コロナ禍で働き方が大きく変わった。リモートワークが定着し、地方移住する人も増えた。とはいえ、都会と田舎の暮らしの“違い”に、驚いている人たちがいることも事実である。
本記事では、北海道の田舎に移住した2人のエピソードを紹介する。 ◆屋内と屋外の寒暖差に困惑! 1月下旬。引越し当日の北海道は真冬だった。 「冬の北海道は未経験でしたので、念入りに寒さ対策をしました。ニット帽を被り、中綿入りの上下を着て、滑りにくい靴を履いて完全防備です。そして、飛行機と電車を乗り継いで新居に向いました」 しかし、その対策が間違いだったと話す木内みなみさん(仮名・30代)。木内さんにとって、とにかく寒いイメージしかなく準備万端のはずだったという。 「道中は暑いこと、暑いこと。北海道は暖房設備がしっかりしているので、移動中は都心と変わらない服装で大丈夫でした。室内はむしろ、都心よりも暖かいくらいです」 ◆屋外は極寒、油断し過ぎて着替えるハメに 引っ越して1ヶ月ほど経った日。木内さんは屋外のスポーツイベントを観戦するため、サッと羽織れる厚手のジャンパーと長靴を履いて会場に向かった。 「興奮しながら楽しんでいたのですが、だんだん顔と足が痛くなってきました。初めて経験する痛さで、その原因が寒さだということにしばらく気づきませんでした。厚手のジャンパー以外は特に防寒しておらず、完全に油断していたんです」 10分もしないうちに観戦を中断。急いで着替えに戻ったそうだ。
◆北海道民は車のサイドブレーキを引かない また、道民ならではの車の駐車方法に驚いたエピソードも教えてくれた。 「雪が溶けた季節。友達に運転をお願いしてドライブへ行きました。駐車場に車を止めた後、サイドブレーキを引かずに車を降りようとする友達に、『車を止めるときは必ずサイドブレーキ引かないとダメだよ!』と注意しました」 すると、友達から予想外の反応が……。 「『えっ、サイドブレーキ引いたことないよ』と言われたんです。このときは、友達は運転もたまにしかしないって言ってたから仕方ないなぁなんて思っていたのですが」 その後、会社の上司にその話をすると、「友達の言う通りだよ。冬にサイドブレーキを引くとそのまま凍って解除できなくなり、動かなくなってしまうことがある。北海道の人は夏でもほとんどサイドブレーキを引かないよ」と言われたという。 木内さんは、上から目線で友達にアドバイスしていたことに「恥ずかしかった」と苦笑いだった。
◆“隣町に行けば何でも揃う”けど、日々の暮らしには不便 中野晴香さん(仮名・50代)も北海道に移住して戸惑った経験がある。移住に向けての下見は十分にしたつもりだった。住む場所はド田舎でも、大きな隣町に行けば何でも揃い、困ることはないはず……そう思っていたが、現実は厳しかったと話す。
「隣町まで車を走らせれば事足りるのですが、それがいつもできるわけではないことは計算外でした。たとえば、仕事終わりに食事をつくる元気がない……。今日は夕飯を買って帰ろうにも、隣町まで行く元気がありません」 都会に住んでいた頃は、「寄り道できる場所だらけだったなぁ」と気づかされたという。
◆マクドナルドに行くためだけに車移動 さらに、「ちょっとマック食べたいな」と思っても、それは半日がかりになってしまうようだ。 「本屋に行くのだって半日かかります。ストーブが壊れて家電量販店に行くには、もはや仕事を休むしかありません。都会ではちょっとしたことが、田舎では大仕事になる。初めは正直ストレスを感じていました。『ここは田舎だ!』と諦めるまでに結構な時間がかかったんです。 田舎では誘惑が少ないので散財しなくて済むから“ヨシ”と思うようにしていますが、本音を言えば、これは強がりかもしれません」
現在は田舎の生活に慣れたとはいえ「誘惑の多い生活は魅力的だ」と心の声は言っていると、最後は寂しそうに締めくくった。 <取材・文/chimi86>