コンビニで長く働いてきた筆者。辞めていた時期もあるが、現在はライター業の傍ら、知り合いの店長に「人手不足」を理由に頼まれ、空いた時間だけ手伝う生活をしている。最近はコロナ対策の一環でトイレが使用禁止、レジではキャッシュレス決済も浸透してきたが、今回はそれにまつわる迷惑な客のエピソードを紹介したい。 ◆ハンズフリー通話をしながら会計
3週間に1回ぐらい訪れる、化粧が濃くて服装が派手な水商売風の女性。
夕方来店するやいなや大声で電話しながら商品を選んでいる。しかもワイヤレスイヤホンのハンズフリー通話。まるで独り言を呟いているような不気味な感じでレジにやってきた。
会計時も通話したまま。お釣りを渡す際、筆者が手渡しをしようとすると露骨に嫌な顔をする。トレイに置こうすれば、それを手で制止。
そして、指先でチョンチョンと“横に置いてくれ”というジェスチャーを見せた。筆者だけでなく、店長なども彼女を不愉快に感じている。
◆コンビニ店員を完全に「バイ菌」扱い
ある日、筆者がレジをこなしていると、ある女性の順番になり、揚げ物などを注文した。
彼女はクレジットカードを手に持っていたが一応「お支払い方法は?」と確認。すると、彼女は強い口調で言い放つ。
「現金ですけど!」
だったら、なぜカードを持っているのだ。怪訝に思っていると、例の女性だった。忙しい時間帯のうえ、マスクを着けていたので気づかなかったが、その態度は相変わらずだ。
客の中の数パーセントは感じの悪い人がいるものだ。
筆者はベテランなので、ある程度の応対はできるし、いちいち気にも留めなくなっているが、ここまで人を小馬鹿にするような客は珍しい。
彼女が小さな声でボソボソと呟いたので何かと思ったら「おしぼり」だった。
「おしぼりですね?」「さっきから言っているんだけど!」
聞こえていないよ。ハンズフリーで通話していたときのように、もっと大きな声で言ってほしい。そして、お釣りを渡そうと思ったら汚い物でも触るように「嫌!」と言い、完全に店員をバイ菌扱いだ。
◆そんなに嫌ならば最初からキャッシュレスで!
この人は以前、クレジットカードやスマホ決済もしたことがある。そんなに嫌ならば、最初からキャッシュレスにすればいいし、「ここにお釣りを置いてください」と口で言えばいいだけなのだ。
それを見ていた店長が言う。
「ねえ、ヤバいでしょ。ほんといつもあんな感じで頭にきているんだよ」
◆常に泥酔状態の中年女性
常連の中年女性がいる。基本的には陽気でいい人なのだが、いつも酔っぱらっていた。街中で酔い潰れている場面を見かけたこともある。
少し心配していたのだが、彼女が久しぶりに店を訪れた。酒などをレジに持ってきたが、なんだかボ~ッとしていて、呂律もまわっていない。
クレジットカードの支払いだったが、使用不可だ。なんだか嫌な予感がする。彼女は「おかしいな。では、これでおねがいします」と、別のクレジットカードを取り出したが、そちらも使用不可。筆者が「現金はないんですか?」とたずねると、財布の中身をのぞきこんだが、まったく現金が入っていない。そして「あ、ごめんね」と一言。そのまま帰っていった。
それを見ていた店長の奥さんが言う。
「あの人、アル中と糖尿病が年々ひどくなっているみたいで。最近は本格的にヤバくなってきているのよ。この前も店の前で倒れて救急車を呼んだわ」
◆10分後に帰ってきた

「さっきも使えなかったでしょ、このカード」「あ、そうだった。じゃあ、これで」
別のカードを出してきた。
「それもダメだったでしょ」
なんだか心配になって、筆者は店から出ていく彼女の姿を追った。千鳥足で他のコンビニに入って行ったのだった……。
◆トイレの横で放尿
数日後、筆者が店に行くと、店長が呆れ顔で言う。
「あの酔っ払いのおばちゃんには参ったよ」
話しを聞くと、女性は放心状態で店にやってきたという。そしてトイレを使おうとしたが、現在はスタッフ専用で客には貸していない(※コロナ対策で使用不可に)。
使えないのがわかったら他に行けばいいのに、しばらく店内をウロウロする。そして、なんとトイレの横で放尿してしまったのだ。他の客にも迷惑がかかるし、掃除するスタッフにも精神的苦痛が伴う。店長と奥さんが激怒するのも当然だろう。
しかしながら、彼女と身内らしい女性が平身低頭で詫びてきた。結局、昔から店を利用している常連ではあるので、許すことになったが……。 「あのケバくて態度の悪い女と今回のおばちゃんは、何か問題を起こしたら出入り禁止にするしかないね」
コンビニ店長は、ストレスが溜まる職業だなと改めて思った。
<取材・文/浜カツトシ>