【河合 雅司】ドライバー「大量不足」で荷物が届かなくなる…日本を襲う「物流危機」の深刻すぎる実態

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国立社会保障・人口問題研究所が最新の将来推計人口を発表し、大きな話題になった。50年後の2070年には総人口が約8700万人、100年後の2120年には5000万人を割るという。
ただ、多くの人が「人口減少日本で何が起こるのか」を本当の意味では理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。
ベストセラー『未来の年表 業界大変化』は、製造・金融・自動車・物流・医療などの各業界で起きることを可視化し、人口減少を克服するための方策を明確に示した1冊だ。
※本記事は河合雅司『未来の年表 業界大変化』から抜粋・編集したものです。
やや複雑な「物流クライシス」日本国内のトラック輸送が“破綻の危機”に瀕している。需要が輸送能力をオーバーしているためだ。物流は「経済の血液」とも称されるだけに、機能不全を引き起こすことになれば日本経済にとって致命傷となる。物流クライシスはやや複雑だ。人口減少で国内マーケットの縮小に頭を悩ませる業種が多い中、「輸送能力をオーバーするほどの需要があるというのは羨ましい限りだ」との声も聞こえてきそうである。だが、運送業を成長産業だととらえるのは早計だ。製造業が海外に拠点をシフトさせたこともあって、国内貨物輸送量(重量ベース)は1995年以降、生産年齢人口の減少とともにゆるやかな下落傾向をたどってきている。国土交通省の資料で2010年以降を確認すると45億トン前後で推移しており、2019年は47億1400万トンだ。大手を含めて厳しい経営環境に置かれているのである。将来見通しも明るいわけではない。今後GDPの減少につれて需要はさらに減ると見られており、公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会の報告書「ロジスティクスコンセプト2030」は、2030年には45億9000万トン程度に落ち込むと推計している。15年でドライバー3割減需要が減少傾向にあるのに、輸送能力が追い付かないのはなぜなのか。それは需要の減少以上にドライバーが減っているからである。総貨物輸送量のうち9割は自動車が運搬しており、その7割がトラックやライトバンといった営業用貨物自動車だ。運転手不足で、目の前の注文をさばけなくなっているのである。日本ロジスティクスシステム協会の報告書はドライバー数の将来見通しも推計しているが、2015年の約76万7000人に対し、2030年には32.3%も少ない約51万9000人になるとしている。ドライバーが不足する直接的な要因は後ほど詳述するが、構造的な問題が不足を拡大させている。近年、トラックやライトバンによる輸送需要を大きく押し上げているのは宅配便の配送だ。公益社団法人全日本トラック協会の報告書「日本のトラック輸送産業現状と課題2022」によれば、インターネット通信販売やテレビショッピングの普及に伴って宅配便の取扱個数は年々増加しており、2020年度は約48億個に及んでいる。国内マーケットは縮小していくので、宅配便の需要もいずれは萎むが、高齢者の一人暮らしが増えることもあってしばらくは伸び続けそうである。宅配便というのは、「着荷主」の中心が個人であるため、配送時に留守であることも多い。企業の大型倉庫に一度に大量の荷物を納入するような効率的な運び方とは異なり、どうしても手間暇がかかるのだ。必然的に多くのドライバーが必要となる。一方で少子高齢化でドライバーのなり手自体は減っているため、宅配にたくさんのドライバーを取られると、宅配以外のドライバーまで確保しづらくなるのだ。
日本国内のトラック輸送が“破綻の危機”に瀕している。需要が輸送能力をオーバーしているためだ。物流は「経済の血液」とも称されるだけに、機能不全を引き起こすことになれば日本経済にとって致命傷となる。
物流クライシスはやや複雑だ。人口減少で国内マーケットの縮小に頭を悩ませる業種が多い中、「輸送能力をオーバーするほどの需要があるというのは羨ましい限りだ」との声も聞こえてきそうである。
だが、運送業を成長産業だととらえるのは早計だ。製造業が海外に拠点をシフトさせたこともあって、国内貨物輸送量(重量ベース)は1995年以降、生産年齢人口の減少とともにゆるやかな下落傾向をたどってきている。
国土交通省の資料で2010年以降を確認すると45億トン前後で推移しており、2019年は47億1400万トンだ。大手を含めて厳しい経営環境に置かれているのである。
将来見通しも明るいわけではない。今後GDPの減少につれて需要はさらに減ると見られており、公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会の報告書「ロジスティクスコンセプト2030」は、2030年には45億9000万トン程度に落ち込むと推計している。
需要が減少傾向にあるのに、輸送能力が追い付かないのはなぜなのか。
それは需要の減少以上にドライバーが減っているからである。総貨物輸送量のうち9割は自動車が運搬しており、その7割がトラックやライトバンといった営業用貨物自動車だ。運転手不足で、目の前の注文をさばけなくなっているのである。
日本ロジスティクスシステム協会の報告書はドライバー数の将来見通しも推計しているが、2015年の約76万7000人に対し、2030年には32.3%も少ない約51万9000人になるとしている。
ドライバーが不足する直接的な要因は後ほど詳述するが、構造的な問題が不足を拡大させている。
近年、トラックやライトバンによる輸送需要を大きく押し上げているのは宅配便の配送だ。
公益社団法人全日本トラック協会の報告書「日本のトラック輸送産業現状と課題2022」によれば、インターネット通信販売やテレビショッピングの普及に伴って宅配便の取扱個数は年々増加しており、2020年度は約48億個に及んでいる。
国内マーケットは縮小していくので、宅配便の需要もいずれは萎むが、高齢者の一人暮らしが増えることもあってしばらくは伸び続けそうである。
宅配便というのは、「着荷主」の中心が個人であるため、配送時に留守であることも多い。企業の大型倉庫に一度に大量の荷物を納入するような効率的な運び方とは異なり、どうしても手間暇がかかるのだ。必然的に多くのドライバーが必要となる。
一方で少子高齢化でドライバーのなり手自体は減っているため、宅配にたくさんのドライバーを取られると、宅配以外のドライバーまで確保しづらくなるのだ。

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