新型コロナウイルスワクチンの接種委託料がだまし取られた事件で、詐欺容疑などで逮捕された「王子北口内科クリニック」(東京都北区)院長・船木威徳(たけのり)容疑者(51)が警視庁の調べに「接種希望者に生理食塩水を注射した」と供述していることが捜査関係者への取材でわかった。
警視庁は、患者に無断で生理食塩水を打ったとみている。
発表によると、船木容疑者は昨年、ワクチンを接種していない札幌市の男女3人について虚偽の予診票を作成。国のワクチン接種記録システム(VRS)に虚偽の登録をし、札幌市から接種委託料計約1万4000円をだまし取った疑い。女性の求めに応じ、接種済証を渡していた。
捜査関係者によると、船木容疑者は逮捕後の調べに「ワクチンは危険だと思っていた。患者に危険性を説明し、それでも接種を希望した場合に、生理食塩水を入れて打ったことがある」と供述したという。
東京都北区によると、同クリニックで接種したという複数の区民から今年1月、「副反応が出ない」などと相談があった。区職員がクリニックを訪ねると、船木容疑者は「適切に接種している」と答えた。
だが、その後も同様の相談が寄せられたため、区は4~5月、クリニックでの接種記録があった区民約60人に抗体検査の案内を送った。うち十数人が検査を受けたところ、数人は抗体値が低かったため、区は接種券を再発行していた。
クリニックでは昨年7月以降、13都道府県の約230人が接種した記録があり、警視庁が実態を調べている。