〈那須殺害・深層〉「このままだと俺は死ぬしかない」「脳腫瘍になった」2000万円以上のカネを40代“ご令嬢”から引っ張っていた全身刺青の関根容疑者は「自分で手を下すことはできないタイプ」

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東京・上野の繁華街で焼肉店などを多店舗展開していた「サンエイ商事」社長の宝島龍太郎さん(55)・幸子さん(56)夫妻が殺されて栃木県那須町に遺棄、火をつけられていた事件からまもなく1カ月。栃木県警、警視庁の合同捜査本部は事件の入り口を死体損壊容疑に絞って首謀者と指示役、仲介役、実行役ら計6人を芋づる式に逮捕し、最も早く勾留期限を迎えた仲介役の平山綾拳容疑者(25)を5月11日に殺人容疑で再逮捕した。合同捜査本部は今後、共犯者の役割分担の詳細などの調べを進めて、順次、殺人・死体遺棄容疑についても立件していく方針だ。

〈刺青写真あり〉背中一面に“殿”と“姫”、腹には鶴…周囲がビビっていた関根容疑者の刺青全身写真と甘いマスクでマダムを手玉にとっていた20代のころの写真
事件は4月16日早朝、宝島さん夫妻の遺体が火をつけられて放置されているのを通行人が発見。両遺体とも両手を結束バンドで縛られ、頭部はビニール袋をかぶせたうえ粘着テープでぐるぐる巻きにされていた。遺体は炎が上がるほど燃え上がり、近くにガソリンを入れたとみられる携行缶が落ちていた。
栃木県警が司法解剖したところ、死因は2人とも首を絞められたことによる窒息死で、幸子さんは顔面を激しく殴打され、顔が判別不明なほど骨折しており、DNA鑑定で身元が判明するまで1週間を要した。
一方で事件翌日の17日朝に、仲介役の平山容疑者が五反田駅前交番に出頭。この供述から佐々木光容疑者(28)の指示で、平山容疑者が実行役の若山耀人容疑者(20)と姜光紀容疑者(20)を集めて結束バンドや電気コード、携行缶などの凶器を準備したうえで、自身の車を犯行用に提供したいたことが判明。合同捜査本部は平山容疑者に続いて逃亡していた3人を全国指名手配の末、沖縄県や神奈川県、千葉県でそれぞれ発見して死体損壊容疑で逮捕した。
指示役の佐々木容疑者は、事件全体の首謀者であるサンエイ商事の幹部社員で宝島夫妻の長女の内縁の夫、関根誠端容疑者(32)に雇われたものであり、不動産業者の前田亮容疑者(36)が管理していた品川区内の空き家が殺害現場であることがわかった。
平山容疑者は殺人容疑について「実行役の2人と殺害方法について話し合った。ロープを用意しようと思ったが、わからなかったので電気コードを買った」などと供述しており、捜査本部は裏付けを進めている。
まれに見る猟奇的な強行犯を計画、実行させたとみられる関根容疑者については、モデルを彷彿とさせるスラリとした容姿にアンバランスな全身刺青、さらに人当たりのよさや巧みな話術を弄して都内の超高級住宅地・成城のマダムから大金を引っ張る「女喰い」ぶりを報じてきた(♯29参照)。
今回、集英社オンラインはさらに当時の関根容疑者を知る人物からその詳細な手口についての証言を得たので、以下に紹介する。この知人が関根容疑者と知りあったのは、今から7年前のことだったという。
「当時私はペット関連の仕事をしていて、セイハ(誠端)はそこに来たお客さんでした。同い年ぐらいの彼女を連れてきていて、その彼女が穿いていたダメージジーンズを『お前、こんなの穿いてくんじゃねえよ』と上から言っていたのを覚えています。
私に対して『自分は常識人なんだ』というアピールのために彼女をダシにしたのかもしれません。私が知り合ったときは、大手の携帯電話ショップと契約してシステムかなんかをやる会社を経営していると言っていました」(関根容疑者の知人女性)
当時から「セイハ」は人たらしだった。「あれだけ刺青をいれていますが、話すとすごく人なつこいんですよ。チャラいのか“おバカ”なのか、それでも乗っている車はゲレンデだし『商売は頑張ってるのかな』とそんな風に思っていました。年上の私にタメ口で接してスルッと懐に入ってくる感じでした。その1年後、再び私の仕事場に来たときは、40代の成城の『令嬢』を連れてきました。私はその後、この令嬢と仲良くなり、彼女がセイハに2000万円以上ものお金を取られていたことがわかったんです」
この40代「令嬢」と「セイハ」はどんな関係だったのだろう。「その令嬢は私たちとは貨幣価値が違うといっていいレベルのお金持ちだったので、2000万円といってもそれほどの大金という感覚ではないはずです。父親が手広く商売をしているような経営者で、成城の一等地に屋敷を構えていました。
令嬢自身はバツイチで、寂しくもあり、大金をねだられていても黙認していたフシがありました。セイハとは携帯ショップで出会い、3年近く付き合ったそうで、何かにつけて『貸してほしい』と言われるままに200万円とか250万円を出していたようで、セイハは令嬢に犬も買わせてます」(同前)
金を引っ張る手口は、半ば「死ぬ死ぬ詐欺」のようなものだったという。「やれ会社の経営がヤバくてこのままだと俺は死ぬしかないとか、脳腫瘍ができたとか、事故を起こしたとか。借用書は書いてもらっていたけど、それもなんだかんだと理由をつけてセイハに取られてしまったそうです。令嬢にタカっていることをリアルタイムでは知らなかったのですが、のちにいろいろ話を聞いて、令嬢の金でセイハがスタンダードプードルのブリーダーを始めたと聞きました。そのときはカッとなって電話を入れて『お前ずいぶん舐めたことしてんな。人の金で何やってんだ』ってまくし立てたら、セイハはずっと黙ってました」(同前)
以降、関根容疑者がこの知人に連絡をしてくることはなくなったという。「犬は好きだったようですが、ブリーダーの仕事はすぐにやめたようです。私の知る限り、その令嬢以外にも『お金を返してほしい』と言っていた人はもう1人いるし、成城でセイハがマダムからお金を絞りとっていることは噂にはなっていた。お金を貸していたあるオバさまのひとりがセイハのお母さんのところにも行ったそうですけど、『私にはわからないんです。本当にわからないんです』という感じだったみたいです」(同前)
こうして「セイハ」は追われるように成城を出た。「成城から目黒に“飛んだ”という噂を聞きましたが、その後も女性が途切れなかったようです。というのも件の『令嬢』が代々木公園のドッグランでセイハにばったり会ったそうです。このとき一緒にいた『彼女』はやはりセイハより年上の女性だったみたいです。今から3、4年前のことですね。
セイハは令嬢に気付いても無視をして、わざと連れている女性に大きな声で話し始めたそうです。大きな声で『俺は今彼女といる』というアピールをしたかったのかもしれません。セイハはそれからも、令嬢に何度か連絡してきて理由をつけて金の相談をしていましたが、さすがに貸さなかったみたいです」(同前)
今回の凶悪事件の首謀者たる関根容疑者は、他にも犯罪に加担していたとは考えられないのだろうか。「女性からお金を引っ張ること以外はできないだろうし、そもそも『反社』とかムリでしょう。今回の事件も、自らが手を下すことはできないんだろうなと思いましたから。いつだったか目黒から海外に行くという噂を最後に、セイハの話題はしなくなって久しくて顔も忘れていたんですけど、ニュースで『セキネセイハ』って聞いて、『あっ!』って感じでした」(同前)実は気弱な全身刺青男が絵を描いた凶悪事件は、5人の愚か者を巻き込んで現実になった。
※「集英社オンライン」では、今回の事件について、情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(Twitter)まで情報をお寄せ下さい。メールアドレス:[email protected](Twitter)@shuon_news
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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