珠洲市の寺院倒壊現場で1人の遺体発見、安否不明の住職か…家族「間違いであってほしい」

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能登半島地震で大きな被害が出た石川県では、発生から間もなく1か月となるいまも、連絡が取れない人の捜索が続けられている。
土砂崩れで寺院が倒壊した珠洲(すず)市大谷町の現場では28日、1人の遺体が見つかった。服装などから寺の住職、大廣永世(ながよ)さん(55)とみられる。(鈴木彪将、杉木雄斗)
午前10時10分頃、重機で慎重に掘り進められていた敷地内の土砂の中から遺体が見つかった。家族が確認し、その場に集まった消防隊員らは黙とうをささげた。
旧保育所に設けられた遺体安置所で対面したという大廣さんの父親(82)は「見つかった安心感もあるが、まだ間違いであってほしいという願いもある」と声を絞り出した。
1日、大廣さんと寺にいた父親は、1度目の揺れで建物などの被害を確認するため外に出たところ、再び大きな揺れに見舞われた。間もなく裏山が崩れ、バキバキと音を上げながら迫った土砂が本堂を押し流し、大廣さんが巻き込まれたという。
父親によると、大廣さんは、高校進学時に地元を離れ、就職後も県外で暮らしていたが、5年ほど前に実家の広栄寺を継ぐために戻ってきた。公民館長を務めるなど地元のコミュニティーにも積極的に参加し、多くの人から慕われていたという。父親は「呼び戻して寺を継がせなければ、こうならなかったかもしれない」と悔いた。
連日続けられてきた捜索に協力してきた土木会社社長の男性(51)は「大廣さんとは子どもの頃からの付き合い。何としても見つけてあげたかった。一つの区切りになると感じる」と静かに語った。

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