学校に行けず、自宅でも安らげる時間がない。そんな苦しい一日一日を過ごす子どもたちがいる。背景に浮かび上がるのは、体や心が思うようにならない親の介助、いくつもの家事、勉学に対する過度な重圧。そんな彼らに手を差し伸べ、サポートするために、親でも教員でもない大人の存在が必要なのだ。例えば、フリースクールという「場」のような-。
福岡県の女性(19)は、中学で不登校になった。海外での生活が長く、日本語が得意ではない。授業が分からず、級友との会話も難しかった。英語を話せる生徒が集まる全日制の私立高校に行きたかったが、入学に必要な資金を用立てるのは難しく、通信制高校に入った。
学校に行けないなら、おいでフリースクール支援を始めます
彼女はひとり親家庭で、同居する高齢の父は認知症を患う。中3の頃から毎日夕食を作り、父の入浴も介助する。友人たちと異なる環境を自覚し、「父を助けるのが私の役割なのだ」と思う。今は高校の授業の理解を深めるのをフリースクールで支えてもらいながら、就職に視線を向けている。
子どもが弱音も吐かず家族の世話を続けるとき、その感情を解きほぐすのは容易ではない。
数年前、福岡県でスクールソーシャルワーカーに従事していたタキさん(仮名)は、認知症の祖母を助けて暮らす中学生の女の子を受け持った。
最初は会話も拒否された。それでも粘り強くコミュニケーションを取ろうとするうち、「祖母の世話がきつい」というSOSが漏れてきた。父はおらず、忙しく勤め先と家とを往復する母には相談できずにいた。「少しずつ信頼関係を築く中で、心を開いてくれた」とタキさん。そこから、彼女と母を行政、地域につなげていく改善策を見いだせた。
また、ある小学生の男の子の場合は、授業中に立ち歩き、級友に対する暴言と暴力があった。家庭でも妹に手を上げ、教員や親から叱られていた。タキさんは彼のストレスを和らげようと、母に面会を打診。何度か断られたものの、粘り強く話し合った結果、特別支援学級に移ることにより状況を改善させた。
タキさんによると、「裕福な家庭ほど子どもへの期待が高く、仕事が忙しくて一緒に過ごす時間が少ない」のだという。家庭だけで育児を完結するのは困難であり、遠慮せずいろんな人に頼っていいんだよと呼びかける。
継続的に支援する上で、スクールカウンセラーがフリースクールに橋渡しをする選択肢も。福岡市など3カ所でフリースクールを運営する認定NPO法人・エデュケーションエーキューブにも、家族の世話や家事を担う子たちが通う。日々、学びと対話を通してその思いを引き出そうと試みる代表理事の草場勇一さん(52)は言う。
「彼らの将来の可能性を支えてあげたい」
(四宮淳平)
このたび、フリースクールの安定運営・拡大を目指すエデュケーションエーキューブと、社会課題解決のアクションを志す西日本新聞で連携し、学校を選べない子ども達の選択肢を増やすためのプロジェクトを立ち上げました。11月27日から1月24日まで、フリースクールの安定運営と拡大を支援していただくマンスリーサポーターを150人募集します。
>>草場代表理事と四宮記者がクラウドファンディングプロジェクトを動画で説明しています