《京都“居眠り”トラック暴走事故》「どれだけ私たちを侮辱するのか…」被告の運転手らの“寝言のような主張”に被害者家族が激しく反発「父は死亡、母は半年たった今も入院中」

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「ヤバい運転をした」逆走トラックが軽自動車に正面衝突し1人死亡 “居眠り”運転手はなぜ供述を覆したのか?「父は膝から下が千切れていた…」遺族が怒りの告発 から続く
「事故を起こしたことは間違いないが、眠気を催した覚えも、前方注視困難になった覚えもないので否認する」
【写真多数】正面から激しく衝突されたことを物語る事故車両。もはや原型をとどめていない
昨年9月21日午後1時30分頃、国道163号線の京都府笠置町付近で、大阪府の岩瀬徹郎被告(当時41)が運転するトラックが、山本隆雄さん(65)と妻の倫代さん(65)の乗る軽自動車に正面衝突した事故。第3回公判が3月8日に開かれ、過失運転致死傷の罪に問われている岩瀬被告は、こう述べて“居眠り運転”を改めて否定した。
また、岩瀬被告の弁護人は「記憶に従って認否している。謝罪文も送り、損保会社を通して賠償も行う」として“執行猶予”を求めた。そして、被告弁護人の口からは、にわかには信じがたい主張が飛び出したのだった――。(#1を読む)
レッカーされる前の事故車両(YouTubeより)
◆◆◆
法廷でその様子を見つめていた山本さんの長女・星野亜季さんが力なく肩を落とす。
「裁判が始まる前に、被告は“居眠り運転”していたと供述していて、長時間にわたってトラックが蛇行運転している映像もあると聞いていたので、裁判では過ちを認め、私たち遺族に心からの謝罪があると思っていました。しかし被告は、初公判から一貫して、“居眠り運転”を否認しています。
しかも、亡くなった父や、今でも入院中の母に対して、私たちが納得できる謝罪はありません。被告弁護人が送ったと述べている手紙ですが、『記憶にないので否認する』と主張している被告の謝罪文を読むことなど心情的にできないので、私たちの代理人に預かってもらっています。 代理人によれば、宛名は被害者参加人の私と弟だったそうです。裁判に参加している私たちに向けた、形式的な裁判対策としか思えませんでした。しかも、手紙が届いたのは保釈されて3カ月も経った、第2回公判の直前です。『記憶にないから否認する』と言っているわけですから、謝罪文はあくまでも減刑を狙っているとしか感じられません。 さらに、被告弁護人は、脳挫傷などの重体で一時は意識不明だった母の意識が回復したことを理由に“被告人有利”、つまり減刑の材料になると主張したんです。母の容態を利用して罪を軽くしようとするなんて、どれだけ私たち遺族を侮辱すれば気が済むのでしょうか」 第3回公判では、岩瀬被告が勤めている春日物流の社長が情状証人として出廷した。星野さんが続ける。「以前にも、被告が“居眠り”蛇行運転をして会社にクレームが入っているのですが、社長はその事実を認めました。会社が指導や管理を徹底していれば、両親が事故に巻き込まれることはありませんでした。会社にも責任があると思っています。 また、社長は、遺族に直接謝罪したかどうかを問われると『連絡した際、遺族が北海道で勤務していると言われたので断念した』と述べました。確かに弟は当時、札幌に赴任していましたが、10~11月の1カ月間だけです。それ以降は関西に戻っていますし、私は埼玉在住なので、いつでも謝罪に来ることはできたはずです」物流会社の社長は、会社にクレームが入るのは「遺族が情報発信するから」と答弁 さらに、星野さんを愕然とさせる問答もあったという。「社長は、今回の事故で会社にもクレームが入っていて『困っている』と訴えました。そして、被告弁護人から『なぜクレームが入るのか?』と聞かれると、『遺族が情報発信するから』と、メディアの取材を受けたり、ツイッターで事故についての投稿をしている私にその責任をなすりつけました。 さすがに、被告弁護人もマズいと思ったのか、『それは被告が事故を起こしたからですよね?』と誘導尋問していたほどです。それくらい、被告や物流会社は自分たちが起こした事故の重大さを理解していないのではないでしょうか」(同前) 一方、被害者参加人である星野さんの意見陳述も行われた。「事故の一報を聞いてから今日に至るまでの気持ち、自営でやっていた新聞店を畳んで第二の人生を謳歌しようとしていた両親の無念、被告の裁判での主張がどれだけ私たち遺族の気持ちを逆撫でして傷つけているのかなどを訴えました。 文春オンラインの前回の記事を読んで傍聴に来られた方がいらっしゃったのですが、その方によると私の陳述中に岩瀬被告は時折、首を横に振っていたそうです」(同前)被害者遺族に向き合おうとせず、量刑だけしか考えていない 星野さんの陳述後、検察官より禁錮4年が求刑された。そして、被告弁護人が冒頭のように“執行猶予”を求め、第3回公判は閉廷した。「弁護人は『倫代さんが回復したことも被告人に有利である』『子供の勉強を被告がみており、服役になったら家族が困る』と主張しました。子供に罪はないですからその点は胸が痛みますが、そもそも母は生還できたこと自体が奇跡と言えるほどの大怪我を負いました。足の一部は壊死してしまい、手術も行っています。いまも入院しながら懸命にリハビリをしているんです。 ここまで回復できたのは、医療関係者の方々のご尽力、そして母の並々ならぬ努力のおかげです。それなのに、この期に及んで、母の容態までも裁判の材料として持ち出して減刑を図ろうとする被告、そしてその被告弁護人に激しい怒りを覚えます。よくそんな発言ができるものだとしか言いようがありません」(同前) 判決は4月19日、京都地裁で下される。被害者遺族に向き合おうとせず、量刑だけしか考えていないかのように見える被告らはいま何を思うのか。(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))
しかも、亡くなった父や、今でも入院中の母に対して、私たちが納得できる謝罪はありません。被告弁護人が送ったと述べている手紙ですが、『記憶にないので否認する』と主張している被告の謝罪文を読むことなど心情的にできないので、私たちの代理人に預かってもらっています。
代理人によれば、宛名は被害者参加人の私と弟だったそうです。裁判に参加している私たちに向けた、形式的な裁判対策としか思えませんでした。しかも、手紙が届いたのは保釈されて3カ月も経った、第2回公判の直前です。『記憶にないから否認する』と言っているわけですから、謝罪文はあくまでも減刑を狙っているとしか感じられません。
さらに、被告弁護人は、脳挫傷などの重体で一時は意識不明だった母の意識が回復したことを理由に“被告人有利”、つまり減刑の材料になると主張したんです。母の容態を利用して罪を軽くしようとするなんて、どれだけ私たち遺族を侮辱すれば気が済むのでしょうか」
第3回公判では、岩瀬被告が勤めている春日物流の社長が情状証人として出廷した。星野さんが続ける。
「以前にも、被告が“居眠り”蛇行運転をして会社にクレームが入っているのですが、社長はその事実を認めました。会社が指導や管理を徹底していれば、両親が事故に巻き込まれることはありませんでした。会社にも責任があると思っています。
また、社長は、遺族に直接謝罪したかどうかを問われると『連絡した際、遺族が北海道で勤務していると言われたので断念した』と述べました。確かに弟は当時、札幌に赴任していましたが、10~11月の1カ月間だけです。それ以降は関西に戻っていますし、私は埼玉在住なので、いつでも謝罪に来ることはできたはずです」物流会社の社長は、会社にクレームが入るのは「遺族が情報発信するから」と答弁 さらに、星野さんを愕然とさせる問答もあったという。「社長は、今回の事故で会社にもクレームが入っていて『困っている』と訴えました。そして、被告弁護人から『なぜクレームが入るのか?』と聞かれると、『遺族が情報発信するから』と、メディアの取材を受けたり、ツイッターで事故についての投稿をしている私にその責任をなすりつけました。 さすがに、被告弁護人もマズいと思ったのか、『それは被告が事故を起こしたからですよね?』と誘導尋問していたほどです。それくらい、被告や物流会社は自分たちが起こした事故の重大さを理解していないのではないでしょうか」(同前) 一方、被害者参加人である星野さんの意見陳述も行われた。「事故の一報を聞いてから今日に至るまでの気持ち、自営でやっていた新聞店を畳んで第二の人生を謳歌しようとしていた両親の無念、被告の裁判での主張がどれだけ私たち遺族の気持ちを逆撫でして傷つけているのかなどを訴えました。 文春オンラインの前回の記事を読んで傍聴に来られた方がいらっしゃったのですが、その方によると私の陳述中に岩瀬被告は時折、首を横に振っていたそうです」(同前)被害者遺族に向き合おうとせず、量刑だけしか考えていない 星野さんの陳述後、検察官より禁錮4年が求刑された。そして、被告弁護人が冒頭のように“執行猶予”を求め、第3回公判は閉廷した。「弁護人は『倫代さんが回復したことも被告人に有利である』『子供の勉強を被告がみており、服役になったら家族が困る』と主張しました。子供に罪はないですからその点は胸が痛みますが、そもそも母は生還できたこと自体が奇跡と言えるほどの大怪我を負いました。足の一部は壊死してしまい、手術も行っています。いまも入院しながら懸命にリハビリをしているんです。 ここまで回復できたのは、医療関係者の方々のご尽力、そして母の並々ならぬ努力のおかげです。それなのに、この期に及んで、母の容態までも裁判の材料として持ち出して減刑を図ろうとする被告、そしてその被告弁護人に激しい怒りを覚えます。よくそんな発言ができるものだとしか言いようがありません」(同前) 判決は4月19日、京都地裁で下される。被害者遺族に向き合おうとせず、量刑だけしか考えていないかのように見える被告らはいま何を思うのか。(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))
また、社長は、遺族に直接謝罪したかどうかを問われると『連絡した際、遺族が北海道で勤務していると言われたので断念した』と述べました。確かに弟は当時、札幌に赴任していましたが、10~11月の1カ月間だけです。それ以降は関西に戻っていますし、私は埼玉在住なので、いつでも謝罪に来ることはできたはずです」
さらに、星野さんを愕然とさせる問答もあったという。
「社長は、今回の事故で会社にもクレームが入っていて『困っている』と訴えました。そして、被告弁護人から『なぜクレームが入るのか?』と聞かれると、『遺族が情報発信するから』と、メディアの取材を受けたり、ツイッターで事故についての投稿をしている私にその責任をなすりつけました。
さすがに、被告弁護人もマズいと思ったのか、『それは被告が事故を起こしたからですよね?』と誘導尋問していたほどです。それくらい、被告や物流会社は自分たちが起こした事故の重大さを理解していないのではないでしょうか」(同前)
一方、被害者参加人である星野さんの意見陳述も行われた。「事故の一報を聞いてから今日に至るまでの気持ち、自営でやっていた新聞店を畳んで第二の人生を謳歌しようとしていた両親の無念、被告の裁判での主張がどれだけ私たち遺族の気持ちを逆撫でして傷つけているのかなどを訴えました。 文春オンラインの前回の記事を読んで傍聴に来られた方がいらっしゃったのですが、その方によると私の陳述中に岩瀬被告は時折、首を横に振っていたそうです」(同前)被害者遺族に向き合おうとせず、量刑だけしか考えていない 星野さんの陳述後、検察官より禁錮4年が求刑された。そして、被告弁護人が冒頭のように“執行猶予”を求め、第3回公判は閉廷した。「弁護人は『倫代さんが回復したことも被告人に有利である』『子供の勉強を被告がみており、服役になったら家族が困る』と主張しました。子供に罪はないですからその点は胸が痛みますが、そもそも母は生還できたこと自体が奇跡と言えるほどの大怪我を負いました。足の一部は壊死してしまい、手術も行っています。いまも入院しながら懸命にリハビリをしているんです。 ここまで回復できたのは、医療関係者の方々のご尽力、そして母の並々ならぬ努力のおかげです。それなのに、この期に及んで、母の容態までも裁判の材料として持ち出して減刑を図ろうとする被告、そしてその被告弁護人に激しい怒りを覚えます。よくそんな発言ができるものだとしか言いようがありません」(同前) 判決は4月19日、京都地裁で下される。被害者遺族に向き合おうとせず、量刑だけしか考えていないかのように見える被告らはいま何を思うのか。(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))
一方、被害者参加人である星野さんの意見陳述も行われた。
「事故の一報を聞いてから今日に至るまでの気持ち、自営でやっていた新聞店を畳んで第二の人生を謳歌しようとしていた両親の無念、被告の裁判での主張がどれだけ私たち遺族の気持ちを逆撫でして傷つけているのかなどを訴えました。
文春オンラインの前回の記事を読んで傍聴に来られた方がいらっしゃったのですが、その方によると私の陳述中に岩瀬被告は時折、首を横に振っていたそうです」(同前)
被害者遺族に向き合おうとせず、量刑だけしか考えていない 星野さんの陳述後、検察官より禁錮4年が求刑された。そして、被告弁護人が冒頭のように“執行猶予”を求め、第3回公判は閉廷した。「弁護人は『倫代さんが回復したことも被告人に有利である』『子供の勉強を被告がみており、服役になったら家族が困る』と主張しました。子供に罪はないですからその点は胸が痛みますが、そもそも母は生還できたこと自体が奇跡と言えるほどの大怪我を負いました。足の一部は壊死してしまい、手術も行っています。いまも入院しながら懸命にリハビリをしているんです。 ここまで回復できたのは、医療関係者の方々のご尽力、そして母の並々ならぬ努力のおかげです。それなのに、この期に及んで、母の容態までも裁判の材料として持ち出して減刑を図ろうとする被告、そしてその被告弁護人に激しい怒りを覚えます。よくそんな発言ができるものだとしか言いようがありません」(同前) 判決は4月19日、京都地裁で下される。被害者遺族に向き合おうとせず、量刑だけしか考えていないかのように見える被告らはいま何を思うのか。(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))
星野さんの陳述後、検察官より禁錮4年が求刑された。そして、被告弁護人が冒頭のように“執行猶予”を求め、第3回公判は閉廷した。
「弁護人は『倫代さんが回復したことも被告人に有利である』『子供の勉強を被告がみており、服役になったら家族が困る』と主張しました。子供に罪はないですからその点は胸が痛みますが、そもそも母は生還できたこと自体が奇跡と言えるほどの大怪我を負いました。足の一部は壊死してしまい、手術も行っています。いまも入院しながら懸命にリハビリをしているんです。
ここまで回復できたのは、医療関係者の方々のご尽力、そして母の並々ならぬ努力のおかげです。それなのに、この期に及んで、母の容態までも裁判の材料として持ち出して減刑を図ろうとする被告、そしてその被告弁護人に激しい怒りを覚えます。よくそんな発言ができるものだとしか言いようがありません」(同前)
判決は4月19日、京都地裁で下される。被害者遺族に向き合おうとせず、量刑だけしか考えていないかのように見える被告らはいま何を思うのか。(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))
判決は4月19日、京都地裁で下される。被害者遺族に向き合おうとせず、量刑だけしか考えていないかのように見える被告らはいま何を思うのか。
(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))

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