京アニ放火殺人「やりすぎた」 初公判で無罪主張…遺族の思いは 「死に逃げさせない」主治医が見た被告の“変化”

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

平成以降、最も多い36人の犠牲者を出した京都アニメーション放火殺人事件から4年。9月5日、京都地裁で初公判が行われ、殺人などの罪に問われている青葉真司被告は「私がしたことに間違いありません」と起訴内容を認めた。
遺族は、どのような思いで初公判の日を迎えたのか。そして、青葉被告の主治医が見た“ある変化”とは。
2019年7月18日、京都市伏見区にあるアニメ制作会社「京都アニメーション」の第1スタジオで起きた放火殺人事件。
青葉真司被告はガソリンをまいて放火し36人を殺害、32人に重軽傷を負わせたとして殺人などの罪に問われている。青葉被告自身も全身の93%にやけどを負い、皮膚移植手術などの治療を受け、長期間入院した。
事件で犠牲になった寺脇(池田)晶子さん(当時44)の夫は、裁判に向かう途中、その胸の内を明かした。
寺脇(池田)晶子さんの夫:やっと始まったかなというのが…。正直、4年と言われると長いなという印象ですけど、実際、感覚的には短かったかなって。見ないといけないな、というのが正直な気持ちかな。やっぱり晶子にも子供にも、報告しないといけないし
一方で孫の命を奪われた遺族は、裁判で青葉被告を目にすることへの強い抵抗感について、こう話す。
孫を亡くした遺族:裁判に行きたい気持ちはゼロではないが、被告の様子を直接見たり、声を聞いたりするのも耐えられない
事件から4年の月日を経て、遺族らが見守る中、ようやく始まった裁判。35の傍聴席を求めて、京都地裁には約500人が集まった。
注目の初公判で青葉被告の弁護側が主張したのは、無罪だった。
午前10時半に開廷すると、丸刈り頭の青葉被告は車いすに乗り、マスクを着けて法廷内へ。そして、小さい声ながらも、はっきりとした口調で起訴内容を認めた。
青葉真司被告:私がしたことに間違いありません。こうするしかないと思ったが、こんなにたくさんの人が亡くなるとは思っていませんでした。現在はやりすぎだと思っています
弁護側は、事件当時、青葉被告が心神喪失か心神耗弱の状態だったとして無罪などを主張。一方の検察側は、青葉被告には「京アニに小説を盗まれた」といった妄想があったが、妄想に支配された犯行ではないとして、完全に責任能力があったと主張した。
また、検察側は青葉被告が事件の1カ月前に、埼玉県の大宮駅で無差別殺人事件を起こそうとしたが断念していたと指摘した。
これは、FNNが入手した入院先での青葉被告の様子。
主治医 上田敬博教授:あと少なくとも4回は手術をします。分かった?頑張れる?
事件で自らも全身に重いやけどを負い、顔を包帯で巻かれながらも、医師の問いかけに小さくうなずいていた。
主治医を務めた上田敬博教授は、青葉被告を初めて目にした時の心境を手記にこう記している。「こいつがたくさんの命を奪った犯人か、という陰性感情はなく、もうすぐ絶命するだろう…それしか感じなかった」
主治医 上田敬博教授:被害に遭われた方とそのご家族のためには、「死に逃げ」させてはいけない。絶対、容疑者を死なしちゃいけない。それだけです
やがて、治療を受けていた青葉被告の心境にも変化が現れ始めた。自身も負ったやけどが回復に向かうと、主治医に涙を見せたという。
主治医 上田敬博教授:メリットがない自分に、ここまで治療に関わる人間、そういう人間がいるんだという感じで、ずっと泣いていました
初公判で起訴内容を認めた青葉被告。裁判の争点となるのが、刑事責任能力の有無だ。
事件で亡くなったアニメーターの寺脇(池田)晶子さんの夫は、5日午後5時ごろ、会見で「なんでこんなことが起きてしまったのか、みんなで目を向けてほしい」と訴えた。
判決は、2024年1月25日に言い渡される予定。(「イット!」9月5日放送)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。