パパ活詐欺「頂き女子りりちゃん」のマニュアルに書かれた“お金を頂くための魔法の言葉” 「おぢ」から2億円搾取した悪質手口

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今年8月、「パパ活」で男性から金銭を騙し取る方法をまとめた「マニュアル」を販売したなどとして詐欺幇助容疑などで逮捕された渡辺真衣被告(25)。11月2日に初公判が開かれたことで金の流れや動機に注目が集まり、一躍ワイドショーを賑わせている。彼女が犯罪に手を染めた背景には何があったのか。歌舞伎町に詳しいライターの佐々木チワワ氏がリポートする。
【写真】頂き女子りりちゃんこと渡辺真衣被告が2000人に売った「頂きマニュアル」。他、部屋着姿の渡辺被告、ミニスカ姿で警察3人に囲まれた姿も * * *「頂き女子りりちゃん」こと渡辺被告が、複数の男性から総額2億円以上を騙し取った疑いで逮捕された事件。

10月に入ると、渡辺被告から約4000万円を受け取ったとして、ホストの「狼谷歩」こと田中裕志容疑者(26)が逮捕された。罪状は「組織犯罪処罰法違反」という意外なもの。 田中容疑者は渡辺被告にLINEで「俺も共犯、真衣ちゃんが捕まる時は俺も一緒」という主旨のメッセージを送っており、これが「共犯関係」だとみなされ、逮捕の決め手になったという。 今回の逮捕の知らせを受けた歌舞伎町のホストと“ホス狂い”の女性は、戦々恐々。というのも「頂き女子」はここ数年、ホストクラブに通うメインの客層だからだ。 まずは事件の概要を振り返りたい。一連の騒動の発端は今年5月、男性2人から約1000万円を騙し取った名古屋の女子大生の逮捕だった。彼女は渡辺被告が作成・販売していた「頂き女子マニュアル」の購入者だったため、8月に詐欺幇助容疑で渡辺被告が逮捕されたのだ。その後、9月には2700万円、10月には5200万円をそれぞれ50代男性から騙し取った疑いで、渡辺被告自身も詐欺容疑で再逮捕。総額2億円以上を荒稼ぎしていた。 自ら“頂き女子”なるキャッチーな名前を付けた渡辺被告は、マニュアルを販売した理由を「担当ホストにたくさん貢ぎたかったから」と話す。詐取したお金はほとんど残っておらず、指名している「担当ホスト」にほぼ全額を注ぎ込んだと見られている。 彼女が販売していたマニュアル内では、自身が勤務していた風俗店やキャバクラ、出会い系などで出会った「おぢ」こと「寂しそうな男性」に、「お金を頂くための魔法の言葉」をかけることで、大金を貢がせることができると明かす。「魔法の言葉」リストには、「お腹減ったなあ、夜ご飯何食べようかな」という日常会話から「借金があって、このままだと身体を売らないといけない」というお金をねだる“交渉術”まで、具体的に紹介されている。 渡辺被告は出演したYouTubeチャンネルで、頂き女子になった経緯をこう語っていた。「担当(ホスト)に『エース(ホストの客の中で一番お金を使う人のこと)になってほしい』って言われて風俗を始めた。けれど途中で性病に罹り、ホストに払えなくなったお金について風俗で出会った男性にLINEをしたら、振り込んでくれた」 これが渡辺被告の成功体験となったのだろう。麻薬的なスリル 渡辺被告が巨額の金を落とした「ホストクラブ」といえば、かつて有閑マダムや社会的に成功した金持ちの女性が、年下の男性と遊ぶために訪れる──そんなイメージだった。だが、現在のメインターゲットは20代女性だ。彼女たちのなかには月に100万円以上も使う“太客”も少なくない。 背景にあるのが、10年代後半から拡大した「パパ活」である。店に一部を取られる風俗嬢に比べて、ダイレクトに金銭を受け取れるパパ活は、女性を買う男性がSNSを使いこなすようになってから爆発的に増加した。「若ければ若いほどお金を稼げる」という構造をホスト側も容赦なく利用し、彼女たちに積極的にパパ活をするよう促している。 そこで渡辺被告が生み出したのが、「頂き女子」というパパ活を“正当化”する新しい言葉だったのだろう。 渡辺被告は「魔法」という名の嘘を駆使して大金を稼ぐ様子を、SNSで「計5000万以上頂いてるおぢとのLINE」などと喜々として発信していた。その影響は大きく、昨今、歌舞伎町には彼女のやり方を真似る“りりちゃん信者”が増加している。 15歳から歌舞伎町に通っていた筆者が理解できてしまうのは、嘘をついてお金を「頂く」過程には、実に麻薬的なスリルがあることだ。そして稼いだ大金をホストクラブに湯水のように注ぎ込み、派手なシャンパンコールを浴びる。まさに“刺激中毒”である。 こうした事件が起きるたびにホストクラブとホスト側の悪質さがクローズアップされる。社会がこの悪魔的な刺激から若い女性をどう守るか、改めて考えないといけない。取材・文/佐々木チワワ(ライター)※週刊ポスト2023年11月17・24日号
* * *「頂き女子りりちゃん」こと渡辺被告が、複数の男性から総額2億円以上を騙し取った疑いで逮捕された事件。
10月に入ると、渡辺被告から約4000万円を受け取ったとして、ホストの「狼谷歩」こと田中裕志容疑者(26)が逮捕された。罪状は「組織犯罪処罰法違反」という意外なもの。
田中容疑者は渡辺被告にLINEで「俺も共犯、真衣ちゃんが捕まる時は俺も一緒」という主旨のメッセージを送っており、これが「共犯関係」だとみなされ、逮捕の決め手になったという。
今回の逮捕の知らせを受けた歌舞伎町のホストと“ホス狂い”の女性は、戦々恐々。というのも「頂き女子」はここ数年、ホストクラブに通うメインの客層だからだ。
まずは事件の概要を振り返りたい。一連の騒動の発端は今年5月、男性2人から約1000万円を騙し取った名古屋の女子大生の逮捕だった。彼女は渡辺被告が作成・販売していた「頂き女子マニュアル」の購入者だったため、8月に詐欺幇助容疑で渡辺被告が逮捕されたのだ。その後、9月には2700万円、10月には5200万円をそれぞれ50代男性から騙し取った疑いで、渡辺被告自身も詐欺容疑で再逮捕。総額2億円以上を荒稼ぎしていた。
自ら“頂き女子”なるキャッチーな名前を付けた渡辺被告は、マニュアルを販売した理由を「担当ホストにたくさん貢ぎたかったから」と話す。詐取したお金はほとんど残っておらず、指名している「担当ホスト」にほぼ全額を注ぎ込んだと見られている。
彼女が販売していたマニュアル内では、自身が勤務していた風俗店やキャバクラ、出会い系などで出会った「おぢ」こと「寂しそうな男性」に、「お金を頂くための魔法の言葉」をかけることで、大金を貢がせることができると明かす。「魔法の言葉」リストには、「お腹減ったなあ、夜ご飯何食べようかな」という日常会話から「借金があって、このままだと身体を売らないといけない」というお金をねだる“交渉術”まで、具体的に紹介されている。
渡辺被告は出演したYouTubeチャンネルで、頂き女子になった経緯をこう語っていた。
「担当(ホスト)に『エース(ホストの客の中で一番お金を使う人のこと)になってほしい』って言われて風俗を始めた。けれど途中で性病に罹り、ホストに払えなくなったお金について風俗で出会った男性にLINEをしたら、振り込んでくれた」
これが渡辺被告の成功体験となったのだろう。
渡辺被告が巨額の金を落とした「ホストクラブ」といえば、かつて有閑マダムや社会的に成功した金持ちの女性が、年下の男性と遊ぶために訪れる──そんなイメージだった。だが、現在のメインターゲットは20代女性だ。彼女たちのなかには月に100万円以上も使う“太客”も少なくない。
背景にあるのが、10年代後半から拡大した「パパ活」である。店に一部を取られる風俗嬢に比べて、ダイレクトに金銭を受け取れるパパ活は、女性を買う男性がSNSを使いこなすようになってから爆発的に増加した。「若ければ若いほどお金を稼げる」という構造をホスト側も容赦なく利用し、彼女たちに積極的にパパ活をするよう促している。
そこで渡辺被告が生み出したのが、「頂き女子」というパパ活を“正当化”する新しい言葉だったのだろう。
渡辺被告は「魔法」という名の嘘を駆使して大金を稼ぐ様子を、SNSで「計5000万以上頂いてるおぢとのLINE」などと喜々として発信していた。その影響は大きく、昨今、歌舞伎町には彼女のやり方を真似る“りりちゃん信者”が増加している。
15歳から歌舞伎町に通っていた筆者が理解できてしまうのは、嘘をついてお金を「頂く」過程には、実に麻薬的なスリルがあることだ。そして稼いだ大金をホストクラブに湯水のように注ぎ込み、派手なシャンパンコールを浴びる。まさに“刺激中毒”である。
こうした事件が起きるたびにホストクラブとホスト側の悪質さがクローズアップされる。社会がこの悪魔的な刺激から若い女性をどう守るか、改めて考えないといけない。
取材・文/佐々木チワワ(ライター)
※週刊ポスト2023年11月17・24日号

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