【榊 淳司】いま「猛烈な勢い」でタワマンの管理費と修繕積立金が上昇している…!郊外の戸建てを処分して、駅近タワマンに住み替えるのは「やめたほうがいいワケ」

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郊外の駅から遠い戸建てを処分して、駅近のマンションを購入して住み替える――わりあいによく見られるパターンである。
引っ越しは様々な面で負担だが、リタイアして65歳前後までならまだ何とかなる場合が多い。人によっては退職金もあって資金面でも余裕があるケースもある。
しかし、そこには大きな落とし穴があったりする。
やはり、いちばんの問題は「お金」であることが多い。
photo by istock
多くの人は気づいていないが、今、マンションは「日常のコストが高い住形態」に変わりつつある。どういうことか?
分譲マンションの所有者は、自動的に管理組合の組合員である。そして、管理費や修繕積立金を支払う義務が課せられる。これを逃れることはできない。仮に「そんなもの払わないよ」と拒み続けると、どうなるのか。
最近、日本のマンションを購入する外国人は多い。一部の外国人が管理費や修繕積立金の支払いを拒否することがあるという。
そうなると、管理組合は管理費等の債権に基づき、支払いを拒否している区分所有者の住戸を差し押さえることができる。それでも支払われなければ、最終的に競売にかけて回収することができる。
ちなみに、日本の法律では管理費債権が優先される規定がある。つまり、管理費や修繕積立金の支払いを拒否することは、実質的に不可能。
そうした状況の中、管理費や修繕積立金がここ数年、猛烈な勢いで値上がりしており、とりわけ注目したいのが、20階以上の「タワーマンション」だ。
国土交通省「修繕積立金に関するガイドライン」を見てみよう。
それによると、2011年と21年の10年間でタワマンの場合、64%も上昇している。そして、これは今後さらに上昇する可能性を国土交通省も示唆している。
管理費や修繕積立金の基準値が上昇している主な原因は、人手不足とインフレである。人手不足は今や日本の慢性的な社会問題となりつつある。多くの方がそれを感じていることだろう。
一例をあげよう。タクシーの運転手はこの4年間で2割減少したと言われる。私の住んでいる街の地下鉄駅前ロータリーでも、近頃は乗客が列をなしてタクシーが来るのを待っている。数年前ならタクシーが車列を連ねて客待ちしていた。
タクシーなら、待てばそのうち乗れるだろう。しかし、マンションに管理員さんがいないと、困ったことがさまざま起きる。
規模が数十戸のマンションの場合、「通勤管理」である場合が多い。管理員さんが日中だけ勤務する。日本の多くのマンションはこのスタイルだろう。そういった場合の管理員さんの主な業務はゴミ出しと清掃。軽作業とはいえ、それなりの肉体労働だ。
管理員のなり手は「定年退職した管理職サラリーマン」が向いていると言われている。その理由の第一は、低賃金でも働いてくれるからだ。業務自体は軽作業をこなせる体力があれば定年後の方でもOK。住人とのコミュニケーションに支障がない程度の社会経験を有する管理職経験者向き、ということであろうか。
10年ほど前までの日本には団塊の世代の定年退職者がたくさんいた。マンションの管理人を募集すると、彼らが多数応募してきたのだ。だから低賃金でも無理なく採用できた。
ところが団塊の世代は今、75歳に達してしまった。その年齢になると、ゴミ出しや清掃といった軽作業もやや困難。彼らは管理員という「第二の職業」から引退しつつある。
数年前から、マンション管理業界では管理員の募集に悩むようになった。当然、賃金水準が引き上げられている。それでなくても、日本全体で最低賃金も上昇。今やファーストフード店のアルバイトでさえ、時給は1500円だ。
管理員の人件費上昇は、当然のことながら管理会社の経費上昇につながる。それは業務を依頼してくるマンション管理組合への業務受託費の値上げ要求へとなる。
最終的には、マンションの区分所有者が支払う管理費の上昇に帰結するのだ。
さらに、マンション管理に必要な備品類や消耗品も値上がりしている。これらも基本的に区分所有者が負担する管理費で賄わなければならない。
だからこそ、今、マンションは「コストの高い」住形態といえるわけだ。
ただし、修繕積立金が上昇する原因は、ほかにもある。
つづく後編記事『ゴミ置き場にゴミが散乱し、共用部分が汚れ、やがて居住不能に…「タワマン」の管理費と修繕積立金の「猛烈な上昇」で危惧される「深刻すぎる事態」』では、タワマンの将来について、さらに詳報する。

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