京アニ公判 「死ね!」スタジオで聞いた青葉被告の怒声 九死に一生得た京アニスタッフ、生々しい証言次々と

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36人が死亡、32人が重軽傷を負った令和元年の京都アニメーション放火殺人事件で、殺人などの罪に問われた青葉真司被告(45)の裁判員裁判の第2回公判は、6日午前10時半から京都地裁で開かれる。
初公判が行われた5日に続き、証拠の取り調べが行われる見込みだ。5日の初公判では事件当時に現場に居合わせ、一命をとりとめたものの大きなけがを負った被害者4人の生々しい供述調書が読み上げられた。「死ね!」。男の叫び声と、天井から垂れ込める黒煙。凄惨(せいさん)な現場の状況が改めて明らかになった。
2カ月意識失った
京アニスタッフのスケジュール管理などを担当するマネージャー室に勤務していた女性は、あの日、第1スタジオ1階で被害に遭い、窓から脱出した。
外に出ようとした際にスリッパがひっかかり転倒。そのとき、服が燃えていることに気付き、髪や体に火がついていて慌てて手で振り払ったが、服のほとんどが焼けてしまったという。
その後、到着した救急車に載せられた女性が意識を取り戻したのは、約2カ月後の9月下旬。全身熱傷の大けがを負い、25回以上の皮膚移植の手術を受けた。右手人さし指は切断せざるを得ず、「鏡をみても見慣れた自分の顔ではない」と述べたという。
「助からない」と諦めた
作画を担当していたという被害者は2階の自席に座り、イヤホンをして音楽を聴いていた。「キャー」という女性の声で異変に気付いた。直後に第1スタジオのらせん階段から「ボン」と鳴る音が聞こえ、きのこ雲のような煙の塊が上がってくるのを目撃した。一瞬体が固まったものの、別の階段から避難しようとしたという。
しかし、向かった人が引き返してくるのが見えた。階段からは黒に近い灰色の煙が出てきて、逃げることができない。ベランダの窓は、いくら開けようとしても開かなかった。
熱さや煙で気持ち悪くなり、その場に倒れこんだ。「助からない」と生きることを諦めかけた。
そのとき、頭上で窓が「パン」と割れる音がした。急いでベランダに身を乗り出し、息をした。近くにはしごがかかっているのに気付き、下に降りることができた。
雨どい使って生還
演出作画室に勤務していた男性は、3階の自席で仕事をしていた。在宅勤務している同僚と電話でやりとりをしていたところ、下の階から「ボン」と爆発音が聞こえ、「電子レンジが爆発したのかな」と思ったが、1階から「うわー」という驚いた声と、非常ベルが響いた。
逃げようとリュックを背負い、階段へ小走りで向かったが、大量の真っ黒な煙が足元から上がってきたため、上に行くことに。「屋上に逃げろ」という声がしたが、屋上に出るためのドアの操作が複雑だったことを思い出した。戻ろうと振り返ると、階段の踊り場の窓が開いていることに気付いたという。
窓から頭を出して呼吸を整えた。足場になりそうな出っ張りが見え、外に出てつま先立ちで壁に張り付いた。カニ歩きのような形で動き、雨どいを腕でかかえて携帯電話で119番した。その後、雨どいを両脚で挟んですべり落ちる形で降り、ほかの人がかけてくれた脚立を使って避難できたと振り返った。
「青葉真司」を見た
2階の自席にいた被害者は、事件当日の午前10時半ごろ、らせん階段のほうから「死ね」という野太い男の大声を聞いた。その後、3秒ほどで3階へ上る黒い煙が見えたという。
いったん1階に降りようとしたが断念し、2階へ戻ったところ、腰から天井まで黒い煙がおおっていた。必死でベランダにたどり着くと、先にいた人は次々と飛び降り、自分も決意して、手すりにぶら下がり下に落ちた。着地で右足をひねって激痛が走ったが、建物が崩れると思い逃げたと振り返った。
近くに運ばれていた知らない男は「青葉真司」と名乗っていた。「なんでこんなことをした」と警察官が尋ねると、「小説をとったやろ」「パクった」と話していたが、本を取ったのか、本の中身をまねたのかなど、何を意図しているのかは分からなかった。

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