飲み物を並べてる巨大冷蔵庫の裏側はどうなっているのか?なぜ廃棄弁当を食ったらいけないのか?おにぎり100円セールで売れるのは何か?商品が当たるくじ引き企画の目的は?
コンビニ業界の裏側がすべて分かる――コンビニ経営ギャグ漫画『魔王様は結婚したい』がSNSで話題を集めている。元コンビニ店長である作者・諏訪符馬さんが執筆するコンビニ経営の過酷さと、逆異世界転生がフュージョンする問題作。本記事では、ブラック過ぎて脳内から消していたと振り返る当時の記憶を、諏訪さん自身に語ってもらった。
月500時間労働、時給340円の日々初めまして、漫画家の諏訪符馬と申します。実は私、5年ほど前まで某コンビニチェーンで店長をやっておりました。といっても本部に勤務していたわけではありません。数店舗コンビニをFC(フランチャイズ)経営している会社の社員だったので、雇われ店長ですね。思いおこせば、あの頃は1日18時間働いていました。休みは週に1日ありましたが、その日も発注を任せられるアルバイトがいないから、発注をしに店へ出ていました。発注だけですめば2~3時間で帰れますが、だいたいその間に店長が必要になる出来事が起きて、働き続けることになります。『魔王様は結婚したい』(諏訪符馬)そもそも、その休みの日にアルバイトが来られなくなったりしたら、店に立ち続けることになります。要するに、休んだ記憶はありませんでした。月に26日18時間働き、残りの4日は少なめに8時間くらい働いたとすると、ちょうど月に500時間働いていたことになりますね……。あまり考えないようにしていたのですが、時給計算するとどうなのか、あらためて計算してみることにします。当時の手取りは月17万円くらいでした。すると時給340円となります。やっぱり計算しなければよかったです……。なぜ深夜のコンビニのレジにはおじさんが多いのか経営するオーナーの側とすると、私のような形で社員を働かせれば、アルバイトの人件費を節約できて利益を確保できるようになります。だから店長時代、私は深夜に働くことが多かったです。なぜなら、深夜にアルバイトを働かせると、法的に人件費を1.25倍にしなければいけないから。そこで人件費をかけるぐらいだったら固定給の社員を使おうとか、あるいはオーナー自ら働こうとか、そういったことになるわけです。その結果、深夜にコンビニを利用すると、レジにいるのは若い人ではなくて、おじさんなことが多くなります。『魔王様は結婚したい』(諏訪符馬) そのおじさんの正体は、コンビニをFC経営している会社の社員であったり、あるいはオーナー本人だったりするんですよね。逆に言うと、コンビニを経営してある程度の利益を確保するためには、どうしても人件費を削減しなければいけない。そのためにオーナー自身も苦しんでいる状況もかなり多くなっているのです。辞めてから1年間は思い出せなかった結局、私は仕事中に倒れてしまって、コンビニの仕事はもう無理だと思い知るのですが、そこから辞めるのも簡単ではありませんでした。オーナーは私が辞めることで生じる損害について罰金を請求してきたのです……。さらに、店のバックヤードで売上金が紛失した事件があり、私をその犯人扱いしてきました。ほかにもここでは書けないさまざまな嫌がらせをされ、なんとか逃げるように辞めました。ただ私の場合は、店長時代に働いてくれていた優秀なアルバイトの子に助けられたんですよ。その子は「就職します」といって辞めていったのですが、たまたま私が倒れる直前の時期に店に客として来てくれて、自分の就職先はいいところだから店長もどうですか、という形で紹介してくれたのです。 おかげでまともな会社に再就職できたのですが、それでも1年以上はコンビニ店長時代のことは思い出せませんでした。でも何とかこのひどい話を多くの人に知ってもらいたいという思いから、少しずつ気持ちを整理して、当時の事情の一部を漫画に描いてTwitterにアップしました。大バズを経験して漫画家へ描いたときから、これは何かしらの話題にはなるだろうな……という感触はありました。諏訪符馬さんのTwitterよりですが、実際に公開されたときの反響は想像以上でした。すぐにバズって、通知が止まらないような状態になったのです。「いいね」の数は5万を超えました。さらに、リプライやDMの形で「私も同じような経験をしました」とか、「私の旦那も」とか、「僕も現在こうなっていて」とかいう形で、膨大な数の相談が寄せられてきたのです。ブラック労働の状態で苦しんでいるのであれば、辞めるのがベストに決まっています。だけど、人の繋がりでたまたまうまく再就職できた私が、無責任に「そこをすぐ辞めてください」とは言えなかった。「辞めたあと、じゃあどうするの?」っていう問いに答えられなかったからです。なので、苦しんでいる人たちに対しても、「辞められるのであれば、辞めたほうがいいです」といった感じの、持って回ったようなアドバイスしかできなかった。これは歯がゆかったです。 じゃあ苦しんでいる人たちに私ができることは何だろう、そう考えて、一度は挫折した漫画家を再び目指すことにしたのです。「コンビニ経営ギャグ漫画」登場いま「コミックDAYS」で毎週水曜日に更新している『魔王様は結婚したい』というギャグ漫画は、私のコンビニ店長時代の経験を、毎回ふんだんに盛り込んでいます。魔界を滅ぼした魔王様が、人間界で結婚相手を探そうとやってくる。でもなぜか名古屋でコンビニ経営を始める羽目になってしまい、どんどん婚活から遠ざかって……という形で騒動が引き起こされる。そんな展開の中に、毎回必ず「『中の人』でないと気付かないコンビニあるある」を入れ込んだら、おかげさまで多くの反響をいただくことができました。たとえば、コンビニの店内で何かピーピー鳴っている音を聞いたことはないですか。あれは、デザートなどを冷蔵して販売しているゴンドラから出ている音なんです。あの下に排水された水が溜まっていって、捨てなければならないタイミングになると警告音がピーピー鳴る、という仕組みです。 あの警告音、なぜかレジが立て込んでいるときに限って鳴り出すんで、店員としてはすごく焦るんですよね……。こんなエピソードをギャグ漫画の形で世に出していくと、コンビニで苦労して働いている読者の方から「そうなんだよ!」といった共感の声をいただけるようになりました。いまは漫画家をやれて本当に嬉しいです。「コンビニ会計」の闇今回「現代ビジネス」で取り上げた第27話は、先ほど話した「コンビニを経営して利益を確保するためには人件費を削減しなければいけない」理由を漫画で史上初めて解説した、画期的な企画だと自負しています。それが「コンビニ会計」です。くわしくは漫画で見ていただきたいのですが、基本的には「店舗の側だけが、廃棄にまつわる費用をすべて負担することになる」という仕組みです。『魔王様は結婚したい』(諏訪符馬)逆に言えば、お弁当などが期限切れで廃棄になっても、本部はまったく損害を負わないのです。そのせいでオーナーさんたちが苦しんでる事実があります。食品ロスの観点からも、かなり問題です。FC店のオーナーが期限切れ弁当を値引き販売させろという裁判を本部に対して提起したことがありましたが、あれも「コンビニ会計」が原因だったんですね。実際、私が店長をしていたころは値引き販売はできませんでした。レジに値引きが可能になるシステムが入っていないのだから、どうにもならなかったのです。だから、直接に損につながる廃棄はなるべく減らしたい。そのため、売れなさそうな商品はなるべく注文しないようにしよう……。店の側はみんなそう考えます。ですが本部は「新商品だ、取れ」「これは売れるから取れ」と言ってくる。その程度では済みません。いわゆる店に来る、訪店する本部社員が勝手に発注数を書き換えていく。そんな出来事もよくありました。勝手に店に来て「発注数を増やしておきましたからね」とやられるわけです。店としてはたまったものではありませんが、「廃棄を出せば出すほど本部は儲かる」という仕組みが前提にあるので、どうにもなりません。ですが最近は少しずつ状況も変わってきているようですね。期限切れが近い弁当が値引き販売されるようになったり、契約の段階で会計システムを選択できるようになったりしている、という話を聞いています。私自身も当時の記憶はものすごくきつい思い出でしたが、少しずつ回復して現在はギャグ漫画として記憶を変換できるようになりました。
初めまして、漫画家の諏訪符馬と申します。
実は私、5年ほど前まで某コンビニチェーンで店長をやっておりました。といっても本部に勤務していたわけではありません。数店舗コンビニをFC(フランチャイズ)経営している会社の社員だったので、雇われ店長ですね。
思いおこせば、あの頃は1日18時間働いていました。
休みは週に1日ありましたが、その日も発注を任せられるアルバイトがいないから、発注をしに店へ出ていました。発注だけですめば2~3時間で帰れますが、だいたいその間に店長が必要になる出来事が起きて、働き続けることになります。
『魔王様は結婚したい』(諏訪符馬)
そもそも、その休みの日にアルバイトが来られなくなったりしたら、店に立ち続けることになります。要するに、休んだ記憶はありませんでした。
月に26日18時間働き、残りの4日は少なめに8時間くらい働いたとすると、ちょうど月に500時間働いていたことになりますね……。あまり考えないようにしていたのですが、時給計算するとどうなのか、あらためて計算してみることにします。
当時の手取りは月17万円くらいでした。すると時給340円となります。やっぱり計算しなければよかったです……。
経営するオーナーの側とすると、私のような形で社員を働かせれば、アルバイトの人件費を節約できて利益を確保できるようになります。
だから店長時代、私は深夜に働くことが多かったです。なぜなら、深夜にアルバイトを働かせると、法的に人件費を1.25倍にしなければいけないから。
そこで人件費をかけるぐらいだったら固定給の社員を使おうとか、あるいはオーナー自ら働こうとか、そういったことになるわけです。
その結果、深夜にコンビニを利用すると、レジにいるのは若い人ではなくて、おじさんなことが多くなります。
『魔王様は結婚したい』(諏訪符馬)
そのおじさんの正体は、コンビニをFC経営している会社の社員であったり、あるいはオーナー本人だったりするんですよね。逆に言うと、コンビニを経営してある程度の利益を確保するためには、どうしても人件費を削減しなければいけない。そのためにオーナー自身も苦しんでいる状況もかなり多くなっているのです。辞めてから1年間は思い出せなかった結局、私は仕事中に倒れてしまって、コンビニの仕事はもう無理だと思い知るのですが、そこから辞めるのも簡単ではありませんでした。オーナーは私が辞めることで生じる損害について罰金を請求してきたのです……。さらに、店のバックヤードで売上金が紛失した事件があり、私をその犯人扱いしてきました。ほかにもここでは書けないさまざまな嫌がらせをされ、なんとか逃げるように辞めました。ただ私の場合は、店長時代に働いてくれていた優秀なアルバイトの子に助けられたんですよ。その子は「就職します」といって辞めていったのですが、たまたま私が倒れる直前の時期に店に客として来てくれて、自分の就職先はいいところだから店長もどうですか、という形で紹介してくれたのです。 おかげでまともな会社に再就職できたのですが、それでも1年以上はコンビニ店長時代のことは思い出せませんでした。でも何とかこのひどい話を多くの人に知ってもらいたいという思いから、少しずつ気持ちを整理して、当時の事情の一部を漫画に描いてTwitterにアップしました。大バズを経験して漫画家へ描いたときから、これは何かしらの話題にはなるだろうな……という感触はありました。諏訪符馬さんのTwitterよりですが、実際に公開されたときの反響は想像以上でした。すぐにバズって、通知が止まらないような状態になったのです。「いいね」の数は5万を超えました。さらに、リプライやDMの形で「私も同じような経験をしました」とか、「私の旦那も」とか、「僕も現在こうなっていて」とかいう形で、膨大な数の相談が寄せられてきたのです。ブラック労働の状態で苦しんでいるのであれば、辞めるのがベストに決まっています。だけど、人の繋がりでたまたまうまく再就職できた私が、無責任に「そこをすぐ辞めてください」とは言えなかった。「辞めたあと、じゃあどうするの?」っていう問いに答えられなかったからです。なので、苦しんでいる人たちに対しても、「辞められるのであれば、辞めたほうがいいです」といった感じの、持って回ったようなアドバイスしかできなかった。これは歯がゆかったです。 じゃあ苦しんでいる人たちに私ができることは何だろう、そう考えて、一度は挫折した漫画家を再び目指すことにしたのです。「コンビニ経営ギャグ漫画」登場いま「コミックDAYS」で毎週水曜日に更新している『魔王様は結婚したい』というギャグ漫画は、私のコンビニ店長時代の経験を、毎回ふんだんに盛り込んでいます。魔界を滅ぼした魔王様が、人間界で結婚相手を探そうとやってくる。でもなぜか名古屋でコンビニ経営を始める羽目になってしまい、どんどん婚活から遠ざかって……という形で騒動が引き起こされる。そんな展開の中に、毎回必ず「『中の人』でないと気付かないコンビニあるある」を入れ込んだら、おかげさまで多くの反響をいただくことができました。たとえば、コンビニの店内で何かピーピー鳴っている音を聞いたことはないですか。あれは、デザートなどを冷蔵して販売しているゴンドラから出ている音なんです。あの下に排水された水が溜まっていって、捨てなければならないタイミングになると警告音がピーピー鳴る、という仕組みです。 あの警告音、なぜかレジが立て込んでいるときに限って鳴り出すんで、店員としてはすごく焦るんですよね……。こんなエピソードをギャグ漫画の形で世に出していくと、コンビニで苦労して働いている読者の方から「そうなんだよ!」といった共感の声をいただけるようになりました。いまは漫画家をやれて本当に嬉しいです。「コンビニ会計」の闇今回「現代ビジネス」で取り上げた第27話は、先ほど話した「コンビニを経営して利益を確保するためには人件費を削減しなければいけない」理由を漫画で史上初めて解説した、画期的な企画だと自負しています。それが「コンビニ会計」です。くわしくは漫画で見ていただきたいのですが、基本的には「店舗の側だけが、廃棄にまつわる費用をすべて負担することになる」という仕組みです。『魔王様は結婚したい』(諏訪符馬)逆に言えば、お弁当などが期限切れで廃棄になっても、本部はまったく損害を負わないのです。そのせいでオーナーさんたちが苦しんでる事実があります。食品ロスの観点からも、かなり問題です。FC店のオーナーが期限切れ弁当を値引き販売させろという裁判を本部に対して提起したことがありましたが、あれも「コンビニ会計」が原因だったんですね。実際、私が店長をしていたころは値引き販売はできませんでした。レジに値引きが可能になるシステムが入っていないのだから、どうにもならなかったのです。だから、直接に損につながる廃棄はなるべく減らしたい。そのため、売れなさそうな商品はなるべく注文しないようにしよう……。店の側はみんなそう考えます。ですが本部は「新商品だ、取れ」「これは売れるから取れ」と言ってくる。その程度では済みません。いわゆる店に来る、訪店する本部社員が勝手に発注数を書き換えていく。そんな出来事もよくありました。勝手に店に来て「発注数を増やしておきましたからね」とやられるわけです。店としてはたまったものではありませんが、「廃棄を出せば出すほど本部は儲かる」という仕組みが前提にあるので、どうにもなりません。ですが最近は少しずつ状況も変わってきているようですね。期限切れが近い弁当が値引き販売されるようになったり、契約の段階で会計システムを選択できるようになったりしている、という話を聞いています。私自身も当時の記憶はものすごくきつい思い出でしたが、少しずつ回復して現在はギャグ漫画として記憶を変換できるようになりました。
そのおじさんの正体は、コンビニをFC経営している会社の社員であったり、あるいはオーナー本人だったりするんですよね。
逆に言うと、コンビニを経営してある程度の利益を確保するためには、どうしても人件費を削減しなければいけない。そのためにオーナー自身も苦しんでいる状況もかなり多くなっているのです。
結局、私は仕事中に倒れてしまって、コンビニの仕事はもう無理だと思い知るのですが、そこから辞めるのも簡単ではありませんでした。
オーナーは私が辞めることで生じる損害について罰金を請求してきたのです……。さらに、店のバックヤードで売上金が紛失した事件があり、私をその犯人扱いしてきました。
ほかにもここでは書けないさまざまな嫌がらせをされ、なんとか逃げるように辞めました。
ただ私の場合は、店長時代に働いてくれていた優秀なアルバイトの子に助けられたんですよ。その子は「就職します」といって辞めていったのですが、たまたま私が倒れる直前の時期に店に客として来てくれて、自分の就職先はいいところだから店長もどうですか、という形で紹介してくれたのです。
おかげでまともな会社に再就職できたのですが、それでも1年以上はコンビニ店長時代のことは思い出せませんでした。でも何とかこのひどい話を多くの人に知ってもらいたいという思いから、少しずつ気持ちを整理して、当時の事情の一部を漫画に描いてTwitterにアップしました。大バズを経験して漫画家へ描いたときから、これは何かしらの話題にはなるだろうな……という感触はありました。諏訪符馬さんのTwitterよりですが、実際に公開されたときの反響は想像以上でした。すぐにバズって、通知が止まらないような状態になったのです。「いいね」の数は5万を超えました。さらに、リプライやDMの形で「私も同じような経験をしました」とか、「私の旦那も」とか、「僕も現在こうなっていて」とかいう形で、膨大な数の相談が寄せられてきたのです。ブラック労働の状態で苦しんでいるのであれば、辞めるのがベストに決まっています。だけど、人の繋がりでたまたまうまく再就職できた私が、無責任に「そこをすぐ辞めてください」とは言えなかった。「辞めたあと、じゃあどうするの?」っていう問いに答えられなかったからです。なので、苦しんでいる人たちに対しても、「辞められるのであれば、辞めたほうがいいです」といった感じの、持って回ったようなアドバイスしかできなかった。これは歯がゆかったです。 じゃあ苦しんでいる人たちに私ができることは何だろう、そう考えて、一度は挫折した漫画家を再び目指すことにしたのです。「コンビニ経営ギャグ漫画」登場いま「コミックDAYS」で毎週水曜日に更新している『魔王様は結婚したい』というギャグ漫画は、私のコンビニ店長時代の経験を、毎回ふんだんに盛り込んでいます。魔界を滅ぼした魔王様が、人間界で結婚相手を探そうとやってくる。でもなぜか名古屋でコンビニ経営を始める羽目になってしまい、どんどん婚活から遠ざかって……という形で騒動が引き起こされる。そんな展開の中に、毎回必ず「『中の人』でないと気付かないコンビニあるある」を入れ込んだら、おかげさまで多くの反響をいただくことができました。たとえば、コンビニの店内で何かピーピー鳴っている音を聞いたことはないですか。あれは、デザートなどを冷蔵して販売しているゴンドラから出ている音なんです。あの下に排水された水が溜まっていって、捨てなければならないタイミングになると警告音がピーピー鳴る、という仕組みです。 あの警告音、なぜかレジが立て込んでいるときに限って鳴り出すんで、店員としてはすごく焦るんですよね……。こんなエピソードをギャグ漫画の形で世に出していくと、コンビニで苦労して働いている読者の方から「そうなんだよ!」といった共感の声をいただけるようになりました。いまは漫画家をやれて本当に嬉しいです。「コンビニ会計」の闇今回「現代ビジネス」で取り上げた第27話は、先ほど話した「コンビニを経営して利益を確保するためには人件費を削減しなければいけない」理由を漫画で史上初めて解説した、画期的な企画だと自負しています。それが「コンビニ会計」です。くわしくは漫画で見ていただきたいのですが、基本的には「店舗の側だけが、廃棄にまつわる費用をすべて負担することになる」という仕組みです。『魔王様は結婚したい』(諏訪符馬)逆に言えば、お弁当などが期限切れで廃棄になっても、本部はまったく損害を負わないのです。そのせいでオーナーさんたちが苦しんでる事実があります。食品ロスの観点からも、かなり問題です。FC店のオーナーが期限切れ弁当を値引き販売させろという裁判を本部に対して提起したことがありましたが、あれも「コンビニ会計」が原因だったんですね。実際、私が店長をしていたころは値引き販売はできませんでした。レジに値引きが可能になるシステムが入っていないのだから、どうにもならなかったのです。だから、直接に損につながる廃棄はなるべく減らしたい。そのため、売れなさそうな商品はなるべく注文しないようにしよう……。店の側はみんなそう考えます。ですが本部は「新商品だ、取れ」「これは売れるから取れ」と言ってくる。その程度では済みません。いわゆる店に来る、訪店する本部社員が勝手に発注数を書き換えていく。そんな出来事もよくありました。勝手に店に来て「発注数を増やしておきましたからね」とやられるわけです。店としてはたまったものではありませんが、「廃棄を出せば出すほど本部は儲かる」という仕組みが前提にあるので、どうにもなりません。ですが最近は少しずつ状況も変わってきているようですね。期限切れが近い弁当が値引き販売されるようになったり、契約の段階で会計システムを選択できるようになったりしている、という話を聞いています。私自身も当時の記憶はものすごくきつい思い出でしたが、少しずつ回復して現在はギャグ漫画として記憶を変換できるようになりました。
おかげでまともな会社に再就職できたのですが、それでも1年以上はコンビニ店長時代のことは思い出せませんでした。
でも何とかこのひどい話を多くの人に知ってもらいたいという思いから、少しずつ気持ちを整理して、当時の事情の一部を漫画に描いてTwitterにアップしました。
描いたときから、これは何かしらの話題にはなるだろうな……という感触はありました。
諏訪符馬さんのTwitterより
ですが、実際に公開されたときの反響は想像以上でした。すぐにバズって、通知が止まらないような状態になったのです。「いいね」の数は5万を超えました。
さらに、リプライやDMの形で「私も同じような経験をしました」とか、「私の旦那も」とか、「僕も現在こうなっていて」とかいう形で、膨大な数の相談が寄せられてきたのです。
ブラック労働の状態で苦しんでいるのであれば、辞めるのがベストに決まっています。だけど、人の繋がりでたまたまうまく再就職できた私が、無責任に「そこをすぐ辞めてください」とは言えなかった。
「辞めたあと、じゃあどうするの?」っていう問いに答えられなかったからです。
なので、苦しんでいる人たちに対しても、「辞められるのであれば、辞めたほうがいいです」といった感じの、持って回ったようなアドバイスしかできなかった。これは歯がゆかったです。
じゃあ苦しんでいる人たちに私ができることは何だろう、そう考えて、一度は挫折した漫画家を再び目指すことにしたのです。「コンビニ経営ギャグ漫画」登場いま「コミックDAYS」で毎週水曜日に更新している『魔王様は結婚したい』というギャグ漫画は、私のコンビニ店長時代の経験を、毎回ふんだんに盛り込んでいます。魔界を滅ぼした魔王様が、人間界で結婚相手を探そうとやってくる。でもなぜか名古屋でコンビニ経営を始める羽目になってしまい、どんどん婚活から遠ざかって……という形で騒動が引き起こされる。そんな展開の中に、毎回必ず「『中の人』でないと気付かないコンビニあるある」を入れ込んだら、おかげさまで多くの反響をいただくことができました。たとえば、コンビニの店内で何かピーピー鳴っている音を聞いたことはないですか。あれは、デザートなどを冷蔵して販売しているゴンドラから出ている音なんです。あの下に排水された水が溜まっていって、捨てなければならないタイミングになると警告音がピーピー鳴る、という仕組みです。 あの警告音、なぜかレジが立て込んでいるときに限って鳴り出すんで、店員としてはすごく焦るんですよね……。こんなエピソードをギャグ漫画の形で世に出していくと、コンビニで苦労して働いている読者の方から「そうなんだよ!」といった共感の声をいただけるようになりました。いまは漫画家をやれて本当に嬉しいです。「コンビニ会計」の闇今回「現代ビジネス」で取り上げた第27話は、先ほど話した「コンビニを経営して利益を確保するためには人件費を削減しなければいけない」理由を漫画で史上初めて解説した、画期的な企画だと自負しています。それが「コンビニ会計」です。くわしくは漫画で見ていただきたいのですが、基本的には「店舗の側だけが、廃棄にまつわる費用をすべて負担することになる」という仕組みです。『魔王様は結婚したい』(諏訪符馬)逆に言えば、お弁当などが期限切れで廃棄になっても、本部はまったく損害を負わないのです。そのせいでオーナーさんたちが苦しんでる事実があります。食品ロスの観点からも、かなり問題です。FC店のオーナーが期限切れ弁当を値引き販売させろという裁判を本部に対して提起したことがありましたが、あれも「コンビニ会計」が原因だったんですね。実際、私が店長をしていたころは値引き販売はできませんでした。レジに値引きが可能になるシステムが入っていないのだから、どうにもならなかったのです。だから、直接に損につながる廃棄はなるべく減らしたい。そのため、売れなさそうな商品はなるべく注文しないようにしよう……。店の側はみんなそう考えます。ですが本部は「新商品だ、取れ」「これは売れるから取れ」と言ってくる。その程度では済みません。いわゆる店に来る、訪店する本部社員が勝手に発注数を書き換えていく。そんな出来事もよくありました。勝手に店に来て「発注数を増やしておきましたからね」とやられるわけです。店としてはたまったものではありませんが、「廃棄を出せば出すほど本部は儲かる」という仕組みが前提にあるので、どうにもなりません。ですが最近は少しずつ状況も変わってきているようですね。期限切れが近い弁当が値引き販売されるようになったり、契約の段階で会計システムを選択できるようになったりしている、という話を聞いています。私自身も当時の記憶はものすごくきつい思い出でしたが、少しずつ回復して現在はギャグ漫画として記憶を変換できるようになりました。
じゃあ苦しんでいる人たちに私ができることは何だろう、そう考えて、一度は挫折した漫画家を再び目指すことにしたのです。
いま「コミックDAYS」で毎週水曜日に更新している『魔王様は結婚したい』というギャグ漫画は、私のコンビニ店長時代の経験を、毎回ふんだんに盛り込んでいます。
魔界を滅ぼした魔王様が、人間界で結婚相手を探そうとやってくる。でもなぜか名古屋でコンビニ経営を始める羽目になってしまい、どんどん婚活から遠ざかって……という形で騒動が引き起こされる。
そんな展開の中に、毎回必ず「『中の人』でないと気付かないコンビニあるある」を入れ込んだら、おかげさまで多くの反響をいただくことができました。
たとえば、コンビニの店内で何かピーピー鳴っている音を聞いたことはないですか。あれは、デザートなどを冷蔵して販売しているゴンドラから出ている音なんです。あの下に排水された水が溜まっていって、捨てなければならないタイミングになると警告音がピーピー鳴る、という仕組みです。
あの警告音、なぜかレジが立て込んでいるときに限って鳴り出すんで、店員としてはすごく焦るんですよね……。こんなエピソードをギャグ漫画の形で世に出していくと、コンビニで苦労して働いている読者の方から「そうなんだよ!」といった共感の声をいただけるようになりました。いまは漫画家をやれて本当に嬉しいです。「コンビニ会計」の闇今回「現代ビジネス」で取り上げた第27話は、先ほど話した「コンビニを経営して利益を確保するためには人件費を削減しなければいけない」理由を漫画で史上初めて解説した、画期的な企画だと自負しています。それが「コンビニ会計」です。くわしくは漫画で見ていただきたいのですが、基本的には「店舗の側だけが、廃棄にまつわる費用をすべて負担することになる」という仕組みです。『魔王様は結婚したい』(諏訪符馬)逆に言えば、お弁当などが期限切れで廃棄になっても、本部はまったく損害を負わないのです。そのせいでオーナーさんたちが苦しんでる事実があります。食品ロスの観点からも、かなり問題です。FC店のオーナーが期限切れ弁当を値引き販売させろという裁判を本部に対して提起したことがありましたが、あれも「コンビニ会計」が原因だったんですね。実際、私が店長をしていたころは値引き販売はできませんでした。レジに値引きが可能になるシステムが入っていないのだから、どうにもならなかったのです。だから、直接に損につながる廃棄はなるべく減らしたい。そのため、売れなさそうな商品はなるべく注文しないようにしよう……。店の側はみんなそう考えます。ですが本部は「新商品だ、取れ」「これは売れるから取れ」と言ってくる。その程度では済みません。いわゆる店に来る、訪店する本部社員が勝手に発注数を書き換えていく。そんな出来事もよくありました。勝手に店に来て「発注数を増やしておきましたからね」とやられるわけです。店としてはたまったものではありませんが、「廃棄を出せば出すほど本部は儲かる」という仕組みが前提にあるので、どうにもなりません。ですが最近は少しずつ状況も変わってきているようですね。期限切れが近い弁当が値引き販売されるようになったり、契約の段階で会計システムを選択できるようになったりしている、という話を聞いています。私自身も当時の記憶はものすごくきつい思い出でしたが、少しずつ回復して現在はギャグ漫画として記憶を変換できるようになりました。
あの警告音、なぜかレジが立て込んでいるときに限って鳴り出すんで、店員としてはすごく焦るんですよね……。
こんなエピソードをギャグ漫画の形で世に出していくと、コンビニで苦労して働いている読者の方から「そうなんだよ!」といった共感の声をいただけるようになりました。いまは漫画家をやれて本当に嬉しいです。
今回「現代ビジネス」で取り上げた第27話は、先ほど話した「コンビニを経営して利益を確保するためには人件費を削減しなければいけない」理由を漫画で史上初めて解説した、画期的な企画だと自負しています。
それが「コンビニ会計」です。くわしくは漫画で見ていただきたいのですが、基本的には「店舗の側だけが、廃棄にまつわる費用をすべて負担することになる」という仕組みです。
『魔王様は結婚したい』(諏訪符馬)
逆に言えば、お弁当などが期限切れで廃棄になっても、本部はまったく損害を負わないのです。そのせいでオーナーさんたちが苦しんでる事実があります。食品ロスの観点からも、かなり問題です。
FC店のオーナーが期限切れ弁当を値引き販売させろという裁判を本部に対して提起したことがありましたが、あれも「コンビニ会計」が原因だったんですね。
実際、私が店長をしていたころは値引き販売はできませんでした。レジに値引きが可能になるシステムが入っていないのだから、どうにもならなかったのです。
だから、直接に損につながる廃棄はなるべく減らしたい。そのため、売れなさそうな商品はなるべく注文しないようにしよう……。
店の側はみんなそう考えます。ですが本部は「新商品だ、取れ」「これは売れるから取れ」と言ってくる。その程度では済みません。いわゆる店に来る、訪店する本部社員が勝手に発注数を書き換えていく。そんな出来事もよくありました。
勝手に店に来て「発注数を増やしておきましたからね」とやられるわけです。店としてはたまったものではありませんが、「廃棄を出せば出すほど本部は儲かる」という仕組みが前提にあるので、どうにもなりません。
ですが最近は少しずつ状況も変わってきているようですね。期限切れが近い弁当が値引き販売されるようになったり、契約の段階で会計システムを選択できるようになったりしている、という話を聞いています。
私自身も当時の記憶はものすごくきつい思い出でしたが、少しずつ回復して現在はギャグ漫画として記憶を変換できるようになりました。