「突然、感情が抑えられなくなって…」“ススキノ首狩り殺人”田村瑠奈(30)の祖父が激白した「凶行の背景」

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昨年7月、札幌市ススキノで起きた「首狩り殺人事件」。被害者Aさん(当時62)の首が切断された猟奇的事件について、今年6月4日、死体遺棄ほう助と死体損壊ほう助の罪に問われた田村浩子(61)の初公判が札幌地裁で行われた。
【画像】「突然、感情が抑えられなくなって…」幼稚園時代の田村瑠奈被告
殺人などの罪で起訴された娘の瑠奈(30)、そして父で精神科医の修(60)の裁判は、後日裁判員裁判で審理される。“瑠奈ファースト”とされる異様な親子関係はどのように生まれたのか。逮捕直後の記事を全文公開する。
初出:「週刊文春」2023年8月3日号
◆ ◆ ◆
ススキノのラブホテルで首を切断された男性の遺体が見つかった事件。逮捕されたのは、地元で有名な精神科医とその妻、そして“多重人格”を告白する29歳の娘だった。3人はなぜ凶行に走ったのか――。
「家族仲はものすごくよかったんだよ。孫の瑠奈を中心にしてね……」
祖父が言葉を紡ぐ。息子である医師の田村修とその妻の浩子は、1人娘の瑠奈を溺愛していた。
「娘を大切に育ててさ。でも俺から言わせれば、ちょっと過保護なんだよな。でもそう言うと、修から怒られるんだ。『父さんは古臭いんだ』って。こっちがしっぺ返しをくらう。そういう性格なんだよ」
そして、3人家族が直面した深刻な局面。祖父が表現を選びながら続ける。
「(瑠奈にとって)許せないことがあってね。気難しい持病があって、突然、感情が抑えられなくなって。歯止めが利かないんだよな。そうなったら何をやるか分からんというか……。母親の方(浩子)も捕まると思っていた。瑠奈のやってることも修のやってることも、浩子は知ってるんだ。3人家族だから。知ってるってことは、共謀だもんな……」
言わんとするのは、親子による過保護では済まされない復讐劇だった――。
その朝、北海道札幌市厚別区にある静かな住宅街の一角に、複数の警察車両が停車した。20人ほどの捜査員が、瀟洒な3階建ての一軒家の中へ続々と入っていく。そこには、捜査当局が約3週間前から追い続けた女――、瑠奈が両親の修、浩子とともに暮らしていた。
事件直後の映像(NHK NEWS WEB)
7月2日、札幌市内のラブホテルの一室で、頭部のない全裸男性の遺体が発見された事件。被害者は、恵庭市に住む会社員のAさんだった。ホテル内や周辺の防犯カメラは、大型のスーツケースを引き、現場を1人で立ち去る小柄な同行者の姿を捉えていた。
「当初は性別不明だったが、被害者と接点のある女に絞り込んで捜査を進めた。念頭にあったのが、犯行を手助けした協力者の存在だった」(捜査関係者)
猟奇的な事件は、単独犯ではなかった。親子3人による一家総出の犯行だったのである。
7月24日、北海道警は、職業不詳の瑠奈、その父親で精神科医の修の2人を、死体損壊、死体領得、死体遺棄の容疑で逮捕に踏み切った。そして翌25日、祖父の言葉通り、母親の浩子も、同じ容疑で逮捕される。

「父娘の逮捕の日に行われた家宅捜索では、一家の住む自宅から、被害者の頭部が見つかった」(同前)
田村家と被害者――、2つの点を結ぶ線は、どのような軌跡を描くのか。
舞台となったのは、札幌市にある北海道一の繁華街ススキノ。Aさんには“女装家のトモちゃん”という別の顔があった。事件前日は、女性ファッションに身を包み、札幌市で4年ぶりに開催されたディスコイベントに1人で参加。
「イベントでは、宇宙服のような銀色のコスプレ衣装に着替え、お立ち台で踊ったり、他のお客さんたちと記念撮影をして楽しんでいた」(参加客)
このイベントが終了したのは午後10時。その後、Aさんが待ち合わせた謎の人物こそが瑠奈だった。すでに面識のあった2人は近くにあるラブホテルの202号室に入室する。
「被害者は、浴室でうずくまるようにして倒れていた。入室してすぐ、無防備な状態で襲われたとみられる。死因は出血性ショック。刺殺後に頭部が切断され、浴室の血は綺麗に洗い流されていた」(前出・捜査関係者)
犯行後、服装を替えた瑠奈は、Aさんの所持品と頭部を持ってホテルを後にする。チェックインから約3時間が経過した翌2日の午前2時頃のことだ。
瑠奈の逃亡から、ホテルの従業員による遺体の発見まで約13時間。この空白の間、202号室に出入りした第三者の存在は、確認されていない。共犯として逮捕された修や浩子は、どのように加担したのか。
「父親は娘の犯行前後、車で送り迎えを担当したと思われる。両親は、娘による殺害行為や遺体損壊等を把握した上で、事前に凶器やスーツケースを購入するなど、準備段階から関わっていたとみられ、入念な計画性と狂気が窺えた」(同前)

田村家の近隣住民は、驚きを隠せない。
「お医者さんで穏やかなお父さんと、筆まめで植物や生き物が大好きなお母さん。ロングヘアの娘さんはお母さんにそっくりで、以前は、母娘で仲良さそうに歩いているのを見かけました。非の打ちどころのない理想的な3人家族に見えたのですが……」
一家の大黒柱だった父の修は本来、人の命を救うはずの医師として、家庭を支えてきた。オホーツク総合振興局管内の紋別郡遠軽町出身。祖父が記憶を辿る。
「昔から音楽が好きで。中学の時、中古のエレキギターを買ってね。兄貴は尺八だったけど。医大に進んでからも仲間たちとバンドをやってて、旭川で音楽イベントをやると優勝するんだよ。でも勉強もしっかりやっていて、国家試験も一発で合格したんだ」
〈《ススキノ首狩り殺人事件》歪な愛情で結びついた“田村親子の闇”を祖父はどう見ていたのか「まさか人を殺してくるなんて…」〉へ続く
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年8月3日号)

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