東京・池袋の「サンシャイン60」で起きた、準暴力団「チャイニーズドラゴン」をめぐる乱闘事件から、23日で1週間。警視庁は、現在、関与したメンバーらの特定を急いでいる。
110番通報が入ったのは、16日の午後6時半ごろ。「100名の団体客のうち、理由はわからないが、10数人が乱闘している」。現場は東京・池袋の「サンシャイン60」の58階にあるフランス料理のレストラン。都内でも有数の高層ビルで、都心の夜景を一望しながら、100人規模で貸し切りの宴会が行われている最中だった。
従業員からの通報を受け、警察官が現場に駆けつけた際には、割れたグラスが散乱し、テーブルはひっくり返った状態。レストランから1階に繋がるエレベーターには、血のついた布や割れたビール瓶も落ちていたという。
目撃者の話では、黒いマスクをつけた“がたいの良い”男らの集団が付近にたむろし、現場のレストランからは男らの怒鳴り声や叫び声が聞こえてきたという。一体何が起きたのかー
捜査関係者によると、この宴会は準暴力団「チャイニーズドラゴン」のメンバーらが、仲間の男の“出所祝い“をするために開いていたという。チャイニーズドラゴンと言えば、中国残留日本人の2世・3世が中心となって構成され、2013年に警察庁により準暴力団と認定された不良グループだ。
この男は現在もチャイニーズドラゴンの”幹部”で、10年以上の服役を経て、今年8月に出所したばかりだった。宴会は午後6時ごろから始まっていたが、直後に10人前後の殴り合いの乱闘に発展したという。
通報を受けた警視庁巣鴨署の警察官が駆けつけた際には、乱闘をしていた男らや宴会に参加していた者の大半は蜘蛛の子を散らした様にいなくなり、宴会場には2人しか残っていなかったという。
警視庁暴力団対策課は、58階のエレベーターホール付近に設置されていた防犯カメラの映像を押収。そこには宴会をしていたグループとは別のグループの男らおよそ20人が、店の方に向かって歩いて行く様子が映っていた。
武器こそ所持していなかったものの、宴会中に別のグループが乱入した後、何らかの理由で口論となり、殴り合いに発展したとみている。この乱闘により、少なくとも20代の男性1人が頭を切るケガをしている。豊島区内の病院に自ら治療に向かったというが、その後、行方が分からなくなっているという。
先にも触れたが、中国残留日本人の2世・3世が中心となって構成されたチャイニーズドラゴンは、暴力団との対立抗争も辞さず、「暴力団さえも恐れる」存在とされてきた。
日本の警察当局はこれまで、暴力団対策法の改正を重ね、指定した「暴力団」に対する取り締まりを強化。経済活動を徹底的に制限するなどしてき結果、暴力団勢力は衰退の一途をたどった。その裏で、暴対法の“網”にかからないチャイニーズドラゴンは暗躍を続けてきた。
そもそも特定抗争指定暴力団となっている「山口組」などは、区域内で5人以上で集まることが禁止されている。また「出所祝い」の事例をとっても、暴力団は暴対法などの規制の下、出所祝いとして金品などの利益を提供することも禁止されている。
そうした規制の対象とならないチャイニーズドラゴンは、警察当局にとって単なる不良グループにはとどまらない、いわば“扱いづらい”存在となった。そんな中、「暴力団に準ずる反社会的勢力」と位置付けて、2013年にチャイニーズドラゴンを準暴力団に指定。現在も実態解明と取り締まりの強化に乗り出している最中だ。
警視庁暴力団対策課は、防犯カメラの映像の解析を進めるなどして、現場にいたチャイニーズドラゴンの関係者の割り出しを急いでいる。また店の備品を壊した器物損壊容疑や、ケガをした男性に対する傷害容疑も視野に捜査を進めている。