受験者数10万人を割らなかった日大が、「大麻事件」や「悪質タックル問題」で9万人割れの危機に。一方近畿大にも不安要素が…今年の入学志願者数日本一になる大学は?

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大学受験シーズンに突入し、私立大学の一般入試の出願が締め切りを迎えつつある。志願者数は昨年まで4年連続減少しているものの、毎年志願者数ランキングで上位につけている大学の人気は根強い。その中で大学関係者が注目しているのが、旧アメリカンフットボール部による大麻事件などで揺れる、日本大の志願者数の動向だ。
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私立大学の一般入試は2月に入って本格化する。多くの大学で出願が締め切られたか、まもなく締め切られるところだ。一般入試でここ数年に起きている変化は志願者数の減少。総合型選抜や学校推薦型選抜といった、いわゆる「年内入試」を選択する受験生が増えていて、そこに少子化の要因も加わり、昨年まで4年連続で一般入試の志願者数は減少している。
とはいえ、毎年志願者数ランキングの上位に名前を連ねる大学は、相変わらず人気が高い。その中で、毎年ランキング上位につけている日本大の志願者数がどうなるのかに、大学関係者の注目が集まっている。
日本大学 時事通信
日本大は国内最大の学生数を誇る大学だ。しかし、2023年8月以降、旧アメリカンフットボール部の部員が大麻を所持していたとして、麻薬取締法違反の罪で3人が起訴され、1人が1月9日に有罪判決を受けた。他に1人が書類送検されている。さらに、事件を把握しながら隠蔽したかのような大学側の対応も、大きな批判を浴びた。
日本大では不祥事が続いていて、2023年度まで3年連続で私学助成金が不交付となった。それでもいまだに多くの志願者を集める。2018年以降の志願者数は次の通りだ。
2018年 11万5180人
2019年 10万853人
2020年 11万3902人
2021年 9万7948人
2022年 9万3770人
2023年 9万8506人
この10年で順位を最も下げたのが2019年で、志願者は1万4000人あまり減少した。このときは2018年5月に起きた、旧アメリカンフットボール部の反則タックル問題が影響したと考えられる。
2021年10月には理事による附属病院をめぐる背任事件が摘発され、11月には前理事長の故・田中英寿氏が脱税の疑いで逮捕される事態も起きた。ただ、この直後の2022年入試では4000人あまりの減少に留まった。
一般的に、志願者が増えた翌年には反動で減少し、また翌年は増えることを繰り返すことが多い。日本大の志願者数の推移にはその傾向も表れているものの、受験生にとっては学生が関与した不祥事の方が、大学幹部の不祥事よりもイメージが悪いのかもしれない。もしもそうであるなら、今回起きた大麻事件は志願者数に大きな影響を及ぼすことが予想される。
大学入試に関する研究や情報提供を行う大学通信(東京・千代田)では、2024年入試志願者速報をホームページで公開し、主要大学の志願状況を途中集計している。1月17日現在では日本大学の全学部を合計した志願者数は4万2197人で、前年の42.9%だった。大学通信情報調査・編集部の井沢秀部長は、この数字は順調とは言えないと分析する。
「前年の同じ時期と比べてそこまで減っていないようには見えますが、他の大学の志願状況が前年の50%から60%を超えているのに比べると、やや出足が悪いようです」

井沢部長は旧アメリカンフットボール部の問題を別にしても、日本大が志願者を減らす可能性は高く、受験生が東洋大に流れるのではないかと予想する。
「前年は日本大の志願者が増えて、競合する東洋大が大幅に減少しました。その点から考えれば、日本大は不祥事がなくても、隔年現象で志願者を減らす公算が大きくなっています。ただ、不祥事がどこまで影響するのかは現時点では何とも言えない状況ですが、受験生が流れるとすれば東洋大が中心になるでしょう」
日本大の志願者数は、かつては10万人を割ることはなかった。仮に、不祥事の影響によって2019年のような減少幅になれば、9万人割れの事態にもなりかねない。それだけ大量に受験生の志願動向が動くと、他大学の志願者数や難易度にも影響する。日本大が最終的にどのような志願者数になるのか注目だ。
ここで、前年の志願者数ランキング上位の大学を見てみたい。
私立大学志願者数ランキング2023(大学通信調べ)

近畿大は10年連続でトップ。高い志願者数を誇る要因の一つに、受験料の併願割引が挙げられる。大学入学共通テスト利用方式では、医学部を含まない場合に一律3万円で5志願目まで併願できるなど、様々な併願割引を用意している。

2位の千葉工業大は、大学入学共通テスト利用試験の受験料を2021年から無料にしたことで志願者数が増加した。ここに掲載した数字はのべ志願者数で、この2大学はのべ志願者数と実質志願者数の差が大きいと見られている。
ただ、近畿大には今年の入試でマイナスと取られかねない要素もある。学校法人の理事長は参議院議員の世耕弘成氏。創設者は祖父で元衆議院議員の故・世耕弘一氏で、主に世耕氏の一族が理事長を務めてきた。現理事長の弘成氏は、政治資金パーティー収入のキックバック問題などで揺れる自民党安倍派幹部で、自身も5年間で1500万円あまりが政治資金収支報告書に不記載だった。
政治資金の問題を受けて、近畿大学教職員組合は12月11日、世耕氏の対応を「学校法人の理事長としても不適切」などとして、世耕氏の理事長辞任を求める団体交渉要求書を提出。その報告をSNSの「X」にポストすると、インプレッションは現在までに130万を超えるなど、反響が大きかった。
ただ、前述したように理事長ら経営陣の不祥事よりも、学生による不祥事の方が志願者数に影響しやすい傾向がある。世耕氏の政治資金の問題が近畿大の志願者数に影響を与えるのかどうかも、日本大の志願者数とあわせて2024年の私立大学入試の注目点と言えそうだ。
(田中 圭太郎)

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