性帯状疱疹、耳介血腫、耳介軟骨炎などの病気が考えられます。
リンパ節は免疫器官の1つで、全身の組織から集まったリンパ液が流れるリンパ管の途中にあります。全身に存在しますが、耳や首の周りには多くリンパ節があります。
このリンパ節が、細菌やウイルスなどによって炎症を起こした状態をリンパ節炎といいます。痛みや赤みがあったり、熱を持ったり、発熱がみられたりすることがあります。
耳や口腔咽頭に起こる帯状疱疹です。難聴、耳鳴り、めまい、耳の痛み、顔面神経麻痺などの症状がみられます。
原因は水痘帯状疱疹ウイルスで、過去に水ぼうそうにかかったことがあって、強いストレスや免疫低下などの状態に陥った場合に、症状が出現します。耳の神経の近くに顔面神経もあることから耳と顔の症状が見られます。
怪我などの外力が耳に加わることで内出血して、耳介の皮下に血液が貯まったものです。柔道やボクシング、ラグビーなど耳がぶつかるスポーツを行う人に多くみられます。
はじめは耳介前面の柔らかい腫れですが、徐々に硬くなっていきます。繰り返すと耳が変形することがあります。柔道耳などといわれることがあります。
耳のケガや手術などによる感染が原因で起こる炎症です。耳介血腫や凍傷、外耳道炎などの後に起こることもあります。
耳介前面は皮下組織が少ないために、軟骨膜に炎症が起こりやすいことと、軟骨には血管がないために治りにくいという特徴があります。耳が腫れたり熱を持ったり痛みがでたり
します。
耳たぶのしこりが痛くない場合には、主に、粉瘤や脂肪腫、副耳、先天性耳瘻孔などの病気が考えられます。
粉瘤は、皮膚の下にできた袋の中に角質や皮脂がたまってできるできものです。全身のどこにでもできるため比較的多く見られます。
痛みのない弾力性のある袋状の形で、徐々に大きくなっていきます。粉瘤の中心部には開口部である黒い点があって、強く押すとおから状のにおいをした内容物が押し出されます。
感染を起こすと赤く腫れて、痛みを伴います。腫れが強くなると中にたまったものが、白いドロドロした物質として出てくることもあります。
脂肪腫は良性腫瘍の1つで、脂肪のかたまりです。脂肪組織でできているので柔らかく、痛みはありません。
まれに悪性の場合があり、放置することで大きくなり見た目上気になるなどの問題が生じたりすることもあります。
副耳は、耳の穴の前や頬などにできる小さなできもののことです。出生した赤ちゃんの1%前後にみられることがあるといわれています。副耳が1つだけのことも複数同時に見られることもあります。
副耳は、耳の発生段階の異常で生じると考えられています。遺伝子異常を原因として発生することもあり、その場合には、全身の他の器官にもさまざまな障害を併発します。
湿疹が生じやすくなることがあります。かゆみや痛みなどの症状はないといわれます。副耳が単独で見られる場合には、治療の必要性がないこともありますが、美容面で問題になることがあります。
生まれつきの病気で、耳の発生段階の問題で、耳の付け根付近に小さな穴が生じた状態です。
耳瘻孔の多くは、1㎝程度の浅い穴ですが、耳の穴までつながっていることもあります。
症状はないことがほとんどです。穴の中に汗や垢などの分泌物がたまる影響で、異臭を放つことや、感染を起こした影響で腫れや痛みが出ることがあります。
母斑や血管腫など(いわゆるホクロ)や、尋常性疣贅(いわゆるイボ)も耳にできることがあります。
これらが外耳道(耳の穴)をふさぐように大きくなっている場合には、耳垢の排出ができなくなったり、美容上の問題になったりするために、手術で切除することもあります。
耳たぶのしこりを押す・触ると痛い場合には、主に、リンパ節炎や粉瘤などが考えられます。
当初は痛みのないしこりであっても、細菌感染して炎症が起こると痛くなることがあります。
また、発熱や水ぶくれなどもある場合には、皮下組織の細菌感染症である蜂窩織炎も考えられます。この場合には、患部は痛みだけでなく、赤くなり、熱をもって腫れていることがあります。
耳たぶのしこりがかゆい場合には、主に、接触性皮膚炎や虫刺症などの病気が考えられます。
皮膚に何らかの物質が触れ、それが刺激やアレルギー反応によって起こる炎症で、かぶれともいいます。原因物質が触れた場所を中心に、湿疹や赤み、かゆみ、水ぶくれや腫れなどの症状が見られます。
耳の接触性皮膚炎では、ピアスや補聴器、眼鏡など、皮膚に触れる物質にアレルギーがある場合に生じるアレルギー性皮膚炎が見られることがあります。
アクセサリーによる金属かぶれは、金属が汗と反応することによって生じることが多く、夏などの汗をかく時期に見られます。
虫刺症とは、蚊やダニ、ハチ、クモなどに刺されて起きる皮膚炎のことです。
虫に刺されることで、虫の毒液や唾液成分などの異物が皮膚の中に侵入し、皮膚に炎症が起きます。
注入された毒液の種類や量、アレルギー反応の有無、年齢や体質によって、症状の程度には個人差がありますが、痛みやかゆみ、赤みや腫れ、ブツブツ、水ぶくれなどの症状が出ることがあります。
耳たぶのしこりが耳たぶの中にある場合には、主に、耳介血腫や耳介軟骨膜炎、肉芽種、ケロイドなどの病気が考えられます。
耳たぶのしこりが耳たぶの中にある場合には、主に、リンパ節炎や耳下腺腫瘍、耳下腺唾石症などの病気が考えられます。
耳下腺に発生する腫瘍です。ほとんどは良性腫瘍であり、大きくなる速度は遅く、痛みがないことが多いとされています。
一方で、悪性腫瘍は急速に成長するのが特徴です。神経に広がると痛みやしびれ、顔面神経麻痺の症状が出現します。
唾石症とは、唾液腺または唾液の排出される管の中に石ができる病気です。
耳下腺は唾液腺の一つであり、耳下腺に唾石ができると腫れて痛みが出現します。食事前後は唾液が生産されやすいため、症状が起こりやすくなります。
耳たぶのしこりが耳たぶの中にある場合には、主に、リンパ節炎や耳下腺腫瘍、耳下腺唾石症などの病気が考えられます。
耳たぶのしこりがピアスやイヤリングをした後に現れる場合には、接触性皮膚炎を起こした可能性もありますが、肉芽種やケロイドが発生することも考えられます。
耳たぶにピアス穴を開けた場合、それがきっかけで傷の治る過程で細菌感染に反応して慢性的な炎症が続いて肉芽腫を生じることがあります。
この肉芽腫を生じた後にケロイドといって、炎症後の瘢痕組織が過剰に増殖した病変が形成されることがあります。
休日や夜間に救急外来を受診するような緊急性の高い症状ではないと思われます。ただし、原因によっては、早めの治療が必要となる場合も考えられます。
耳たぶのしこりがなくならない、大きくなっている、発熱している、痛みが強くなっている、顔が曲がっている(顔面神経麻痺)場合には、早めに受診して診断を受けた方が良いでしょう。
主な受診科目は、耳鼻咽喉科です。問診、診察、耳鏡検査、画像検査(レントゲン、CT)、血液検査などを施行する可能性があります。
粉瘤のような皮膚腫瘤など、皮膚科や形成外科でも診てもらえるものもあります。
持病があって内服している薬がある際には、医師へ申告しましょう。いつからしこりに気がついたのか、ケガのエピソードはあるのか、大きさの変化や痛みはあるのか、発熱などの他の症状があるのか、などを医師に伝えましょう。
小さなしこりでも自己流の治療を行うと病気が悪化する可能性もありますので、医療機関を受診して診断してもらうのが良いでしょう。
保険医療機関の診療であれば、保険診療の範囲内での負担となります。自由診療を行う医療機関でも、粉瘤やケロイドの切除術などの治療を受けることができます。費用は医療機関ごとに設定されていますのでご確認ください。
しこりはつぶさない方が良いです。自己判断はせずにそのままの状態で受診しましょう。
例えば、粉瘤(アテローム)の場合、つぶして治ることはありませんし、むしろ、つぶすと悪化する可能性があります。
細菌感染して、炎症が起こって痛みや腫れ、膿、くさい臭いが出現します。また、感染してしまうと、手術によって切除することができなくなります。
感染を止めるために抗菌薬を投与したり、粉瘤の中の膿を出したりという治療を行って症状を抑えた後で、手術を行うため治療期間が長引いてしまいます。
痛風は、典型的には足の親指の付け根に突然の痛みが出現する病気で、食べすぎや飲み過ぎなどによって尿酸値が高い人によくみられます。
発作のほとんどは、足の親指の付け根におきますが、体中どこの関節にも起こる可能性があります。人によっては、耳(耳介)に痛風結節ができる場合もあります。
内服治療だけでなく生活習慣の見直しも必要になるため、受診して治療を継続することをおすすめします。
耳特有の病気としては、耳性帯状疱疹、耳介血腫、耳介軟骨炎、外耳腫瘍、耳下腺腫瘍、先天性耳瘻孔、副耳などが考えられます。
肉芽腫
ケロイド
尋常性疣贅母斑
血管腫
脂漏性角化症
耳介軟骨炎
外耳腫瘍
耳下腺腫瘍
先天性耳瘻孔
副耳
耳たぶにできるしこりの候補として、いろいろな種類の病気があることを説明しました。
しこりは、痛みがあったり他人に指摘されたりするなどのきっかけがないと気が付かないこともありますが、一度気になり始めると止まらないことも多いものです。
様子を見ていて良くならない場合には、一度は医療機関を受診してみてはいかがでしょうか。