「職業差別発言」川勝知事会見を心理分析家が解説

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自身の発言について釈明する静岡県の川勝平太知事=2日午後、県庁(写真:時事)
4月1日に行われた静岡県新規採用職員に対する川勝平太知事の訓示に、職業差別とも捉えられかねない発言が含まれていたことについて、2日夜、知事は県庁で記者会見し、釈明しました。
しかし、この釈明にも「納得いかない」という声が上がっています。そこで会見時の川勝知事の発言や表情と言葉との乖離に注目し、なぜ「納得いかない」という声が多いのか、考察したいと思います。
結論から書きます。それは、会見には知事自身の価値観が色濃く投影され、終始、発言の責任を否定しており、謝罪を求めていた私たちの想定とは大きく乖離するものであったため、と考えられます。
どのような訓示および会見だったのでしょうか。問題となっている訓示での発言は次の通りです。
「実は静岡県というのを県庁というのはですね、別の言葉で言うとシンクタンクです。毎日毎日、野菜を売ったり、あるいは牛の世話をしたりとか、あるいは物を作ったりとか、ということと違ってですね、基本的に皆様方は頭脳、知性の高い方たちです。ですから、それを磨く必要がありますね」
この発言に「職業差別しているのか」という抗議の声が上がります。この抗議に対し、翌日の会見で知事は次のように釈明します。以下は、知事の発言の要約です。
「自身に職業差別の意識はなく、不適切な発言だとは思っていない。しかし、誤解を与える、あるいは、不愉快な思いをさせたのなら申し訳ない。とはいえ、原因は、全体の流れを見ないで切りとり報道をするメディアの姿勢だと考える。こうしたメディアの風潮に憂いを持ち、知事を辞職することとする」
この釈明に「納得いかない」とさらなる抗議の声が上がります。
釈明会見冒頭、記者に問題とされる発言の真意を質問されたとき、知事は、言葉では「差別意識は皆無」と言いながら、軽く口角が引き上げられる幸福表情を生じさせます。
なぜ幸福なのかわかりません。しかし、誤解を招くような発言の真意を伝えるシリアスな場面ですので、真面目な顔で伝えるべきでしょう。笑っていると「ヘラヘラしている」と見られ、さらに誤解されてしまうのではないでしょうか。
一方、別の記者に「問題発言をしたという認識はあるか」と問われ、「不愉快な思いをさせたなら申し訳ない」と言いつつも、知事の顔には謝罪を意味する、悲しみ表情や恥表情は生じません。そして、全体を見ず一部だけを切りとるメディアの報道姿勢に責任を帰します。
知事は、訓示での発言の趣旨を「静岡県に奉仕する公僕として、しっかり勉強してください、体も鍛えてください、芸術を愛する人間になってください」であるとし、「歓迎、励ましの言葉であった」としています。
しかし、全体の流れ、文脈を追っても冒頭の発言は、差別発言と捉えられてもしかたないように思われますし、続く別の記者からも同様のことが指摘されます。この指摘に知事は一瞬眉が引き上げられる驚き表情や眉間にしわが寄る怒り表情を生じさせます。
驚きは自分の想定とは異なること、怒りは障害に対して生じます。知事は、「自分は問題発言をしていない」と本当に思っているのだと考えられます。ここに知事の価値観と一般人の価値観の相違が見られます。
続いて別の記者から問題とされる発言を再度問われ、
「毎日毎日、野菜を売ったり、あるいは牛の世話をしたりとか、あるいは物を作ったりとか、ということと違ってですね、基本的に皆様方は頭脳、知性の高い方たちです」部分の「ということと違って」を「という職業と違って」という意味だと知事は答えます。
しかし、「こと」と「職業」を変えたとしても、農業や酪農に携わる方々との対比で語られている構造は同じであり、こうした方々が、「頭を使っていない、知性が低い」と捉えられかねない事態に変わりはないでしょう。
県広報課に「農業・畜産に関わる人の知性が低いということですか」という声が多数寄せられているという指摘に、知事は鼻にしわを寄せ、嫌悪表情を生じさせます。
嫌悪は、不快に感じるモノ、拒否したいモノに対して生じる感情です。受け入れがたい指摘なのでしょう。実際、この表情の直後、この指摘を「読売新聞の報道のせいだと思っています」と言います。
この後、知事は「切りとりだ」、記者は「切りとりではない」としばし応酬が続くのですが、知事の表情に再度、嫌悪感情が生じます。自身の発言の真意が伝わらず、不快感を抱いているのだと考えられます。
最後に今後の対応を問われ、メディアの風潮を憂い、突然の辞任発言をし、会見を終えます。このとき、知事は軽く口角が引き上げられる幸福表情を見せます。「これで皆さん満足でしょう」という意味でしょうか。単なる社交としての笑顔でしょうか。真意はわかりません。知事の今後の言動を追うことにしましょう。
(清水 建二 : 株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役)

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