貯金は2万円、上司は精神論で…令和5年の「ブラック企業」事情 手取り18万円で苦しむ若者のリアル

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ついに日本のGDPがドイツに抜かれて4位になった。そんな経済状況もあってか、サラリーマンの給料が上がらない、苦しい状況が続いているようだ。人手不足が叫ばれているものの、日本人の6人に1人が年収200万円台ということが国税庁の民間給与実態統計調査で公表されている。
どんな人が年収200万円台で働いているのだろうか。実際に年収が200万円前後だという都内の製造業で働く27歳の男性、佐々木さん(仮名)に話を聞いた。
「大学卒業後、23歳で入社してから4年間この会社で働いています。給料の額面は22万円で手取りは17万円後半です。そのうち6万円が家賃に消えて、光熱費などの固定の支出が1万円。飲食費が3万円くらいです。交際費が3万円で平均すると13万円前後が月の支出です。残りは貯金に回したりしますが、不意の支出もあるので、2万円を貯金できたらいい方です」
佐々木さんが働く会社には賞与や手当といった、年収を加算する要素は全くなく、残業代も支払われない。業績が上がればそれに準じて支払うと社長に言われてはいるが、払われたことは一度もないという。
また、会社の先輩も給料は同じで昇給はなく、役職が無ければ全員が一律で同じ給料なのだとか。
「うちの会社が一番儲かっていたのは’00年代前半とききました。当時は入社3年目から年収が1千万を超えていて、ボーナスは6ヵ月分が年2回かつ昇給もあったそうですが、今となっては見る影もありません。人が少ない会社ですし、今後も給料は上がらないと思います。期待はしていません」
こうした会社では別の問題も発生する。精神論でなんでも片付けようとする社風だ。今の時代に根性論は通用しないが、企業側の利益がないと給料も上がらず、無い袖は振れない状況だ。
「先輩が会社を辞めるタイミングで問題が起きました。誰が先輩の分の仕事をカバーするのかです。結論としてみんなで先輩の仕事を山分けしました。みんなで分担すれば、何とかなると上長が決めたからです。『苦しいけど、みんな仕事が増えたから一緒だ』と言われたときに本当に頭にきました」
普通の会社では、1人辞めることになった場合、新しく1人雇って業務を引き継いでもらうのだが、佐々木さんの会社は人件費削減のために新しく誰かを雇うことをしなかった。
佐々木さんの先輩が負担していた業務を全体に振り分ければ問題ないと上司が判断し、給料は上がらないが仕事量は増加したのだ。
他にも上司の突発的な発言によって、仕事が増えることもある。商品納品日の前日には徹夜での残業が恒常的になりつつあったのだという。泊まりがけの残業の時は、班員全員が原則として泊まるため、葬式以外では休むことができない。
給料が上がらないのは、会社の業績のほかにも問題があると佐々木さんは語る。
「今あの会社に残っている人のほとんどが創業当時のメンバーです。みんな会社を潰さないように、身を粉にしているんだと思います。そのせいで、席が全くない。同じ役職に同じ人が10年以上いる状態です。そのため昇進もありませんし、実績でも評価されません。言ってしまえば、会社を支えるための兵隊だけを必要としている会社です」
佐々木さんは今の会社に見切りをつけて、同業種への転職が決まっている。転職先の年収は今までの経験を加味して510万円。ほぼすべての業務を兼任していたことが転職の際に評価され、年収は上昇。満足な転職と佐々木さんは言う。
佐々木さんが働いていたような会社は、世の中にあふれている。このような会社が少しでも世の中から減るよう、願うばかりだ。
取材・文・PHOTO:白紙 緑

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。