東京・お台場のランドマークとして知られる大観覧車(江東区青海)が、31日に営業を終了する。
エリアの再開発に伴うもので、9月には解体作業が始まる。開業から23年。多くの恋人たちや家族連れが、1周16分のゴンドラの中で思い出を作ってきた。「最後の記念に」と訪れた来場客や施設関係者からは、別れを惜しむ声が相次いだ。(大原圭二)
■上空のプロポーズ
「あの時、背中を押してくれてありがとう。たくさんの幸せに巡りあえました」――。
大観覧車にとって最後の週末となった27日。家族3人でゴンドラに乗った北区の男性会社員(34)は、心の中でつぶやいた。
6年前、妻(34)へのプロポーズの場所に選んだのが、この大観覧車だった。
知人の紹介で出会い、2013年に交際を始めた2人。最初のデートも大観覧車で、近隣のショッピングモールで買い物をしたり、食事したりするのがお決まりのコースに。毎回、締めくくりに大観覧車に乗った。
交際を始めて3年。男性はデートで訪れたゴンドラの中で、思いを伝えた。「一生大切にします。結婚してください」
2人は17年に結婚し、昨年11月には長男が生まれた。
■5時間待ちも
大観覧車が営業を終えることを知り、この日、初めて家族で訪れた。ゴンドラの中で、「ここでパパがプロポーズしてくれたんだよ」と長男に語りかけたという妻は、「最高の思い出が増えました」と満面の笑みを見せた。
大観覧車の開業は、1999年3月。ショッピングモールなどからなる複合施設「パレットタウン」の中心施設として建築された。直径100メートルで、64基のゴンドラが約16分で1周する。115メートルの高さは、当時のギネス記録に認定された。
開業直後から人気は沸騰。最長で5時間以上の待ち時間になる日もあった。23年間で2100万人を超える人がゴンドラに乗った。
■新たなシンボル
遊戯設備メーカーの「サノヤス・ライド」(大阪市)理事の竹内啓祐さん(52)は大観覧車の建設に関わった一人。開業後も接客などに携わった。竹内さんは「プライベートな空間で大切な人と特別な時間を過ごすのが観覧車。乗った方々の記憶に残る仕事に関われたことが誇らしい」と振り返った。
複合施設跡地についてはトヨタ自動車や森ビルなどが再開発のプロジェクトを進めている。一部のエリアには、スポーツやコンサートの会場となる多目的アリーナが2025年に開業する予定だ。
幼い頃に大観覧車に乗り、最後の記念で27日に家族とゴンドラに乗りに訪れた、江東区の男性会社員(31)は「観覧車がなくなるのは寂しいけど、また新しいシンボルがお台場にできる。より魅力的な街になってくれれば」と話した。