対策用の防護塀を巡りイタチごっこ…首都高・大黒PAを訪れる「ドリフト族の観覧客」の呆れた危険行為

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首都高速の休憩施設である「大黒パーキングエリア(以下:大黒PA)」は、‘89年8月に首都高速5号大黒線や横浜ベイブリッジの開通とともに開業した。湾岸線西行き、東行きの両方向から利用できるとあって千葉方面からも神奈川方面からも集まりやすい位置にある。’20年には首都高K7北西線が開通したことで、東名高速からの利用もしやすくなった。海外メディアでも報じられるなど、国内外を問わず「車好きの聖地」の一つとして親しまれている。
しかし、同時に大きな問題も巻き起こっている。本誌でもかつて紹介したが、大黒PA周辺の一般道では、違法なドリフト走行などが社会問題となっている。
ドリフト自体はFIA(国際自動車連盟)が認定するモータースポーツ競技の一種で、世界中で人気がある。しかし、公道でのドリフト走行は言うまでもなく非常に危険だ。大黒PA付近でも警察が頻繁に取り締まりを行なっているが、それでも週末の深夜には多くの「ドリフト族」が集まってくる。
さらに大黒PAでは、かねてからこの違法走行を一望できるスポットがあった。フードコート横の階段を上がったところにある「展望デッキ」では、大黒PA周辺の道路でドリフト走行をしている様子がよく見える。
このドリフト観覧については、これまで何の対策も取られていなかった。しかし昨年12月上旬、突如として対策用のフェンスが設置されたのだ(上写真)。もともとあったブロック塀の上に1mほどのフェンスを増設することで、違法走行の観覧防止を目指したものだった。
しかし、このフェンス設置に対して
「神奈川県警さんドリフトを見やすくしてくれてありがとう」
といった投稿がSNSに散見されるようになった。これは一体、どういうことなのか。
なんともともとあったブロック塀に上がって、新設されたフェンスにもたれかかることで、以前よりも高い位置から違法走行を見下ろせるようになったので、「神奈川県警ありがとう」ということなのだ。
当たり前だが、ブロックの上に立ってフェンスの上からドリフトを見ることは大変危険である。大勢がフェンスに寄り掛かるとフェンスが崩れて落下する危険もある。そこで12月下旬にはパイロンや侵入禁止のロープが設置され、フェンスには近づけないようになっていた。
しかしクリスマスを控えた12月23~24日には、なんと立ち入り禁止を乗り越えて大勢のギャラリーがブロックにのぼってフェンスの上からドリフト走行を眺めている様子がSNSにアップされていた。危険行為は繰り返されていたのである。
これを巡り、神奈川県警や管理者である首都高は展望台自体への立ち入り自体を禁止する策を設置した。
まさにギャラリーと取り締まり側とのいたちごっこという状況。もちろん最も問題なのは違法走行を繰り返すドライバーたちである。しかし、ドリフトへの規制がなかなか追いつかないなか、ギャラリーの取り締まりが逆にさらなる危険を招くという矛盾に陥ってしまっているのだ。
1月から施工されている対応柵により、危険行為を行うギャラリーは消滅したかに思われる。しかし、クリスマス前に若者が殺到したように、何かのイベントや行事の前には再び危険行為にお呼ぶギャラリーが現れる可能性は否定できない。改めて言っておくが、取り締まりが進む場所での観覧は禁止行為である。安易な考えで危険に身を晒すことがあってはならないのだ。
取材・文:加藤久美子

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