「青春18きっぷ」でひたすら西を目指してみた。“始発の上野駅”から16時間かけて到着したのは

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

―[シリーズ・駅]―
JR全線の在来線の普通・快速列車が1日乗り放題×5回セットになった「青春18きっぷ」。毎年、春夏秋の3シーズンに利用できるJR人気商品だが、秋だけは使うことができない。しかし、これに代わる「秋の乗り放題パス」というお得なきっぷがあるのをご存知だろうか? 利用可能期間は10月7日~22日(※発売は20日まで)。有効期限は“連続する3日間”だが、JRの普通・快速列車乗り放題なのは同じ。しかも、値段は7850円と青春18きっぷ(1万2050円)よりもお買い求めやすくなっている。さらにこちらは同きっぷと違って小学生を対象とした小児向けの乗り放題パスも3920円で販売している。
そのため、18きっぷように複数のグループで1枚のきっぷを利用するという使い方はできないが、秋の行楽に便利な使い勝手によいものとなっている。でも、実際に「1日ずっと乗り続けたらどこまで行けるの?」と気になる人は多いはず。今年の夏、もともと乗り鉄だった筆者はプライベートで青春18きっぷを使い、ひたすら西を目指して東京都内から1日でどこまで行けるかを試してみた。今回はその時の模様をレポートしたいと思う。
◆追加料金を払えば、普通車グリーン席の利用も可能
ちなみにスタート地点に選んだのは上野駅。早朝の出発になるので前日は駅近くのビジネスホテルに泊まり、当日最初に乗り込んだのは上野発4時33分の大船行きの始発の京浜東北線。さすがに時間が早すぎるせいか車内はガラガラ。朝まで飲んでいたのか酔いつぶれて車内のロングシートで爆睡している人もいた。
4時53分、品川駅に到着し、ここで東海道本線の5時10分発の小田原行きに乗車。車内は時間的に余裕で座ることができたが、別料金を払ってあえて2階建ての普通車グリーン席に乗車。景色優先なら2階がオススメとはいえ、筆者は1階のほうが好きなので今回も迷わずチョイス。早起きしすぎたせいか出発前から寝入ってしまい、目が覚めると終点・小田原まで残り数駅。列車は海沿いを走っており、朝日に照らされた相模湾が絶景だった。
◆立ち食いきしめんを泣く泣く諦める
そして、小田原に6時21分に到着すると、向かいのホームに停車中だった6時22分発の熱海行きに乗車。熱海には6時45分に着き、6時49分の浜松行きに乗って静岡県を一気に横断する。この時間になると完全に朝のラッシュで車内は通勤・通学の列車で大混雑。大勢の乗客が下車する静岡駅まで立ち続けるハメになることに。
浜松駅には定刻の9時17分に入線したが、駅はバケツをひっくり返したかのような土砂降り。次の大垣行き特別快速は9時43分発で少し余裕があったので駅そばで朝食を取ろうと思ったが、駅の写真を撮ったりトイレに行っていたら出発まで残り時間10分を切ってしまい断念。本当は名古屋駅で立ち食いきしめんを食べたかったが、下車すると限界点の到達が不可能となるため、終点の大垣駅へ。11時47分に到着し、次の米原行きは12時11分発だったため、この間に駅構内のコンビニでサンドウィッチとおにぎりを購入。ご当地色はまったくないが、現在は駅弁販売駅じゃないので仕方ない。
ちょうど米原行きの列車が4人掛けのボックス席だったので車内で昼食。さすがにロングシートだとほかの乗客の目が気になり、食べるのを躊躇してしまうからだ。
◆駅の立ち食いそばも落ち着いて食べられない!
列車は12時46分に終点・米原駅に着き、12時50分発の新快速・姫路行きに乗車。最高速度130劼汎探淌甜嵎造澆離好圈璽匹鮓悗蝓京都・大阪・神戸の関西3大都市を素通りして、終点の姫路に着いたのは15時18分。

15時34分発の播州赤穂行きに乗らなければならず、乗り換え時間は16分。駅構内の移動や料理の待ち時間もあったため、およそ5分の間に食べ切らなければならなかったが10数年ぶりに食べたえきそばはやはり美味い。急いで食べたせいか汗だくになってしまったが……。
◆16時間以上も鈍行列車に揺られ続け…
なんとか予定通り次の列車に乗り込み、15時53分に途中駅の相生で下車。同駅始発の15時56分発の糸崎行きで終点まで向かう。
糸崎駅には18時47分に到着し、19時6分発の列車で広島を目指すが、この頃になるとすでに疲労困憊。こんな時は腹でも満たそうと、20時27分に広島で降りて向かった先は、駅構内にある『驛麺屋』という駅そば屋。ここは地元・広島カープにちなんだ真っ赤な麺が特徴の赤うどんで有名な店でせっかく来たので食べようと思ったが、時間が遅かったせいかすでに売り切れ。それでも普通のうどんはまだ残っていたため、とりあえず腹を満たして先を目指すことに。
ただし、そんな状況に追い打ちをかけるように20時50分発の徳山行きは帰宅の通勤客で混んでおり、途中まで立ちっ放し。東京から16時間以上も鈍行列車に揺られ、体力はすでに限界に近い。
徳山駅には23時2分に到着するもまだ終電ではなく、同駅から新山口へ向かう23時20分発の最終列車に乗車。さすがにこの時間になると車内はガラガラだが、筆者も疲れと強烈な睡魔で乗車中ほとんど意識が飛んでいたのは言うまでもない。
◆都内発の西の限界点は「山口県の四辻駅」
なお、利用していた青春18きっぷのため、「0時を過ぎて最初の停車駅まで」が有効期限。東京と大阪の「特定電車区間」と呼ばれるエリアは例外的に0時を過ぎてもその日の最終列車まで有効だが、筆者が乗っていたのはそのどちらのエリアでもない。しかも、終点の新山口の1つ手前の四辻の到着時刻が0時ジャスト。つまり、東京都内発の西の限界点は、山陽本線の四辻(山口県山口市)ということになる(※秋の乗り放題パス利用の場合、1~2日目なら有効期限内なので清算は不要)。
だが、ここで降りても周辺にはホテルもないため、1駅分の運賃190円を清算して隣の終点・新山口で下車。上野から総移動距離1052.3キロ、総移動時間19時間32分の大移動はようやく終わった。
今回はひたすら西を目指すルートだったが、同じ東京都内発だと西日本でも山陰の限界点は米子(鳥取県)で、四国は牟岐(徳島県)、阿波池田(徳島県)、松山(愛媛県)の各駅。一方、北は青森や岩舘(秋田県)などになる。
乗換案内アプリの『ジョルダン』には【青春18きっぷ検索】という機能がある。普通・快速列車のみで遠方に行く際のルートや時間を調べたい場合はこちらが便利だ。
正直、新幹線や飛行機とは比べ物にならないほど時間がかかり、体力的にもハードだが「安く遠くへ行きたい」という方にはオススメ。ぜひ秋の乗り放題パスや青春18きっぷを旅行や帰省に利用してみてはいかがだろうか。
<TEXT/高島昌俊>
―[シリーズ・駅]―

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。