残暑が厳しいこの時季、疲れやすい、いつも眠い、便秘、暑いのに冷え性…といった不調を抱えている方はいませんか? 薬やサプリに頼る前に、変えるべきはじつは「食べ物」や「飲み物」かもしれません。ESSEonlineでも人気の漢方コンサルタント、櫻井大典さんの最新著書『食う寝る養生』(学研プラス刊)の中から、今日から実践できる食べ物、飲み物の勘違いを教えていただきました。
なにかと不調が出やすい残暑のこの時季。サプリメントを探したり、流行りの食事法、健康法を聞いたらとりあえず試してみたりする人も多いと思います。
でも、櫻井大典さんによると、「中医学では、“まずは食事と睡眠でなんとかしてみる”と考えます。薬はその後の話。健康に毎日を過ごしていくために肝心なことは、流行りの健康法や有名人のおすすめのサプリではなく、“あなたに合った食事と睡眠”なのです」
とくに「よかれ」と思って実践している食べ方、飲み方が不調を招いていることもあるそうです。「ひとつの健康情報を知って、一度試してみることは悪くないですが、それがあなたに合っているとは限りません。試してみてどうかをきちんと観察しましょう。様々な健康情報のなかには、『健康のためにはしない方がいい』とはっきり言えることもあります。今なにか不調を感じているなら、こんなことをしていないか、この2週間くらいの食事や飲み物の内容を、ちょっと振り返ってみてください」(櫻井さん)。
多くの人が勘違いしていそうな、飲み方、食べ方の勘違いを教えていただきました。

「『テレビで1日に水を2L飲むといいという情報を見たので、毎日がんばって飲んでいます』という方がとても多いのですが、それは美容や健康のためになりません。水はもちろん大事ですが、とにかくたくさん飲めばいいというものではありません。飲み過ぎれば胃腸の負担になり、ひどいむくみや頻尿など、さまざまな不調の原因になるからです」と櫻井さん。
「さらに水の飲み過ぎで胃腸が弱れば、食べた物をきちんと消化できず、栄養も上手く体に吸収できなくなり、体を温める力や、血や栄養を体のあちこちに届ける力が弱くなってしまいます。その結果、冷えやすい、疲れやすいなどの不調を招くことにも。巡りがよくなるどころか、過剰な水のせいで巡りにくい体になり、溜まった不要物がさらに巡りを妨げるという悪循環が起こるのです」
そこで、櫻井さんのおすすめの水の飲み方を教わりました。「水は、のどが乾いたときに、常温のものを少しずつ飲みましょう。“1日に〇L”という風に、数字を考えて飲まないようにしましょう。例外は、感覚機能が衰えてのどの渇きを感じにくくなる、高齢の方です。高齢の方の場合は、のどの渇きを感じる前にこまめに水分を補給しましょう」
また、水の量を気にするよりも、お菓子やアイス、ジュースなど、本来必要のないもの、冷たいものを減らす方がおすすめです。

「玄米は栄養価の高い食べ物ではありますが、食物繊維がとても多いため、食べる人を選ぶ食材です。食物繊維が多いということは、イコール消化しにくい、ということ。消化しにくいということは、栄養を吸収しにくい、エネルギーに変えにくい、体の一部に変換しづらいということです」と櫻井さん。
「ですから今あなたが健康な状態で、もっと健康になるために玄米を選ぶならよいのですが、胃腸が弱い人、便秘、下痢、食欲不振などがある人は摂らない方がよいですし、また、疲れやすい人や体力が落ちているときなどにも合いません」
胃腸はあまり強くないけれど、できるだけ健康にいいものを食べたい人は、なにを選べばいいでしょう?「玄米と白米の間の“分づき米”にするのがおすすめです。どのお米の場合でも、しっかり噛んで食べてくださいね」
「カフェなどで、健康を気にして牛乳の代わりに豆乳を選ぶ方がいるようですが、それが本当に健康によいとは限りません。牛乳と豆乳はまったく別物なので、“豆乳を飲めば牛乳の代わりになる”“豆乳の方が牛乳より健康的”ということではありません」
牛乳と豆乳にはそれぞれいい成分が入っていると櫻井さん。「牛乳はカルシウムを多く含んでいるので、とくにカルシウムを多く必要をするお子さんやお年寄りが飲むのはよいでしょう。中医学の考え方では、牛乳は肌や体の乾燥によいとされています。豆乳にはイソフラボンやレシチンといった、体によい成分が入っています。それぞれに別の栄養があるのです」
「どちらも気をつけるべきは、冷たい状態のものや、脂肪分の多いものは消化しにくく、胃腸の負担になりやすい、という点です。毎日のようにそういう飲み物を飲んでいるとしたら、牛乳でも豆乳でも、体内に偏りを生む可能性があります」
注意すべきは、舌苔がある人。「とくに、舌の表面が苔で真っ白な人は、体に不要物が溜まっているサインです。その場合は冷たい牛乳や豆乳は不要物をさらに増やすので、その場合は控えましょう」
なにか不調を感じているなら、“よかれ”と思って続けているものが原因かもしれません。ちょっと今摂っている飲み物、食べ物を振り返ってみてください。