首都圏「実家暮らし」は何歳までアリなのか?大人ばかりの親子5人暮らしに57歳父はイライラ

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首都圏は家賃が高い。収入の多くない若者がひとり暮らしをするのはむずかしい。だから子どもたちはなるべく長く実家にいたがる。実家の居心地がいいせいもあるだろう。そんな自分の子どもたちにイライラを隠せない父親がいる。
社会人になったら実家を出ていくべき?「僕は自分が社会人になってすぐ、家を出てアパートを借り、自立したんです。実家は交通の便が悪くなかったから、そのまま会社に通うこともできたけど、自分の収入で、自分の責任において自由に生きたかった。ただ、うちの子どもたちを見ていると、そう思っていないようですね」
渋い表情でそう言うのは、ヨウヘイさん(57歳)だ。彼は28歳のときに同い年のカナさんと結婚。現在、28歳、25歳、24歳の子どもたちがいる。長女は専門学校を出て就職して8年になるが、自立する様子はまったくない。それどころか家には食費を少し入れているだけで、洗濯も食事も母親に頼っている状況だ。長男も次男も同様である。
「3人とも働いているんだから、もう家を出て行けといつも言っているんですよ。ところが『家賃が高いからひとり暮らしができない』と。だったらシェアハウスでも何でもいいだろうと言ったら、『どうしてそんな他人に気を遣ってまで家を出る必要があるのか』と開き直られました。
子どもがいつまでも家にいると、親のほうも子どもを中心に考えてしまうところがある。いつまでも親でいなければいけないから、夫婦としての関係が歪む。僕はそう考えているんです」
社会に出ても自立しない理由は?子どもたちが自立したら、夫婦ふたりで遊ぼう、家を処分して小さなマンションを購入したほうがいいかもしれないとヨウヘイさんは妻と話し合ったことがある。ところが妻は、「子どもがいなくなるのは寂しい」と言ってはばからなかった。
「ふたりで作った家庭だから、ふたりに戻るのが一番いいんだよ。いつまでも一緒に暮らしていたら、こっちだって子どもを頼りたくなるかもしれない。彼らには彼らの人生があるのだから、それを満喫してもらいたいじゃないかと妻に言いましたが、なんとなくピンとこない様子でしたね」
ヨウヘイさんの危惧が当たって、いまだに大人ばかりの親子5人の生活が続いている。
妻も子どもの自立には消極的ヨウヘイさんは、カナさんにも子どもの自立を促したほうがいいと散々言ってきた。ところがカナさんは、「出て行くかどうかは子どもたちの気持ち次第」という姿勢を崩さない。
「結婚する気も、ひとり暮らしをするつもりもない。だからといって、家の管理や運営に積極的なわけでもない。それなのに妻はせっせと子どもたちの食事を作り、家事をして世話を焼いている。洗濯など自分でやらせろと言うと、『水道代を考えたらまとめたほうがいい』と言うんです。
近くのコインランドリーに行って自分でやらせろと僕は言ったことがあるんですが、妻は『そういうのって現実的ではないわね』と取り合わないんです」
ひとりで生活するということは、収入に見合った暮らしをし、男の子なら家事をするいい機会でもある。ヨウヘイさんはそう言うが、妻は「今さらひとりで暮らして家事をさせるのもかわいそうだし」と言っている。
「子どもたちに生活能力がないのは妻の教育のせいだと思います。娘も息子たちも家事ひとつできないなんて、ちょっと恥ずかしいですよね、今の時代」
いつまでも家がにぎやかでいい?だが妻にはわかってもらえない。当の子どもたちにも通じない。働いてはいるが実家に寄生している子どもたちを、どうすれば自立させられるのかが、ここ数年のヨウヘイさんの悩みだ。
「妻は子どもたちを自立させたくはないのに結婚はさせたいみたいなんです。特に長女には、やたらと見合い話をもってきますが、長女は『結婚なんてしない』とにべもない。結婚よりまず自立だろうと言う僕と、実家から結婚させたい妻との間で、ときどきいさかいが起こっているんです」
夫婦仲良くふたりで老後を楽しむはずが、子どもを巡って言い争いまで勃発しているのだ。予定では60歳の定年を迎えるまでにある程度貯金もしておいて、そこからは自分たちが楽しんで生きていくはずだった。ところが今は自分たちの生活設計まで変わりつつある。
「『いつまでも家がにぎやかなほうがいい』と妻は言うんです。大人ばかり5人が暮らしていても、別ににぎやかじゃないですけどね」
皮肉交じりにヨウヘイさんはそう言うが、子どもたちが将来のことをどう考えているのかはほとんどわからないそうだ。
「『まだ若いんだから』と妻は言いますが、子どもたちは実家があるから必死で自分の人生を切り開こうとしなくなる。人間、若いときはひとりで頑張るのも必要だと思うんですけどね」
ヨウヘイさんの「どうにも整理のつけようがない気持ち」が伝わってきた。

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