「トコジラミ」ホテルの床やベッドに要注意! 爆発的な増殖力で夜中に吸血。旅行時の対策を専門家が解説

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韓国各地で人の血を吸う虫「トコジラミ」が大量発生している。体長1センチにも満たない小さな虫だが、韓国ではトコジラミを意味する「ビンデ」と「パンデミック」を組み合わせた「ビンデミック」という新たな造語が生まれるほど被害が広がっている。トコジラミの習性や海外旅行での注意点、また日本での大量発生の懸念について、人と自然の博物館の山田量崇主任研究員に聞いた。“隙間”に生息し、夜に吸血ーートコジラミとは?

現在問題になっているトコジラミは、人を吸血することが知られています。コウモリや鳥などにも寄生しますが、主な生息場所は人間が生活する場所、特に長時間滞在する施設などに見られます。基本的に夜行性の昆虫で、昼間は暗い場所に潜んでいて、夜になると吸血活動を行いますが、体が平たいので、非常に狭い場所に集合して生息しています。ベッドや畳の下、柱や天井、壁の隙間、カーテンの折り返し部分など、あらゆる“隙間”環境に潜んでいると考えていいです。ーートコジラミの生命力は?トコジラミは寒いところでは生息できません。しかし、冬場でも家の中だと暖房によって20~25度以上になるので、なかなか死にません。また、絶食に非常に強い虫で、場合によっては2カ月以上吸血しなくても生き延びることができます。餌がなくても生き続けられるので、当然荷物に付着して長時間、長距離を移動することにも耐えられます。また、トコジラミのメスは、1日あたり5~6個の卵を産みます。それをずっと産み続けるので、1匹のメスが一生の間に産む卵の数は500個程になります。温度や環境条件が整えば、爆発的に増えてしまうということでかなり注意が必要です。ーー産卵の環境は?どこか特定の所に産むというのではなく、トコジラミが生息するあらゆる場所に産み散らすといった感じになります。生息場所には、成虫もいれば、卵もあるし、幼虫もいるといったイメージです。成虫の寿命は、温度や摂食条件にもよりますが、気温20度ぐらいの環境で1年~1年半ほど生きるという報告があります。昆虫の中ではかなり長い寿命です。衣類は袋で密封し、机の上に昼は暗い隙間などに隠れ、夜になると吸血活動を始めるトコジラミ。一度、刺されると眠れなくなるほどの激しいかゆみに襲われるといわれ、韓国政府は国を挙げて駆除に乗り出している。ーー日本から韓国に旅行する際に注意すべき点は?まず、ホテルに着いて部屋に入ったら、荷物を床に置く前に、部屋のいたるところをチェックした方が良いです。ベッドのマットレスの間やカーペットの隙間、カーテンの折り返し部分などにトコジラミは潜んでいるので、その辺りを確認します。荷物は、床やソファ、ベッドに置かずに、机の上などに置くのが良いです。また、脱いだ服は出来ればチャック付きのビニール袋に入れることが理想です。クローゼットにもトコジラミが潜んでいる可能性があります。また、服を着る前には入念に確認することが重要です。トコジラミは、“人間の臭い”がついた服に誘引されるという報告があります。ーー人間の臭いのついた服に誘引とは?例えば、人間の汗や皮脂から発せられる臭い物質に強く誘引されるとの報告があります。洗いたての服と、一度着た後そのまま置いてある服とでは、後者に誘引されます。また、二酸化炭素にも結構強く誘引されるため、人間の臭いのついた服や人間がいる場所は要注意です。ーー机に置くのが良い理由は?トコジラミの生息場所は“モノの間”なので、床やベッド、ソファなどから離れた場所が望ましいです。万が一、トコジラミが付いた場合に、それがわかるような場所に意識的に荷物を置いたり、長時間同じ所に置くことを避けましょう。心配な方はチャック付きの大きな袋に衣類を入れることをお勧めします。具体的に言うと、布団圧縮袋のようなものに入れて、荷物の中にトコジラミを潜り込ませないようにすることが大切です。市販薬で駆除か専門業者に相談フランスでも2023年9月に公共交通機関や映画館などでトコジラミが大量発生し、政府が駆除対策に乗り出すなど社会問題となっている。旅行者の荷物に紛れ込んで移動するトコジラミについて山田氏は、日本でいつ問題になってもおかしくないと話す。ーー海外から段ボールに付着して日本に入ってくることはある?これだけ蔓延している状態なので、可能性がないとは言えませんが、トコジラミの習性や生息場所を考えると、頻度は少ないと思われます。トコジラミはベッドや部屋の隙間など、人が生活する場所にいるので、段ボールよりは、人間の臭いが染み付いた荷物に紛れ込んで運ばれるケースの方が圧倒的に多いです。ーー韓国では電車内で大量に発生しているが?地下鉄の座席の隙間などに大量発生するのはよくわかります。また、人間が長時間滞在する施設は要注意です。宿泊施設は当然ですが、ネットカフェや医療施設、介護施設といったところでも結構発生していると聞いています。ーー日本に広がる可能性は?個人的な見解ですが、すでに広がっていると思います。トコジラミの被害が宿泊施設などで出た場合、風評被害につながることもあってなかなか表には出ません。そのため、知らないだけですでに身近な問題だと思っています。現在は、韓国やフランスなど海外で問題になっていますが、日本でいつ問題になってもおかしくない状況だと思います。ーートコジラミを発見したらどう対処するべき?市販されている薬品があるので、それで防ぐこともできますが、トコジラミは集合性があり多数の個体が集まって生活しているので、どこが発生源かを突き止める必要があります。トコジラミは衛生環境の良し悪しにあまり左右されず、一度入ってしまったら清掃された場所でも餌となる人間さえいれば増えていきます。しかも最近は、薬に対する抵抗力を持ったトコジラミも確認されています。そうした個体には、別の専用の薬剤が売られているのでそれを使って駆除しますが、難しい場合は専門業者に相談するなど、日常的に気をつけることが重要です。
韓国各地で人の血を吸う虫「トコジラミ」が大量発生している。
体長1センチにも満たない小さな虫だが、韓国ではトコジラミを意味する「ビンデ」と「パンデミック」を組み合わせた「ビンデミック」という新たな造語が生まれるほど被害が広がっている。
トコジラミの習性や海外旅行での注意点、また日本での大量発生の懸念について、人と自然の博物館の山田量崇主任研究員に聞いた。
ーートコジラミとは?
現在問題になっているトコジラミは、人を吸血することが知られています。
コウモリや鳥などにも寄生しますが、主な生息場所は人間が生活する場所、特に長時間滞在する施設などに見られます。
基本的に夜行性の昆虫で、昼間は暗い場所に潜んでいて、夜になると吸血活動を行いますが、体が平たいので、非常に狭い場所に集合して生息しています。
ベッドや畳の下、柱や天井、壁の隙間、カーテンの折り返し部分など、あらゆる“隙間”環境に潜んでいると考えていいです。
ーートコジラミの生命力は?
トコジラミは寒いところでは生息できません。
しかし、冬場でも家の中だと暖房によって20~25度以上になるので、なかなか死にません。
また、絶食に非常に強い虫で、場合によっては2カ月以上吸血しなくても生き延びることができます。
餌がなくても生き続けられるので、当然荷物に付着して長時間、長距離を移動することにも耐えられます。
また、トコジラミのメスは、1日あたり5~6個の卵を産みます。それをずっと産み続けるので、1匹のメスが一生の間に産む卵の数は500個程になります。
温度や環境条件が整えば、爆発的に増えてしまうということでかなり注意が必要です。
ーー産卵の環境は?
どこか特定の所に産むというのではなく、トコジラミが生息するあらゆる場所に産み散らすといった感じになります。
生息場所には、成虫もいれば、卵もあるし、幼虫もいるといったイメージです。
成虫の寿命は、温度や摂食条件にもよりますが、気温20度ぐらいの環境で1年~1年半ほど生きるという報告があります。昆虫の中ではかなり長い寿命です。
昼は暗い隙間などに隠れ、夜になると吸血活動を始めるトコジラミ。
一度、刺されると眠れなくなるほどの激しいかゆみに襲われるといわれ、韓国政府は国を挙げて駆除に乗り出している。
ーー日本から韓国に旅行する際に注意すべき点は?
まず、ホテルに着いて部屋に入ったら、荷物を床に置く前に、部屋のいたるところをチェックした方が良いです。
ベッドのマットレスの間やカーペットの隙間、カーテンの折り返し部分などにトコジラミは潜んでいるので、その辺りを確認します。
荷物は、床やソファ、ベッドに置かずに、机の上などに置くのが良いです。
また、脱いだ服は出来ればチャック付きのビニール袋に入れることが理想です。クローゼットにもトコジラミが潜んでいる可能性があります。
また、服を着る前には入念に確認することが重要です。トコジラミは、“人間の臭い”がついた服に誘引されるという報告があります。
ーー人間の臭いのついた服に誘引とは?
例えば、人間の汗や皮脂から発せられる臭い物質に強く誘引されるとの報告があります。
洗いたての服と、一度着た後そのまま置いてある服とでは、後者に誘引されます。
また、二酸化炭素にも結構強く誘引されるため、人間の臭いのついた服や人間がいる場所は要注意です。
ーー机に置くのが良い理由は?
トコジラミの生息場所は“モノの間”なので、床やベッド、ソファなどから離れた場所が望ましいです。
万が一、トコジラミが付いた場合に、それがわかるような場所に意識的に荷物を置いたり、長時間同じ所に置くことを避けましょう。
心配な方はチャック付きの大きな袋に衣類を入れることをお勧めします。具体的に言うと、布団圧縮袋のようなものに入れて、荷物の中にトコジラミを潜り込ませないようにすることが大切です。
フランスでも2023年9月に公共交通機関や映画館などでトコジラミが大量発生し、政府が駆除対策に乗り出すなど社会問題となっている。
旅行者の荷物に紛れ込んで移動するトコジラミについて山田氏は、日本でいつ問題になってもおかしくないと話す。
ーー海外から段ボールに付着して日本に入ってくることはある?
これだけ蔓延している状態なので、可能性がないとは言えませんが、トコジラミの習性や生息場所を考えると、頻度は少ないと思われます。
トコジラミはベッドや部屋の隙間など、人が生活する場所にいるので、段ボールよりは、人間の臭いが染み付いた荷物に紛れ込んで運ばれるケースの方が圧倒的に多いです。
ーー韓国では電車内で大量に発生しているが?
地下鉄の座席の隙間などに大量発生するのはよくわかります。
また、人間が長時間滞在する施設は要注意です。宿泊施設は当然ですが、ネットカフェや医療施設、介護施設といったところでも結構発生していると聞いています。
ーー日本に広がる可能性は?
個人的な見解ですが、すでに広がっていると思います。
トコジラミの被害が宿泊施設などで出た場合、風評被害につながることもあってなかなか表には出ません。そのため、知らないだけですでに身近な問題だと思っています。
現在は、韓国やフランスなど海外で問題になっていますが、日本でいつ問題になってもおかしくない状況だと思います。
ーートコジラミを発見したらどう対処するべき?
市販されている薬品があるので、それで防ぐこともできますが、トコジラミは集合性があり多数の個体が集まって生活しているので、どこが発生源かを突き止める必要があります。
トコジラミは衛生環境の良し悪しにあまり左右されず、一度入ってしまったら清掃された場所でも餌となる人間さえいれば増えていきます。
しかも最近は、薬に対する抵抗力を持ったトコジラミも確認されています。

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