全国で被害拡大中の「トコジラミ」…列島を襲う「猛烈な痒み」で夜も眠れない「生き地獄」を味わった「40歳女性の告白」

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「南京虫」と称されるカメムシの仲間、トコジラミ。刺されたら最後、夜も眠れなくほどの強烈な痒みに襲われる。フランスや韓国などで猛威をふるっているトコジラミの被害が昨今、急速に日本でも拡大しているのだ。今年の夏、フランスでトコジラミの被害にあった女性がその苦しさを明かした――。
「痒くて、痒くてどうにかなってしまうかと思いました…まさに生き地獄でした」
横浜市の飲食店店員、あずささん(仮名・40歳)はそう話し、苦悶の表情を浮かべていた。今年の夏、旅行先のフランスで「あるトラブル」に見舞われた。
(写真はイメージです)photo by istock
あるホテルに到着した初日のことだ。
「明け方に違和感というか、猛烈な痒みで目が覚めたんです」
それは眠気も吹き飛ぶほどの、経験したことがない痒みだった。
「電気をつけて見ると首筋や両手両足、肌という肌に真っ赤な点々がたくさんついていました。痒くて痒くて……」(あずささん、以下「」も)
よく見ると、歯形とみられる傷がついていた。ダニか、なにか昆虫に噛まれたということはすぐにわかった。
だが、その痒みたるやこれまで経験したことがないほど、すさまじいもの。七転八倒の痛み、とは言うが、七転八倒の痒み、とあずささんは表現していた。
「むしろ、痒みを通り越して痛いくらいでした。かけば今度は肌が傷ついて痛くなる、でも痒い……どうにかなりそうでした」
日本から持参した虫刺され薬も猛烈な痒みの前では気休め程度。宿のスタッフに話し、部屋の中を調べてみると、マットレスの下から赤茶色の見慣れない虫が出てきた。
「南京虫」、つまり「トコジラミ」だ。
photo by gettyimages
「ホテルのスタッフは慌てるふうでもなく、『運が悪かったね』と言ったような、あっけらかんとした対応でした。ですが、部屋を変えてもらい、持ってきた衣類も全部クリーニングしてくれました。代わりの部屋でマットレスの下をめくって確認し、殺虫剤らしきものを撒いて『OK、OK』と言って笑っていましたが、こっちは全然OKなんかじゃなかったんです」
その後も痒みは続き、夜もほとんど眠れない状態。そのため、もう旅行どころではなかった。
「痒くてのたうちまわる、という経験を初めてしました。時差ぼけも治っていないし、全然眠れなくて、もう不眠症状態。噛まれたところはかきむしって、血が出てくると今度は膿んでグジグジになってしまったし…対応は悪くて怒りもこみあげてくるし、なんで私ばっかり、って……」
言葉も通じない異国の地。謎の虫刺されによる痒みで眠れない。コロナ禍が落ち着いて、初めての念願の海外、楽しみにしていた旅行計画は散々なものとなってしまった。
「こんな時期に旅行に来たのが間違いだったのか、とか、一日でも早く日本に帰りたい、とかもう精神的に不安定になってしまい、追い詰められてしまいました。ご飯もほとんど食べられませんでしたし、苦しくて悔しくて毎日、泣いていました」
見かねたスタッフが日系の病院に連れていってくれた。薬をもらうと徐々に痒みは改善してきたというが、旅行を楽しむだけの気力はほとんど残っていなかった。
帰国後、あずささんに残されたのは、傷口をかきむしったことで膿んでできた茶色いあざ。皮膚のあちらこちらに残っている。
「肌を見るたびに、あの痒みを思い出して憂鬱な気持ちになっています」
あずささんが宿泊したのはバックパッカーら旅行者が集まる安宿や民泊施設ではない。5つ星、とはいかないが、室内は清潔感もある、ごく普通のミニホテルだった。
「南京虫(トコジラミ)のことは聞いたことはありました。でもそれは発展途上国の安いドミトリーとか、きれいじゃない部屋に出るものとばっかり思っていました。でも、そんなことはなかったんです」
脳裏からあの時の痒み、苦しさが消えることはない。
「今、日本でも南京虫の被害が拡大していると聞いて恐怖を感じています。もうあの痒みは二度と経験したくありません」
あずささんが恐怖しているトコジラミが世界中で猛威をふるっている。特にフランスや韓国では深刻な結構被害も出ているのだ。
だが、日本も無関係ではない。その被害が拡大している。
「旅行のインバウンドが盛んになり始めた2010年ごろから、トコジラミの増加は指摘されていました。ですが、新型コロナの影響で海外からの旅行者、観光客が減り、トコジラミの拡大も落ち着いたようでした。それがここへきて日本人が渡航したり、訪日外国人旅行者の数が増えたことから、アメリカやオーストラリアなどと同様に日本でも急増したのです」
そう説明するのは感染免疫学の専門家で、感染症の問題に詳しい白大学教授の岡田晴恵氏。
新型コロナ禍による感染拡大が一旦、落ち着きを見せる今、人類はさらなる恐怖にさらされている。
体長5ミリ程度のトコジラミだ。痒みでノイローゼになる人も出るというトコジラミの脅威とは――。
つづく記事『殺虫剤が効かない「スーパートコジラミ」が上陸…日本列島に「猛烈な痒み」をもたらす「ヤバい虫」の正体』では、いま起きている“さらに深刻な事態”について、詳しく紹介します。

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